ミズタマ戦雷鎖
ノーブラ・ノーパンの私と、下着姿のチュチュ。
かなり危ない2人組となってしまったが、致し方ない。
問題は、あの巨大ミズタマをこれからどうするかだ。
「さぁ、もうここまでヤラれたらやり返さねぇと気が済まねぇ。
やつを倒す唯一の方法は、内部の魔法元素を爆発させることだ。
だけど、物理攻撃や外から攻撃で内部の魔法元素のバランスは崩せない。
やつを覆う水分が魔法元素に触れないように変形してくるからな。
しかも直接内部の魔法元素のバランスを崩そうにも、私の軟弱スキル魔法じゃあ、あの巨大には足りない。
うーん……どうしたものか」
私は砂浜を我が物顔でゴロゴロと転がるミズタマを、遠く離れた海の家から憎らしく睨みつける。
「私の温度操作は範囲が狭くてもみ消されてしまった。
もっと、こう……広範囲的に魔法元素を魔法に触れさせられれば魔法元素のバランスを一気に崩せるかもしれないけど……」
私が打倒ミズタマの突破口をひねり出そうと考え込んでいると、チュチュがなにやらジャラジャラと引きずってきた。
それは、ブランコの吊しなんかによく使われるチェーンだった。
この海の家は、食堂のような構造になっており、金属チェーンとカラーコーンの役割を果たす棒とでお客がカウンターまで効率よく列を成せるようになっていた。
その金属チェーンを棒から外し、チュチュは無言で私にその先端を握らせた。
そして自分はもう片方の先端を握る。
何がしたいのか分からず首を傾げていると、チュチュがいきなり呪文を唱えだした。
「“馳せる馳せる 伝えよ稲妻 森羅万象我が想い”」
──バチィィィッ!
「いっってぇえー!!!」
体中に電気が走った。
静電気の比ではない。
今のは、チュチュが習得した雷魔法のスキル、『ショック(1)』だ。
私が『温度操作(1)』を習得した、例の初めてクエストのプレゼントキャンペーンだ。
私の『温度操作(1)』はせいぜい10から40度の間の操作しかできないクズスキルだが、チュチュの『ショック(1)』もたいがいだ。
威力は静電気の比ではないとは言ったが、スタンガンほどの電力はなく、ヤケド跡すら残さないほど弱い電気しか流れない。
つまり、魔法でできたすっごーく強い静電気って感じ。
使えねぇ。
「いや、待てよ?」
電気、ミズタマ、範囲、魔法、魔法元素……
「そうか、そういうことか!」
再び対ミズタマの突破口が開き、私の目の前に明るい光が刺した。
「よし、やっぱりあいつは水饅頭だ。
本当ならひと口でガブッといってやりたいところだが、和菓子はお上品に頂くとしようぜ。
この鉄の黒文字でな!」
【黒文字】
和菓子を食べるときに使う、太めの爪楊枝。




