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何でクワだったのか、よーやくわかったわ。


 ずっと私が疑問に思ってきた、「なぜシールダーの稽古でクワを振りかざすという剣士みたいな稽古をしてきたのか?」という疑問が、シールダーの稽古が始まってからようやく分かった。


 シールダーの稽古は、トロワのクワをかわしたり、盾で受け流したりしながら実践形式での特訓なんだが、そこで私は気がついた。


 「はぁ……はぁ……ふぅー」


 「お連れ様、今あっしの動きを読んだね?」


 「ああ。自分がやってきた動きだからな。とはいえ、トロワの動きは洗練されすぎていて私のとは比べ物にはならんが」


 「けど、基本は同じっすからね。

 シールダーは攻撃手の動きを理解してこそ強くなる。

 だから、まずは攻撃手側の気持ちを知ってもらったんすよ」


 「なるほどな。理にかなってる。

 けど、だったらクワじゃなくたってよかったのに。

 それ、めちゃくちゃ重くねぇか? 重心が支点から離れたところに偏っているし」


 クワは、軽い木の棒の先っぽに鉄の塊が付いていて、これが重い。

 振り回すと遠心力が倍々にもついて、全身で踏ん張らないと体を持って行かれそうになる。


 「だから、いいんっすよ。

 現にお連れ様、あんたもう息が整ってまっせ」


 あっ、と思って確認するまでもなく、私は自分がもう全くゼェゼェ言ってないことに気がついた。


 「前まではちょっとしたら、ヒィヒィ泣いてましたのにね」


 「な、泣いてなんかねぇしっ!」


 「へいへい、わーかりやしたから」


 ケラケラと笑い、私をからかうトロワ。


 まったく、ひょうきんというか、なんと言うか、トロワはトロワだな。

 モウモウウシ事件でユィにあんなかっこいい事言ったのと同一人物とは思えないぜ。


 私はちょっとすねた素振りを見せるためプイッと顔を横に向けると、チュチュとカトロの稽古の様子が見えた。


 チュチュはサンクが完成させたパワーブースターを履いて、カトロと剣を交えていた。


 もちろん、魔力はブーツに使う分だけで、剣は純粋な魔法ナシでの戦いだ。


 「へぇー。メシア様、なかなかやるじゃないか

 筋力と体力が加わっただけであの動きができるとはね」


 トロワもチュチュたちの戦闘訓練を観戦しだし、クワを杖のようについて前のめりになる。


 パワーブースターのおかげで剣が思うように振れるようになったチュチュは、それはもうガン攻め剣士と化していた。


 カンカンカンカンカンカンカンカンっ!

 と、踏切の音のように絶えず剣士と剣士がぶつかり合う音が響き、時には体をグルンと回転させてみたり、体勢を低くして足元を狙ったりと、真剣で真剣勝負を繰り広げていた。


 ってか、チュチュ攻めすぎだろっ!

 一応、稽古という名目なんだから足とか急に狙ったらダメだろ危ねぇな!


 まぁ、それをかわすカトロもカトロなんだが、こんなんに相手してやるだなんて、すっげぇ良い奴すぎるだろっ。

 私ならお断りだね。

 一歩間違えたら死しそうだし。


 「メシア様はあの投げられ稽古で素早さが格段に上がったね。

 攻撃に特化した剣士になったわけだ」


 「それはいいんだけどよ、カトロは大丈夫か?

 受けてる一方だけど、ヘタしたら死ぬぞ?」


 「はっはっ! 仮にもあっしの弟でっせ?

 カトロはあれで手加減してんすよ。

 今は戦いの感覚を身に染み込ませる時っすからね。

 いちいちカトロが勝ってたんじゃ……っと、ほらね」


 と、突然チュチュとカトロの動きが止まった。

 チュチュの剣がグラッと大きく傾いて地面に突き刺さった。


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