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山ざるドゥの本領発揮!


 はじめのうちは良かったんだ。

 何がって?

 初めのうちは、私もスキル「ツタ渡り」を使ってなんとか山を駆け回るドゥに付いて行けていた。


 だが、


 「ド、ドゥ……ちょっ、まって……流石に、もう2時間走りっぱなし……」


 かれこれ2時間も山をノンストップで、しかも猛スピードで駆け回っていたのだ。


 食材を見つけた時だって、一瞬しゃがんだりジャンプしたかと思えばすぐまた走り出す。

 採った食材はヒョイと後ろのディスに渡して、それをディスが選別していた。


 ドゥが背負ったカゴの中に入ったディスは、食べられる食材ならそのままカゴの中へ、食べられなければカゴの外へ捨てていた。


 まぁ、ほとんどがポイッとやられてしまっていたんだが。


 「やぁ、お連れ様! どうしました?」


 いや、どうしました? じゃねえよ!

 サンク、お前は間違っていた。

 ドゥは山ザルなんかじゃない。

 山ゴリラだっ!

 ゴリラが山にいるかどうかは別として、なんなんだこの体力の底無し感は。

 ちと、チュチュに分けてくれよ。


 「ドゥ兄、そろそろ休憩しないと。お連れ様が限界だ」


 よくぞ言ってくれたディス!

 まったく、このゴブリン10兄弟姉妹の末の子とは思えない1番マトモ感。

 いったい、兄姉の何を見て育ったんだか。良い意味で。


 「おぉ! それは申し訳なかった。お連れ様のカゴの中もそろそろ選別しないとなっ!」


 うーん、ちょっと違うが、まぁ休めるなら何でもいい!


 「よーし、じゃあお連れ様のカゴの中身をディスの前に出してください」


 「お、おけ」


 まだ息を切らしながらも何とか背負っていたカゴをひっくり返してみた。


 付いて行くのに必死で、食材は手当たりしだいだったから、そんな大したものは入っていなかった。


 イチゴみたいなやつが10粒。

 ブルーベリーみたいなやつが30粒。

 あとはクルミにアーモンドにヤマモモ。

 食べられそうなのはそのくらいかな。


 「むむっ? これは……」


 「どうした? 何かいいもん入ってたか?」


 見ると、ディスの手には黄色くて、ラグビーボールより2回りくらい小さな実があった。


 「いえ、これは珍しい。ココアの実です。中にはそのままココアの甘い汁が入っているんです。

 デコレーションには使えませんが、個人で楽しまれるとよろしいですよ」


 そう言って私にココアの実を手渡した。

 それは、地球で言うところのカカオの実によく似ていた。


 「そうだな、これは部屋に帰って飲むとしよう」


 「ややっ、お連れ様も結構集まりましたね!

 これだけあればデコレーションには十分です!」


 「ドゥ兄だけだと、毒を持ったものばかり集まるので、いつもはこの倍の時間がかかります」


 「いや〜、ほんと助かりましたよ。じゃあ、もう山を降りて食材を屋敷の台所に運んだら、家畜小屋へ向かいましょう!」


 と言うが早く、ドゥはもうカゴを背負って立ち上がった。


 「えっ、もう行くのか?

 も、もう少し休憩を……」


 「いえ、大丈夫です!

 もう食材を集める必要がないので、お連れ様も俺が背負います!」


 へ?

 

 と、ドゥは私をヒョイと肩に乗せると、もう片方の肩にもディスを乗せ、ついでに私の背負ってきたカゴもお腹の方に回した。


 「じゃあ、しっかり捕まっててくださいよおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!」


 「うぉわぁっ!!」


 前後に食材の入ったカゴ、左右にディスと私を乗せ、体力バカの爽やか兄さんは山を猛スピードで駆け下りて行ったのだった。

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