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ミズタマ戦逆転


「“我ここに望む 全てを我の手の中に この温度を上げよ”!!!」


 形勢逆転。

 先ほどまでやられっぱなしだった腹いせに、私はミズタマたちを追い回していた。


 「ふはははは!

 さっきまでの勢いはどーした?

 おらおらおらおらァァァ!」


 それはそれは、愉快痛快だった。

 さっきまで、自分をいたぶってくれた相手に向かって覚えたてで使いたくてしょうがない魔法を思う存分ぶっ放し続けられるのだから。


 離脱モード全開だった私の変わりように、チュチュが白い目で見ていたような気もするが、そんなことは気にしない。


 そして私の温度操作が1匹のミズタマにクリーンヒットした。

 ミズタマが盛大に爆発する。

 あ~楽しい!


 けど、こいつら意外にすばしっこいな。

 まだまだ私が温度操作の扱いに慣れていないってのもあるけど、まるで当たりゃしない。

 さっきのも含めてまだ2匹しか破裂させてない。

 まだあと98匹もいやがる……


 ……ん?

 あれ?


 私の目に止まったのは、1匹のミズタマに群がるミズタマたち。

 そして1匹のミズタマは周りのミズタマたちを吸収していく。


 「おいおいおいおい、なんかスゲーデカくなってるんですけど!?

 ってか、合体してる!」


 98匹いた直径10センチほどの大きさのミズタマたち。

 それらがどんどん1匹のミズタマとなっていき、既に直径3メールを越えようとしていた。


 そして、98匹分のミズタマ全てが合体した。

 小さな姿で、素早くコロコロ転がったり、ピョンピョン跳ねていたりした可愛らしい水饅頭の面影はどこへやら。


 今や、奴が転がれば砂浜の砂がメリメリと音をたて、海の波の上を通ればまるでトラックのタイヤで水たまりをひいたように海水がしぶきを上げた。


 ただ、巨大化したぶん重くなったのか、跳ねることはなく動きも遅い。


 「ふっ、単細胞め。

 巨大化したからってイコール強くなるってわけじゃ無いんだぜ。

 これなら百発百中だ!」


 そして私は、愚かにも巨大化したミズタマの中心に向かって真っ直ぐ指差し、火系統魔法『温度操作』を発動させる。


 「“我ここに望む 全てを我の手の中に この温度を上げよ”!!!」


 巨大化がアダとなったな。

 馬鹿な奴め。


 「あばよ、水饅頭。味見できないのが残念だぜ」


 ミズタマの中の魔法元素の秩序が、私の魔法により乱され、ぶつかり合った魔法エネルギーが爆発する!


 


 ……はずだった。



 「な、なにぃ!?」


 私が指差した先、巨大ミズタマの中心で、一瞬だけ魔法元素が淀み、乱れたのが見えた。

 だが、それもほんの一瞬だけだった。


 乱れた魔法元素は、周りの魔法元素の重圧により、押しつぶされるようにして消えてしまった。


 合体し、体積が増えた魔法元素に対して、私の魔法は少なすぎたのだ。


 「くっ、巨大化最強説浮上……」


 なんてスレを立てている場合ではない。

 

 どうするべきか。

 あの絶望的な状況から、せっかく1つの突破口を見つけたんだ。

 ここまで来たら逃げたくない。

 そう思った時だ、


 「おい!まて、どこ行くんだ!」


 チュチュがいきなり、ビーチとは反対方向へと走り出した。

 

 まさかあいつ、1人逃げる気か!?

「ずりぃぞ!1人で先に離脱するんじゃねぇ!」


 私はチュチュのワンピースの裾をつかむが、チュチュに振り払われてしまう。


 再び駆け出したチュチュを追おうとするが、私は立ち止まった。


 巨大ミズタマが、白く光りだしたのだ。

 レーザービームの前兆だ。

 その巨大な図体から放たれるレーザービームの破壊力はどれほどのものか。

 岩陰に隠れたところで、その岩ごと跡形も無く消し去られてしまうだろう。


 「これは、ガチでヤバイやつ……」


 私は走った。

 なるべく遠くへ、ミズタマから離れるように。


 走っている時、チュチュが目の隅に写った。

 チュチュはミズタマに対して逃げるどころか、ミズタマを正面に、両手を広げて立っていた。

 

 「こっち」


 ばかっ!


 「何やってんだ!

 逃げるんじゃないのかよ!」


 いや、ちがう。

 ミズタマは、さっきから私ばかりを狙っていた。

 おそらく、それは私の幸運が著しく低いことと関係が無くはない。

 

 私がミズタマを追い回していた時、チュチュはそれをじっと観察していた。

 その時にチュチュは、そのことに気が付き、ミズタマの目をわざと自分に向けようとしたのだ。

 私の代わりに自分が的になろうと。


 ……意味わかんねぇ!


 私は気づくと、チュチュに向かって走っていた。


 巨大ミズタマがキラっと光ったタイミングで私はチュチュを押し倒すようにして砂浜に伏せ、直撃を免れる。

 が、レーザービームの風圧で向かい側の岸壁に叩きつけられてしまう。


 「カハツ!」


 そしてレーザービームを直撃した岸壁が、地鳴りにも似た音を立て、巨大な岩の雨を私の真上に降らす。


 「うわぁぁぁぁぁあ!!!」


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