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長老の陰謀。


 「我らゴブリンは、古来より賢き生き物として文化を発展させ、富を増やし、繁栄してきた。だが、そんな我々でも喉から手が出るほど欲しいのに得られないものがある。

 それは圧倒的な力とゴブリンそのものの神聖さ、希少価値じゃ。

 我らゴブリンは、知っての通り、相手に魔力がどのくらいあるか見ることができる目は持っていても、儂らにはその魔力が殆ど無い。それは儂らに無い魔力を鼻先に吊るされているようなもの。すぐそこに見えているのに手に入れられない、この苦しみ。

 儂はその苦しみにどうしても耐えられなんだ。どうしてもゴブリンにも湧き水のように溢れる魔力が欲しい。欲しい。欲しい、欲しい欲しい!

 諦めるものか。絶対に手に入れてやる!

 そう思って研究を続けてきたある日、ある発見をした。

 魔力は母親の胎盤から注がれる魔力の影響を受け、赤ん坊の魔力を貯めるタンクを広げる。

 つまり、魔力が強い母親のお腹の中で育った赤ん坊は、より多く、強い魔力を持てるようになる。

 じゃから、半年前にこの迷宮に舞い降りた、青緑色の幼女の魔力を見たとき、これは神がゴブリンに与えた贈り物じゃと思った。

 この幼女を使ってゴブリンの更に高みを目指せと!」


 身振り手振りを加え、熱弁する長老。

 半年前に現れた、青緑色の幼女とはシヴァの事だろう。

 リヒトのサンダーバードによって突如、迷宮の最奥に飛ばされた、魔力の多いシヴァを見たゴブリン達は、シヴァを神の贈り物と考えたのも無理はない。

 シヴァの魔力の多さは私も知っている。

 チュチュの過去を覗き見たと時、治癒魔法を発動させようとして制御しきれず、暴走させていたロリだからな。あれは魔力が直接目に見えてなくてもやばい量なのは見て取れる。

 

 「じゃがあの幼女め、どんだけ臆病者なんじゃ!?

 儂らが近づこうものなら、木魔法で迷宮の最奥を変化させ、己のための要塞としてしもうた。

 儂は、幼女に最奥から出てきてもらうために甘い言葉をかけたり、世話をしておるが全く反応無しじゃ。

 さらに悪い事に、最奥にはこの迷宮の命となっておる赤い果実が実っており、幼女はそれを食べてしもうたそうなんじゃ。

 じゃが、幼女を咎めてもどうしようもない。仕方がないので、儂らは応急処置の十字架を作り、そして迷宮の秩序を崩壊させた罪を着せるのに丁度よい者を探した」


 「それがルーシーってわけか?」


 「そうじゃ。じゃが、それだけでは無い。

 儂がもう1つ、欲しいものがあると言ったのを覚えておるか?」


 「神聖さ、希少価値だ」


 「そう、それじゃ。

 儂らは数こそ増えたが、それとは引き換えに、希少価値というものを失ってしまった。

 迷宮にやって来る冒険者どもは、希少価値が高いってだけで、なんの役にも立たないモンスターは狩らないのに、希少価値が低いだとかぬかして我ら高貴なゴブリンを狩る。

 神聖な感じがするという見た目を持つモンスターには手を合わせ、儂らゴブリンには剣を振るう。

 そんなものは理不尽じゃ!

 だったら、儂らにもその希少価値と神聖さを加えればいい。

 そこになんと、この迷宮1希少価値の高いウロコヘビのメスを見つけた。

 それがルーシー、お前さんじゃ」


 長老はガタガタの歯並びを見せつけるように、顎を持ち上げニヤリとしてみせた。

 その不気味な笑い方に、ルーシーをはじめ、私も身震いせずにはいられない。


 「しかも、ちょうどよい事にルーシーは第1フロアから出てはならぬ家系のウロコヘビ。

 儂は、ルーシーが好奇心のあまり第1フロアから飛び出し、最奥の果実を食べてしまったという偽りの噂を流した。

 間抜けな迷宮の魔獣どもは1度うわさを丸呑みしたらもう考えを改めん。

 じゃから儂はルーシーをこの西の塔に隠し、更に別の情報を流す。

 居場所を失った哀れなルーシーにわしが手を差し伸べた。

 ルーシーと儂は恋に落ち、婚約をするのだと! カッカッカッカ!

 ルーシーは儂と結婚をすることで生きながらえ、儂はルーシーの、その神聖な遺伝子を手に入れることができる。

 まさに、ギブアンドテイクじゃ!」


 両手を天井に伸ばし、狂ったように笑い声を上げる長老。


 やばいやばいやばいやばい、このジジイ、本当にヤバイやつだ! エロ爺にもほどがある!

 ジジイゴブリンと、ウロコヘビのルーシーが結婚?


 しかも自作自演でルーシーを救った事にしてだと?


 「おっと、そんなバカなとか思ってそうなお連れ様よ。ゴブリンとウロコヘビの混血なんかはできないと思うておるじゃろ?」


 「……別にそこは気にならなかったんだが」


 わざわざそんな事を言うってことは、異種間交雑は、どうやら魔法でちょちょいとできるものではないらしい。


 「お前さんたち、第2フロアのキングは知っておるな?」


 「え?」


 その名前にピクリと反応しないわけにはいかなかった。

 キング、あのバカだがバカ力の持ち主、巨大カエル。

 私たちの因縁の相手だ。


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