悪夢。
新章のページを捲っていただいてありがとうございます!
今回は百合ロリの世界の復習ができる導入の回ですので、かるーく流してください笑
木魔法の迷宮、ヘルガーデンを攻略してはや数日。
私としては、いち早く日に日に胸が成長していくという鬼死女神がかけやがったこのバカな呪いを解除したい。
そのために不本意ながら、ものすっっっっっごーーーーーく!!!!! 不本意ながら、迷宮に住み着いたロリモンスター、つまりチュチュの姉妹たちにキスをしなくちゃならない。
呪いの進行を遅らせるために月が出ている時間帯チュチュにキスもしなくちゃなんねぇし、もうこんな生活タクさんだ。
──あーあ、こんな美少女達とキスできるだなんて、羨ましいわ。
「はぁ? 羨ましい? 嘘だろ? 馬鹿なの? カスなの? ゴミなの?」
──私的には、もっとリリスちゃんと可愛い女の子達がキスしている絵面を見せてほしいのだけれどっ。
「ファック? 脳みそ大丈夫? 頭イカれてる? 神経通ってる?」
──そうよ、百合よ! 百合百合が足りないわ! この世界、ローリアビテの平和のため、リリスちゃんにはもっと百合百合してもらわないと!!
「嫌だよ! 百合とかまじでありえねーから! 私は男だ! 見た目こそ最悪なピンク塗れのロリヤローだが、私の心は男のままだ! ってか、さっきから私の頭の中に直接しゃべってくんな! 気色悪いんだよ! さっさと出てこい、こんの鬼死女神!!」
──んまぁ! 口の悪い子ね! さっきから、ここぞとばかりに貶し言葉を並べてくれちゃって! コレーさん、そんな子にリリスちゃんを育てた覚えはありません!
「こっちだってお前なんかに育てられた覚えは微塵もねぇ!」
フワリと周囲の空気が変わり、白く光ったかと思うと、空から舞い落ちる白い羽。
ヤツが来やがった。
「可愛いリリスちゃんの女神さまが降臨よ♡」
「誰の女神だとこんにゃろー!!! よくもまぁヌケヌケと私の目の前に姿を出せたもんだなぁ! 殴ってやるっ! 千発分の百発分、今ここで消費してやるっ!!!」
こんな女体にされて絶望の淵に立たされている私だが、強く生きるために目標を立てた。
それは、見事八つの迷宮を攻略して私の呪いを解き、この鬼死女神を千発ボコり倒して男に戻る! これっきゃない!
「殴るなんて野蛮な言葉を使ってはいけませんっ! せっかく“俺”を封印したのに、そんな口調じゃあ意味ないじゃない」
そうそう、こいつは私の体を幼女にして呪いをかけただけでは飽き足らず、私の一人称“××”を封印しやがった。ほら、私が“××”って言おうとすると伏せ字になる。ちなみにカフェオレは言えるからその点は安心してほしい。
「まぁいいわ。それよりリリスちゃん、やったわね! ようやく木魔法のフェアリー、シヴァちゃんをゲットできたわね!」
「ふんっ、別にあんな病んでる女なんていらねーよ。まぁ、魔力はチュチュ同様バカみてぇにあるし、回復魔法を持っているから使ってやるだけだ」
「つ、使ってやる……ですって?」
コレーの顔がサッと青ざめ、珍しく私から一歩引く。そして地面に崩れた。
「あぁ、リリスちゃんは自分の欲求を満たすためだけの道具としか女の子を見られなくなってしまったのね。チュチュちゃんも、シヴァちゃんも、リリスちゃんにとっては抑えきれない性欲を満たすために利用されて……」
何言ってんだ? このアホは。頭大丈夫か? いや、大丈夫じゃねぇな。
「ああ! リリスちゃん! そんなあなたを救えるのは百合のパワーだけよ! いくら心がクソみたいな男でも、あなたの体は可愛らしい女の子! だから女の子同士、肌と肌が触れ合えば、あなたのその男臭くて汚い心を清らかな女の子の心が浄化してくれるわ! だからさぁ、私の胸に飛び込んでいらっしゃーい!」
「こんの百合好き変態鬼死女神がぁぁぁぁぁ!!!」
渾身のドロップキックを放ったが、アッサリとコレーにかわされてしまう。
「んもう、違うわよリリスちゃん。あのね、胸に飛び込むときは胸と胸がぶつかるように飛び込まなくちゃ台無しよ」
「お前のその脂肪の塊に飛び込んだつもりはねぇ!!」
プラチナブロンドの巻き毛を靡かせ、青い瞳を細めながらコレーはバインっとEカップはありそうな胸を張った。
「脂肪の塊とは失礼な。いくら今の自分には無いものだからって、他人のモノを悪く言っちゃいけないわ。大丈夫よ、リリスちゃんもすぐに私の魔法で」
「呪いな」
「ま、ほ、う、で! 理想の胸になっていくんだから♡」
「いや、日に日に胸が巨大化していったらいつか化け物になっちまうだろ。ってかなるつもりはねぇ」
「だーかーら、救済処置としてチュチュちゃんとキスしたらイイ感じになるようにしてあげたんじゃない。女嫌いの荒療治だって言うのに、コレーさん優しい♡」
「キスのどこが救済処置だ! むしろ地獄だ! この鬼! 変態! 死神!」
まったく、学習しない鬼死女神だ。私の女嫌いが治るわけねぇだろ。
「それより話を戻すわよ」
急に冷静になるな。
「木魔法攻略おめでとう。そしてシヴァちゃんの力を解放してくれたことも。あの子のことはもう知っているとは思うけど、人間じゃないわ。フェアリーよ」
「ああ、そうみてぇだな。ティン○ーベルみてぇに妖精の粉が出てるし、羽生えてるし」
シヴァは青緑色のクセ毛に青緑色の瞳、白い肌まで言えば人間の要素だが、ヤツの背中には薄いビロード状の羽が生え、体から金色の粉が振ると出てくる。
「けど、あの粉をチュチュにぶっかけたんだけどよ、クシャミが止まらなくなっただけで飛べなかったぜ?」
私の知っている妖精の粉は、人間に振りかけると飛べるようになる。そう思って(私は嫌だから)チュチュで実験したのだが、飛べる気配すら感じなかった。信じる心が足りないのだろうか?
「ああ、だってあれ花粉ですもの」
「花粉??」
「そうよ。シヴァちゃんはお花の妖精ですもの。それより花粉をチュチュちゃんにかけたの!? チュチュちゃんが花粉症になったらどうするのよ! 鼻水ダラダラ流してしまったところをリリスちゃんのお口でお鼻をチーンして………………それはそれでありね」
変態。
「なんだよ、花粉かよ使えねぇなあ。ってか、花の妖精だからって体から花粉が出るのかよ?」
「妖精の種類にもよるわね。けど使えなくなんかないわ。シヴァちゃんの場合はスキルに“妖精の粉”ってあったでしょう? 花粉に魔力を込めれば、風とともにヒトやモノも飛ぶことができるわ。花粉が風で飛散するようにね」
確かに、花粉は風に飛んでどこまでも飛んでいく。
スギ花粉とかヤバイもんな。花粉症の私としてはホラー映画のようにゾッとする映像だ。
けど、飛べるようになるのか。それは便利かもな。
「なら今度使ってみるとするか。空を飛ぶのも悪くないな」
「あっ、でも今度の私がオススメする迷宮は地下よ」
「真逆じゃねーか!」
上へ行けるようになったってのに、下へ行かせようとする天邪鬼女神。
「んで? なんで地下がオススメなんだ?」
「ヘルガーデンの次にここからワープする料金が安いからよ」
「そんな理由!?」
け、けどまぁ財政難を抱える私達にとっては重要なことだ。
なんせ、あんなに達成するのに時間かかったヘルガーデンの依頼の報酬はたったの五千コレイ。
およそ五千円と同勝ちだ。
この数日で毛布やら食費なんやらを消費した私達の手持ちは今や二千コレイ。これでも節約したほうだ。
「地下の迷宮は土魔法の迷宮よ。地下は月の位置から見えなくて、私も中はどうなっているか、さっぱりだわ」
ならオススメすんな。命あっての金だろーが。
「けど、噂によるとその迷宮はとっても平和だそうよ」
は?
「なんでもケモノ族たちが集落を形成し、仲良く暮らしているのだとか。ふふっ、ケモノ族………ケモミミ美少女がローリアビテの地下室でなにをやっているのかしら♡」
少なくともお前が期待するようなことではねぇな。
「ふーん。まぁ、だったら楽勝かもな。よし、次は土魔法の迷宮に行くとするか」
「そうこなくっちゃ! ぜひケモミミ美少女達と百合百合してきてちょうだいね! 感想待ってるわ!」
「なんの感想だよ! おい、こら待て!」
大きな翼を羽ばたかせたコレーはそのまま舞い上がり、その姿を月夜に溶け込ませていき………………
「………はっ!」
藁の中、毛布を蹴飛ばしていた私は目が覚めた。
「悪夢」




