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犯人はお前たちかっ!


 「ブッ壊せ! どーせ綺麗に直してくれるんだ。何度でも壊してくださいって言ってるようなもんだぜ!」


 「お仕事作ってあげようぜ〜」


 「それなっ!」


 「ナーニーガーソーレーナーダー?」


 ん? と、振り返ったのは見覚えのある3匹のウロコ蛇。

 

 モウモウウシの小屋に駆けつけ、扉を開く前から聞こえてきた耳障りなチンピラたちの会話。


 ヘルガーデン第2フロアで私たちに絡んできて、2匹を黒焦げにしてやったところ、逃げた3匹。

 そいつらはキングを呼びつけて私たちにけし掛けた張本人共。


 ってか、キング戦の時に途中で居なくなってたが、ここで会ったが百年目ってやつか?


 しかも、お前たちは私たちを更に更に怒らせたっ!


 私たちの顔を見て、ヒィッ……!

 と、小さく悲鳴をあげる3匹。


 泣いて謝ったってもう遅いっ!

 お前らだけは、絶対許さねぇ!


 だが、久々の再会だ。まずは笑顔を作らなきゃ、なぁ?


 「チュチュ、こいつらどうしようか?」


 「ウロコ溶かして、ヘビ皮剥いだ後、黒焦げにする」


 「よし、それがいい。まずは私の『温度操作』いってみようか」


 今度こそ泣き叫ぶような声で悲鳴をあげる3匹。

 タスケテクレーーとか言ってるけど、私は蛇語がわからない。


 「お、俺たちはもう嬢ちゃんたちに危害を加えたりしねぇよ!」


 「そんな事で私たちの怒りは買えねぇぞ?」


 「じ、じゃあなんで怒ってんだよ」


 「分からない? ばいばい」


 今なら、チュチュが嘘で私に向けていた生ごみでも見るような目が、本当に偽り物だったと分かる。


 今のチュチュはマジだ。

 生ごみなんて見られた瞬間、凍りついて粉々になっちまうぜ。

 正直、チュチュの顔が見れねぇ。


 「じょ、嬢ちゃんたちは知らないんだっ! あの赤いゴブリンが俺等にしたことをっ!」

 

 「はぁ? セプトがお前らに何したっていうんだよ?」


 「き、聞いてくれよっ!」




 ある日、セプトは1人、いつものように笑いながら意味もなく牧場を駆け回っていた。


 「あー、なんかおもしれー事ねぇの?」


 「それなー」


 そこへ、5匹のウロコ蛇たちがやって来た。


 「キキキキキキキキ!」

 

 「な、なんだこいつ?」


 「おいお前、なんか面白いことでもあんのか?」


 「キキキキキキキキ!」


 「俺ら、下級ゴブリンの言葉も分かるから、笑ってねぇで教えろや」


 「キキキキキキキキ!」


 「あん? おい、ふざけてんのか?」


 「キキキキキキキキ!」


 「……ダメだこいつ、イカれてやがる」


 「それな。頭おかしいんじゃね? ずっと笑ってるし」


 「なんとか言え、よっ!」


 そこで、ウロコ蛇が尻尾でセプトを叩き飛ばした。


 「へっ、ザマーm……」


 「キキキキキキキキ!」


 叩かれたセプトは、自分が倒されたにも関わらず、笑った。


 「何コイツ? まじでヤベー!」


 「おい、どこまでやれば笑わなくなると思う?」


 「実験しようぜっ!」


 そして、5匹のウロコ蛇たちは、無抵抗で笑い続けるセプトを袋叩きにした。


 けど、いくらやってもやってもやっても、セプトはただ笑うだけだった。


 そして、ウロコ蛇たちは毎日のようにセプトを甚振って面白がった。


 セプトはただ笑うだけだから、誰もセプトが袋叩きに遭っているだなんて気が付かなかった。



 そんなある日。


 「あんららち、はなれりゅのーっ!」


 そこに現れたのがユィだった。


 「セプトからはられりゅのっ! やめれーっ!」


 「おいおいお前ら、やめてあげろよ、可愛い女の子がお怒りだぜ?」


 「しかもまだ舌っ足らずなベビーちゃんだぜw」


 実際当時、ユィはまだ3歳であった。


 「うるしゃいっ!」


 しかしユィは賢く、たくましかった。

 ユィは、摘んできた山火事の原因となる自己発火植物の花をポケットから取り出し、ウロコ蛇たちに見せた。


 「ユィしっれりゅもんねっ! うろこへびは、火!」


 パッパッパッと、発火草を振り回す。

 発火草は、とても珍しい植物で、そんじょそこらに生えているようなものじゃない。


 実は、ユィは数日前からセプトがウロコ蛇たちに袋叩きにされていた事を知っていた。


 知っていて、自分がなんとかしなきゃと思った。

 幼いユィは、兄や姉に助けを求めるということを思いつかなかった。


 だから、ユィはウロコ蛇の弱点を調べ上げ、発火草に辿り着いた。

 そして、何日もかけてようやく発火草を手に入れたのだ。


 「ぎゃー、怖いよー! 発火草だぁーwww」


 「ウロコが、ウロコが溶けちまうよーwww」


 しかし、ユィはまだ知らなかった。

 発火草は、花の時期には火を吹かない。

 発火草は、火力の勢いを使って、遠くまで種を飛ばすときにだけ火を吹く。

 もしその時に運悪く、火の粉が他の草へ移ってしまったら山火事になるのだ。


 「くりゃえぇー!」


 ユィは発火草の花を振り回して、ウロコ蛇たちを追っ払おうとした。


 「ギャー逃げろー……って、なるとでも思ったのか?」


 火は出ない。ウロコ蛇たちの浮かべる不気味な表情。

 ユィはサッと青ざめた。


 「へっ、ガキのくせに調子乗ってんじゃねぇ、よっ!」


 パシーンッと、尻尾をしならせ、ユィを鞭打つ。


 「ギャハハハハッ! いいのが入ったぜ!」


 「ギャハハハハッ!」 


 「ギャハハハハ……グェッ!」


 「キキキキキキキキ!」


 骨が外れていくような、小気味よくも寒気のする音。

 ユィが顔を上げて見ると、セプトが1匹のウロコ蛇の両端を掴んで思いっきり引き伸ばしている。


 「キキキキキキキキ!」


 伸ばされているウロコ蛇は、尻尾のさきっちょをピクッピクッと痙攣させて白目を剥いている。


 「お、おいっ!」


 「キキキキキキキキ!」


 「う、うわぁ!」

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