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張り込みは精神力と体力勝負っ!

 

 牧場、家畜小屋の物陰。

 セプトとユィは、牧場での朝の仕事を終え、屋敷へ向かった。


 「よしっ、今だ! 仕掛けるぞっ」


 私はチュチュを連れて、モウモウウシの小屋の前へ。


 小屋の壁と扉のちょうど真ん中に魔法陣ができるような位置でチュチュに“雷鳴”を仕込ませる。


 「“イカズチの子よ 我ここに込める力をせしめよ──」


 これを6個。

 30分おきに発動させれば、3時間分だ。つまり、私たちの稽古時間。


 「“イカズチの子よ 我ここに込める力をせしめよ──」


 6個目の仕込みが終わった。


 へっ、さすが魔力モンスター。

 私がさせたとはいえ、本当に6個仕込みやがった。


 「“イカズチの子よ 我ここに込める力をせしめよ──」


 「ん? なんで、扉の中央にもう1個仕込んでるんだ?」


 チュチュは扉の中央に、つまり扉を開いても魔法陣が切れない場所に特大の「雷鳴」を仕込んだ。


 「ごしんよう」


 「ふーん。まぁいい。それより誰がいつ見てるかわからねぇ。

 とっとと退散するぞっ」


 って、なんか小悪党みたいなセリフだな。

 と、とりあえずトロワとカトロの稽古に遅刻したらマズイ。

 ここからはスピードと精神力の勝負だ。


 


 森、稽古場。


 「どぉぉおおりゃあああああ!」


 私は相も変わらず、トロワにクワを振りかざし続けていた。

 ったく、私はシールダー専攻だってーの!

 しかも、全然当たんねぇし!

 クワめちゃ重いし!


 そして、そろそろ牧場を離れて30分。

 一発目を確認してもいい頃だろう。


 私はカトロにぶん投げられ、空中飛行中のチュチュに目で合図を送る。


 チュチュもそろそろだと思っていたらしく、しっかり目が合った。


 「あーっ! 今、森の茂みに巨大な影が見えたぞー! ありゃなんだー!?」


 「……はい?」


 自分でも引くほどの大根役者っぷりだった。


 だが、なりふり構ってられるかっ!


 「危険な奴だといけないから、ちょっと、見てくるー!」


 そしてダッシュ!

 自分の演技から目を背けるためじゃねぇぞ?

 私の演技は最高だった!

 スタンディングオーべーションものだった!

 うん。そう思うことにしよう。


 「お、おい!」


 トロワが呼び止めるも無視してダッシュ!


 頼んだぞ、チュチュ!

 こっちは任せとけっ!


 「──時は来た 我と己の愚かさに喝采せよ”」

 

 ──ゴロゴロゴロゴロッ!


 くるッ!


 私は木の茂みに隠しておいた、木製盾を取り出す。


 ──バチィッ!


 「……ッ! 

 ……ふぅ、盾が木製でよかったぜ」


 けど、今ので1発目。

 つまり、1番弱い威力の稲妻。


 まじかよ、あとこれが最大で5回、威力を増しながらやってくるのかよ……!


 これからの不安を抱えながら、トロワの待つ稽古場へもどる。


 「ははっ、あれー? 鳴き声は近くまで聞こえたんだけどなー。おっかしいなー」


 再・大根役者の登場にトロワはシラケちまっている。

 うぅ……精神力との勝負っ!


 こうして、私は30分おきに存在するはずがない謎の巨大生物の正体を探りに行くこと5回目。つまり、現時刻正午直前。


 「お連れ様、休憩がほしいならそう言ってくださればいいのに。あっしだって、そこまで鬼じゃないでっせ?」


 どうやら、トロワは私が休憩したくて、わざわざ森までダッシュしていると思ったらしい。


 「いやいや、本当に巨大生物が……トロワもあの音を聞いたろ?」


 「まぁ、あの音は何かはわかりやせんが……それに段々凶暴化してきてる。森の木が倒されたりしてるみたいですし……まさか、開かずの部屋の猛獣が!? ちょっとあっしが見てきやすよ」


 まずいっ!


 「いやー! お師匠様のお手を煩わせるわけにはいきませんのでっ! ここは私、ユリ・リリスにお任せくださいっ!」


 「お連れ様、あんた今まであっしのこと1度だってお師匠様だなんて呼んだことn……」


 「あーっ! また今ちょっと見えましたっ! ではお師匠様、見てまいりますっ!」


 そして森へダーッシュッ!


 トロワはわけが分からず、また、カトロも私の行動を訝しげに見つめつつもチュチュの稽古を続けていた。


 ちなみに、チュチュは持ち前のポーカーフェイスなのか、スキル「真顔」なのかは知らねぇが、全く怪しまれることなく作戦を続けている。


 これが最後の仕掛け。6発目。

 これが掛からなかったらお昼は速攻で食べて、小屋の見張り。

 けど、昼食時にまたゴブリンたちにお誘いをされたらなんて言えばいいんだ……?


 そんなことを考えながら、ラスト1発っ!

 これは今までで1番威力がデカイやつ!

 5発目も間一髪だったからな……

 ええいっ、覚悟を決めろ、ユリ・リリス!


 「──時は来た 我と己の愚かさに喝采せよ”」


 くるっ!


 木製盾を構え、グッと両手に力を込める。


 ……



 あれ?


 来ない?


 「リリスっ」


 雷鳴が発動しなかった場合、チュチュには適当なことを言って私の元へ来るように言ってあった。


 「トロワとカトロ、先に屋敷へ戻るって」


 「そうか、それは好都合だ。よしっ、行くぞ!」


 そして私たちは、セプトとユィの牧場を荒らしている犯人をとっ捕まえに、牧場へ急いだ。



生ごみでも見る目のチュチュは、個人的に描きたくなって描いちゃいました笑

アナログと、デジタル色塗り載せてみます↓っ!


 挿絵(By みてみん)


 挿絵(By みてみん)

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