ごめんなさい、ちゃんと言えるかな?
一瞬の出来事だった。
怒りに任せてぶっ放したチュチュの“雷鳴”。
それは怯えるウロコ蛇3匹をまとめて灰と化し、チュチュとウロコ蛇の間に飛び込んだユィは“雷鳴”の余波に襲われるはずだったが、
「トロ姉!?」
それを阻止したのは、私の師匠、トロワだった。
「あいよ。ユィ、無茶すんなぁ。ちょっと焦ったじゃんかよ」
ニシシと笑うトロワが防御に使った“ナニカ”は真っ黒になりながらもギリギリのところで持ちこたえ、トロワとユィを守った。
「メシア様も無茶すんなぁ。ご自分の魔力の規模くらい把握してるでしょうに」
いや、チュチュも無茶はしたが、トロワも半端ねえ。
漏れたカスとはいえ、よくあんな雷を受けきったな。
しかもどっから出てきたし!?
瞬発力ありすぎだろっ!
チュチュは自分のしでかした事の重大さを自覚したのか、ションボリと頭を垂れている。
膝に付いた土を払いながら立ち上がるトロワは、そんなチュチュに歩み寄り、頭に軽くチョップを喰らわせた。
「ごめんなさい」
頭を抑えるチュチュは、目線を合わすため屈んだトロワに謝った。
「まあいいさ。それと、その言葉は、お連れ様に言ってやんな。心配させちまったろ?」
コクリと頷くチュチュ。
いや、心配なんてしてねぇし!
ちょっとビックリしただけだし!
ふ、ふんだっ! 謝ったチュチュの顔を早く拝みたいもんだぜ!
チュチュはまず、ユィにも謝り、次いで私の方へもやって来た。
ユィは、自分たちのためにやってくれたことだから気にしないでと言っていた。
「リリス……」
ションボリしたチュチュ……
ちょっとイジメてみたくなる。
「ったく、本当お前は無茶するよな。トロワが来なかったらどうなっていたことか」
わざとそんな事を言ってしまう私はなんて意地悪なんだろうと少し思いながらも、本音だから仕方がない。
しかしチュチュは更にションボリとして、小さな声で、
「ごめんなさい……」
と言った。
あまりの素直さに、こっちの調子が狂っちまう。
「まぁいい。みんな無事だったんだ。お前も含めてなっ」
ゆっくりと表情に明かりを取り戻していくチュチュ。
相変わらずポーカーフェイスだったが、私には分かるこの変化。
複雑だけど、複雑な中の一部でも分かれば上等だ。