ショシャナット!
ワープ完了。やって来ました、シャローム地下都市!
「冒険者さんいらっしゃい♪ あたしはこのシャローム地下都市の案内人、ショシャナット! よろしくね!」
「おぉー道行く人みんなケモミミが生えてるな!」
「ここに住む種族はケモノ族だから、ケモミミなのは当然! ネコ耳、イヌ耳、ウサ耳、ウマ耳、いろんな耳があるでしょ!」
「っと、そんな事よりまずは寝床探しだな。誰がここを案内してくれる男はいねぇかな?」
「宿探しね! 任せt……って!? いくらあたしがチビだからって見えてるよね? 見えてるでしょ!?」
うるさい小動物がケンケン吠えている。こういうのは無視するに限る。
それにしても、木魔法のヘルガーデンが野生丸出しだったのに対して、土魔法のシャローム地下都市は本当に都市と言うだけあってちゃんとしている。
パッと見、私達の拠点村、デビュール村より賑わっている。
マルシェで買い物を楽しむキツネ耳やクマ耳たち。
都市全体の雰囲気は、東南アジアの賑やかな感じ。きらびやかなアラブやイスラエルの下町を思わせてくれる。
ちょっと砂埃っぽいのが難点だけど。
「さーあ、これだけ都市が発達しているんだ。ケモノ族ってのも初めて見るし、調査がてらちょっとこの都市を見て回ろうか」
「冒険者さぁぁぁぉぁぁん!」
キーンと鼓膜を振動させる、黄色い声。
「ああもう、うるせぇなあ。何だよお前、誰だよ?」
「さっき名乗ったよね!?
あたし名乗ったよね!? あたしは、ショシャナット! 冒険者さん達の案内人を務めるって言ってるのっ!」
ちょっと視線を下に向けると、葉っぱ形の耳の上に、白い髪を団子にして結い上げ、スズランの花を飾った何とも幼稚な髪型の女がほっぺたを膨らませむくれていた。
「生憎だが、私は女の名前はよっぽどでないと覚えられない質なんだ。お前の名前は覚えにくい。だから違う案内人を連れてきてくれ。条件は男で」
私が早口に伝えると、噛みそうな名前の女は更にむくれた。
そしてとうとう諦めたのか、私の後ろに立つチュチュに狙いを定めた。
「ねぇねぇ、そちらの冒険者さん。案内人が必要よね? あたしが案内してあげる! あたしの名前はショシャナット。よろしくね!」
チュチュはコクリとだけ頷いて、一歩私に歩み寄った。けど、うるさい案内人は満足だったのか、ニッコリすると、次はシヴァに狙いを定めた。
「あたし、ショシャナット! そっちの冒険者さんもよろしくね!」
「ぼ、ボク………えっと??」
よろしくねと言われてなんと返答していいのか分からないシヴァは私に助けを求めるように視線を向けてくるが無視だ。
「さあ、これで三人とも挨拶は済んだわ。それで、ピンクの冒険者さんのお名前は?」
全然諦めてなかった。鬱陶しい……
「さて、どこか寝られる場所を見つけねぇとな」
「けど、チュチュ達は200コレイしかない」
「ボク達、野宿するの?」
三人ともがショシャナットを無視。つーか、あまりにもコイツが名前を連発するもんだから不覚にも覚えちまった。
私達の会話を聞いたショシャナットはスズランの髪飾りを揺らしながら得意げに、胸を張る。
「それならあたしに任せて! あたしの顔でいい宿に泊めてあげる。その代わり、あたしは冒険者さん達の案内人よ♪」
「………」
背に腹は替えられぬ。
「よし。チュチュ、シヴァ、今日は野宿だ」
「なんでそうなるの!!?」
このあと、あまりにもショシャナットがしつこくて、このままだと野宿先にも押しかけてきそうな勢いだったから私達は渋々ショシャナットの紹介で格安200コレイで宿にありつけた。




