眠り姫にドレインタッチ。
魔力残高たった18の私が相手するは、長老率いる数十匹のゴブリン兵、眠るシヴァを守る毒チョウチョ。
前途多難、攻略不可、渡る世間は鬼ばかり!
私の見え透いた虚勢を見抜いて襲いかかるゴブリン兵。
盾やツタ渡りだけでこの量をいっぺんに相手取るには流石に無理がある!
いや、凌ぐだけなら何とかなるかもしれないが、そうしている間にもチュチュやルーシーの身が危険に晒され続けることになる。
それは避けたい。
やっぱりここは、シヴァに目覚めてもらうしかねぇ。
けど、目覚めたところでアイツは私までも敵認識しちまっている。
うーん、どうしたものか。
「こうなったらヤケだ!」
クルッとツタ渡りをしていた体を半回転。身を翻し、突っ込んだ先は、毒チョウの群れの中。
「“炎の精霊 我の側に 具現化し 離れること無かれ”!」
私の周りに出現した、3つの火の玉。これで少しはチョウも怯む。
だが、十分ではない。
勇敢な毒チョウは火の玉を避けて尚、私に襲いかかる。
「くっ……神経系の毒かっ!」
チョウの毒にやられたのか、手足がしびれ、視界が歪む。
某ゲームの所持モンスターが毒状態にされたまま歩き回っている時に画面が歪む、まさにあんな感じだ。
「けど、今の私に必要なのは魔力! “彼女のもつもの 分かちたまえ 吸収せよ 彼女のものは我のもの”!」
流石のチョウも、落下する私の体重は支えられない。
私は眠りこけるシヴァの真上に落下し、ドレインタッチを詠唱する。
吸収、吸収、吸収……
毒チョウのリンプンを吸い込まないように息を止めながら、シヴァの魔力を吸う。
毒チョウがいい感じに壁になってくれて、ゴブリン達は近づけないようだ。
自分の身も危険に晒されているが、これはいい閉鎖空間かもしれない。
「ん……んんー」
やべっ、シヴァが起きる。
け、けどもう少し。
わたしの魔力はまだ30も回復していない。
「あと少しだけ……いけるか?
起きるなー、起きるなよー?」
パチリ。
「あっ……」
私の願い虚しく、シヴァの潤んだ大きな瞳が私の目の前で開かれた。