大好きなゴブリン達。
「復活の儀式じゃ! 儂の優秀で賢き脳ミソを復元するぞ! 儂には賢き子が五人もおる。一人一人は儂には及ばずとも、五人合わせれば儂の脳ミソに限りなく近づくはずじゃ!」
な、何言ってやがるこのクソジジイは!?
本当に、頭を強く打ったせいで脳がイカレちまったのか?
「そんなこと、させっかよ!
つーか、お前の子供は五人じゃなくて十人だろ!
数字も数えられなくなったのか?」
「アホ抜かせ。儂が子と認めるのは上級ゴブリン、すなわちドゥ、トロワ、スィス、ユィ、ディスのみ!
下等な下級ゴブリンの悪い頭など、儂の後継者として相応しくない!」
その言葉に、私は限界を感じた。私の中の、怒りの炎が燃え上がる。
「おい、長老」
「なんじゃ?」
私は、ありったけの力を込めて、素手で長老のカラッポの頭に拳をぶち込んだ。
「ブハッっ!!」
ぶっ飛んだ長老は、汚い唾を吐きながら、私を睨めつけたが、そんなことじゃ私は怯まない。
「勝手に下級ゴブリンたちを下等と決め付けて、頭が悪いって思い込んでるお前のほうがよっぽど頭が悪い!
長老、お前はアン達五人……いや、十人のゴブリンの誰のことだってちゃんと見てやってねぇんだよ!!」
「また知ったようなことを。お疲れ様、儂はあの子らの父親じゃぞ? 一方でお疲れ様はあの子らと数カ月しか時をともにしておらぬ。そんなお前さんは、儂より何を知っているというのじゃ?」
「知ってるさ!」
はっきりと、蘇ってくる。
あの愉快なゴブリン10兄弟姉妹との思い出、彼彼女らの優しさ、強さ、個性、勇敢さ、賢さ、全て私の中にある。
「アンは、香水のビンを一個一個丁寧にデザインして、その香水を使う人の幸せを願うんだ。
その香水はナフが作ってて、ナフは人見知りがすごいけど、一度打ち解けたら積極的で、愛情表現ができるやつだ。
ドゥは姉弟妹おもいで、パワーバカで、明るくて、ちょっと抜けてて、けど頼れて、あんなイイやつ他にいない。
そんで、ドゥの抜けてるところを補っているのがディスで、ディスはあんなチビなのに頭良くって、冷静で、それでも全然嫌なやつじゃないんだ、それってすごいことなんだ。
トロワは私の師匠で、細いくせして力も強いし、戦闘能力が異常で、教えるのもスパルタだけど上手くって、気さくだしアッケラカンとしてるから絡みやすくって。
カトロも凄え強いんだ。クールに見えて実は負けず嫌いで、でもチュチュの扱い方とかで色々考えてくれて、優しいやつなんだ。
サンクは、あいつ本当に天才で、虫とか色んなことに詳しいし、発明もしちまうし、そん時の目がキラキラしてるんだ。気が強くて誤解されやすいかも知んねぇけど、そういう所があるから、みんなに好かれてるんだ。
スィスは最初、女かと思ったけど違って、けど女子力高くて、兄弟姉妹たちを裏で支える縁の下の力持ちでさ。
セプトとユィはいつも笑ってて、お互いがお互いのことすっげぇ思いやっているんだ。あいつらの笑顔を見ていると、みんな幸せになる。頑張り屋で、モウモウウシの世話も大変なのに欠かさなくて……あれっ」
気がつくと、溢れた言葉とともに私の目からも涙が溢れていた。
「私は、あの10兄弟姉妹のことが、大好きなんだ!」




