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太陽の魔法。


 ディープキス。

 チュチュが私にしてくれたソレを思い出しながら、私はシヴァの口の中へ、舌を突っ込んだ。


 「※!☆§〠✘∋?∂◢∽……」



 その時、瞼の裏の血管が、外の強い光でくっきり見えた。

 私が目を開けると飛び込んできた景色は、まず目を回すシヴァ。

 次いで、そのシヴァから溢れるキラキラした光の粉。


 「シ、シヴァ! 起きろ! お前、光の粉が出てるぞ! ティン○ーベルにでもなっちまったのか!?」


 もとからシヴァの背中から生えていた薄い羽といい、この粉といい、シヴァの姿はまるで、おとぎ話に出てくるフェアリー、そのものだった。


 「ふぇっ? あっ、ボ、ボク、何してたんだっけ? えーっと、お、思い出せない……」


 「思い出さなくていい! それよりシヴァ、どうだ? このガラスケース、壊せそうか?」


 キスのことはもう私の頭の中では、強い拒絶反応により記憶抹消されました。

 はいっ! 以上!

 ということで、次! 肝心なのはシヴァの真の力だ。


 「そ、そうだボク、君にキスされて……どうしたんだっけ?」


 知るかっ! ってか思い出すなっ! 私も忘れるから!


 「あーもうっ! それは今いいから! 時間がない! 魔法だよ、このガラスケースを壊す! だから早くしろ!」


 「ガルルッ!」


 さすがのクマも、シヴァの背中に鼻先を押し付けて催促する。

 野生の本能というやつだろうか。この状況がどんだけヤバイか、一番わかっているのはコイツかもしれない。


 「そ、そう。ボク、お日様のエネルギーを放出する魔法が使えるんだ。この魔法はね、危ないんだ。だからみんな、僕の後ろに来て、君はボクのこと押さえてて」


 「えっ、私がお前を押さえるのか? その役目、クマのほうがよくないか?」


 私は必要最低限以上、女にふれたくない。さっきは緊急事態だったし、仕方がないから触れたけど、クマや長老でもできることをわざわざ私が苦労してやる必要はない。


 「クマさんは手がうまく掴めないからダメ。おじいさんは、なんだかヨボヨボで頼りない……」


 意外とキツイこと言うな。

 ヨボヨボって……


 「何をいうか! 儂はまだまだ現役バリバ……痛っ! つたたた……こ、腰が……やはり歳には敵わぬか」


 うん、やっぱりヨボヨボだった。

 これも仕方がないのか、このヤロー!


 「わーかったよ! 抑えてればいいんだな? あとシヴァ、ちゃんと詠唱しろよ!?」


 「えっと、“えーしょう”って、さっきみたいな、魔法を使う時の言葉だよね? で、でも、この魔法にも詠唱なんて無いよ?」


 「んなもん、テキトーに考えろ!」


 「えぇっ! そんなボク、すぐに思いつかないよぉ」


 そうこうしている間に、ガラスケースがいよいよヤバイ雰囲気を醸し出してきた。


 シヴァが考えられないなら私が考えるしかなさそうだが、考えて、シヴァに伝えている間が無い!


 「仕方ない、詠唱なしでブチかませ!」


 そして私達はシヴァの後ろに下がり、私はシヴァの両肩をしっかりと抑えてて足を踏ん張った。


 シヴァが両手を掲げると、小さな太陽が現れ、それがどんどん大きくなって、周りの物を巻き込んでいく。


 これは、本物だ。

 私は今、本当にすごい魔法を目にしている。

 太陽は今にも私達を溶かしてしまいそうなほど熱気を放っているのに、全身に鳥肌が立った。


 これが、シヴァの真の力。


 「えーっと、シヴァ? こんなんブツケたら、本当にこのガラスケース、木っ端微塵どころか、跡形もなくなっちまうんじゃないのか?」


 「……いま、ボクもそう思った」


 ……え?


 「ちょ、タンマ! ってかストーップ! シヴァ、太陽の巨大化やめっ! ぶっ殺す気か!?」


 「そ、そんなことない! ボ、ボク、殺したくない、誰も、殺したくない、殺したくない、殺したくない、殺したくない殺したくない殺したくない殺したくない殺したくない殺したくない殺したくない殺したくない殺したくない殺したくない殺したくない殺したくない……」


 「こんな時に病気発動するな!!」


 あーでも、マジでこれはピンチ!

 このまま太陽が巨大化していったら、ガラスケースは愚か、この研究所、あるいはヘルガーデンごと呑み込んじまうぞ!


 その前に早く衝突させて、シヴァから太陽への魔力供給を断ち切らなければなんねぇんだが、その前にガラスケース!!


 ああ! あっちをたてれば、こっちがたたず!

 太陽の巨大化、止まれぇぇぇえええ!!!


 ──ジュゥゥ……


 太陽が、研究所の柱を一つ溶かした。

 ん? 溶かす?


 「シヴァ! そのまま続けろ!

 長老、しばらくシヴァを押さえる役、頼んだ!」


 「ふぇっ!?」


 「な、なんじゃと!? これ、リリス! どこへ行く! わわっ!」

 

 私はシヴァの背後から飛び出し、太陽が迫るチュチュとルーシーがそれぞれ入ったガラスケースをよじ登る。


 私の作戦はこうだ。


 まず、巨大化してガラスケースに近づいた太陽にチュチュのガラスケースを溶かしてもらう。

 チュチュを私が避難させたあと、次いでルーシーのガラスケースも溶かしたところで太陽には、この薄気味悪い研究所を破壊するのに使ってもらう。


 太陽の成長速度を考えれば、チュチュのガラスケースを溶かして避難させるまではそう時間が無い。

 テキパキやらねぇと、私まで太陽の熱に溶かされちまう。


 気合い入れて行くぞ!


 「こい、シヴァ!」


 待ってろチュチュ、今出してやるから!



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