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ミズタマ戦新技


 ミズタマを倒す!

 そうと決まれば、容赦はしねえ。

 やつらはどう見たって水だ。

 名前もミズタマだし。


 だとしたら、植物。

 水に強いのは、昔っから植物って決まってんだよ!


 私は1掴みの雑草を引っこ抜き、土ごとミズタマに投げつけた!


 「雑草!あのミズタマの水分を吸い上げろォォ!」


 ──シュパッ……


 雑草はビーチの藻屑と化した。


 「ざっそぉぉぉぉぉお!!!」


 もはやこれまで。

 これはもう、諦めよう

 うん。

 私たちにこの依頼クエストは荷が重すぎた。


 私がドロップアウトしようとしたその時、チュチュが私の服を引っ張った。


 「まだ。打つ手はある」


 チュチュがなんのことを言っているのか私は分かった。

 だが、それはとてもじゃないが良策とは思えない。

 

 「無理だ!

 あれで何ができるっていうんだよ!?

 無意味な抵抗はやめるんだ!私は帰るぅ!」


 私はもう、離脱モード全開だった。

 


 そうこうしてる間に、また別のミズタマが白くなるのが見えた。

 ひとつ、またひとつ。


 ミズタマのレーザービームが私たちの隠れる岩を攻撃しだした。

 私は慌てて首を引っ込める。


 無理無理無理無理!

 あんなの相手にしてたら命がいくつあっても足りない!


 「リリス」


 チュチュが飛び散る岩の欠片から私を守るように覆いかぶさる。


 わわっ!

 やめろ、触るな!

 

 ええい、こうなりゃミズタマ(やつら)と殺り合ったほうがマシだ!

 イチかバチか、やってやらぁ!


 試してやろうじゃねぇの、私の新スキル!


 私は、岩陰から飛び出し、ミズタマめがけ、今朝覚えたばかりの新スキル、『温度操作(1)』を発動させる。



 ──今朝、冒険者ギルドにて。


 「はい。

 では、こちらの依頼をお受けするという事でよろしいですね」


 ギルドの職員さんが“ミズタマ捕獲”のチラシを受け取りながら私たちに確認を取る。


 「では、お2人はご依頼を受けられるのはこれが初めてですので、初回限定サービスといたしまして、スキルを1つプレゼントさせていただきます」


 おっ?

 なんだなんだ?


 なんと、駆け出し冒険者たちが駆け出しのまま終わってしまうことを防ぐため、冒険者ギルドは初めて依頼達成に向かう冒険者たちに、1つだけ初心者スキルをプレゼントするというキャンペーンを行っているという。

 

 企業的戦略ってやつだな。

 この世界にもそんな文化があったとは。


 「それではまず、リリスさんは火系統か闇系統か。

 チュチュさんは水系統か雷系統かお選びください」


 「じゃあ、私は火系統で」


 「わかりました。

 では、『温度操作』の呪文を教えますね。

 魔法は基本的に無詠唱ですが、初心者の方はそれではなかなか上手くいきません。

 なので、それぞれのスキルにはそれ用の呪文があります。

 こうしてスキルを習得していき、慣れてきたら無詠唱でも発動できるようになるのです」

 


 そういうわけで、私は火系統の初心者スキル、『温度操作(1)』をゲットしたわけだが、これがまた使えない。




 試しに習得したその場でコップの冷水に『温度操作(1)』を試してみた。




 「よし、試しに冷水を沸騰させてやる!」


 そして私は、冷水に向かって火系統魔法、『温度操作』を発動する。


 「“我ここに望む 全てを我の手の中に この温度を上げよ”!!!」


 何気に私の初魔法!

 すげー!やべー!私、いま魔法使ってるよー!


 ふふっ、ふはははっ、どーだ!

 私の魔法により、今このコップの中の水は触れられぬほどの熱湯となり……


 私が初めての魔法発動の感覚に酔いしれようとしたところに、邪魔が入った。

チュチュが煮沸しゃふつするコップの中に指を突っ込んだのだ。


 「おい!なにをっ、火傷すr……」


 「あったかい」


 ……え?


 そんなはずは!

 コップの中は私の『温度操作』により熱湯地獄となって……


 「……」


 コップの中に指を突っ込んだままの私に、職員さんがなんとも言い出しにくそうに頬を掻きながら、


 「えーっと、初心者スキルの温度操作ですので、せいぜい10度から40度の間しか操作できなくて……」


 そこまで言うと、職員さんは笑って言葉を濁した。

 気まずい空気がギルド内に流れた。



 ──そして今、私はこの使えない初心者スキル『温度操作(1)』を、ミズタマに向かって発動させたのだ。

 

 こんなクズスキルに何も期待しちゃいない。

 要は、覚えたての魔法を使いたいだけ。

 何もしないで帰るよりは、何か1つでも経験値を持って帰ろう。

 そんな考えで私はスキルを発動させた。

 まぁ、悪足掻きと思ってくれたって一向に構わない。

 だって、実際そうなのだから。


 だが、温度操作君は、私の期待を見事に裏切ってくれた。


 

 「うわっ!」


 突然、フラッシュを焚かれたかのように目が眩んだと思ったら、鼓膜が破れそうなほどの爆発音が響いた。


 ……何が起こった?

 

 私が温度操作を施したミズタマが大爆発を起こしたのだ。

まるでレーザービームを体内で爆発させたかのようだった。

 

 温度操作の力か?

 いや、あれにそんな破壊力は無い。

 温度操作はコップの中の水をい〜湯にする程度の力しかない。

 コップが持てないほどの熱さにするつもりが、その力すらも温度操作にはなかったのに……


 「いや……まてよ」


 ミズタマは水の塊の中に魔法元素を持っている。

 魔法元素は魔法エネルギーの塊だ。


 レーザービームの威力からも分かるように、魔法元素はとてつもない破壊力をもっている。

 そんな危険物質を保持するためには厳密な調整管理が成されなければいけない。

 

 もし、その調整がミズタマの周りを包む水により行われているとしたなら、それを飛び越してミズタマの内部、つまり魔法元素に直接魔法で働きかければエネルギーのバランスが崩れ、大爆発を起こしたと考えられる。


 要は、ミズタマの中の魔法元素に魔法が触れるとミズタマが爆発するのだ。


 見つけたぞ、突破口!


 「そうと分かれば、反撃だ。

 水饅頭のくせに、よくもこれまでやりたい放題やってくれたな。

 さあ、反撃だ。焼き饅頭にしてくれる!」


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