真っ昼間、それも人前で…
私の新スキル(?)歯ぎしりは、魔力モンスターチュチュによってキャンセルされた。
いや、歯ぎしりは新スキルでも無いし、この場において魔力とか関係ないんだ。
「わぁー、チューしてるぅ!」
「キーキキキー!」
さっきまでにらめっこして笑い転げていたセプトとユィがこちらを指さし、「チューしてるぅー♪チューしてるぅ♪」と言いながら、私たちの周りをぐるぐる走り回りだした。
「ちょっ! チュチy……っ!!」
不意打ちの感触に、私はなんの心の準備も出来なかった。
──ちゅっ、ちゅっ……んちゅ
「やめっ、今は昼だぞっ……」
「んちゅ……歯ぎしりやめる?」
そんなことのためにキスをしたのかぁ!?
「わ、分かった……やめるかr……んんっ!」
最後に強烈な一撃を放ち、チュチュはそっと唇を離した。
はぁ、はぁ、はぁ…。
急に来たから、焦った……
「おいチュチュ! 歯ぎしりを止めさせるのにキスするやつがあるか! それにどーせキスするなら夜にしろっ!」
これが夜なら私のCカップもどうにかなっていたかもしれんが、今は夕方で、月はまだ出ていない。
つまり、今のキスは私の胸にとって何のメリットもない。
チュチュが何か言いかけたが、それより先にユィが口を開いた。
「ねぇねぇ! ユィのモウモウミルク搾ってくるね!」
ユィ、助かった。どうかお前はそのまま育ってくれ。
ユィのおかげで空気が変わり、私はモヤモヤする気持ちを一旦忘れることができた。
「あ、じゃあ一緒に行かせてくれ。モウモウウシってのも見てみたいからなっ」
「うん! いいよー! ねっ、セプト!」
「キィー!」
というわけで、心機一転。
私たちはチーズ工場の2つ隣にある、モウモウウシの小屋へ足を運んだのだが、そこで事件は起こっていた。




