誘惑を振り切って。
「ふぇっ……!?」
まずいことになった。
ドレインタッチでシヴァの魔力を吸っていたら、シヴァが目を覚ましてしまった。シヴァは状況が飲み込めず、固まってしまっている。
今のうち、ここはひとまず退散……
……いや、まてよ。
これ、絶好のチャンスじゃね?
もとはといえば、私の目的はシヴァにキスしてこの胸の呪いを解くこと。
ここでキスをさっさと済ませちまえば、私は1つ目的達成できんじゃん!
「ふぇっ、あっ、ぼ、ぼく……??」
「……」
やめた。やめだやめだ。
なんで私から女なんかにキスしなくちゃなんねぇんだよ。
事情を説明してからならまだしも、不意打ちみたいにキスして私が女ったらしの女なんつー面倒くさいことにはしたくないしな。
だったら私の選択はただ一つ。
「シヴァ! お願いだ、お前は覚えていないかもしれないが私とお前の大事な人が今、危険な状態に晒されているんだ。頼む、私を信じて私の味方をしてくれ!」
「で、でも君、悪者で、ボク、えっ? ボクの大事な人って?」
「私は悪者じゃない。お前の味方だ!
お前のことも少しだが知っている。お前の力が必要なんだ!」
くっ、毒が……
「で、でもボク、何もできない。自分の攻撃魔法に当たっちゃうし、回復魔法だって、ちゃんとできたことがない。だから、さっき君を傷つけて……ごめん、ごめんね、ごめんね、ごめん、あれ、どうしてボク、ごめんね……」
あぁそうか、シヴァは記憶をなくしても、自分が回復魔法を上手くできないことを知っている。それは、リヒトを助けられなかった時から……
「シ、シヴァ……、」
「?」
あぁ、まずい。毒が本格的に回りだした。頭が……。でも!
「お前の……名前だ。
私に……謝るよりいい言葉を知ってるだろ?……お前が……命を大切にできる子だから……大丈夫だ、分かってる……」
ここで私の意識は失われた。
仁娯は学校ふたつ掛け持ちする予定なので忙しくなっちゃうけど、みんな大目に見てくれると嬉しいな☆




