十字架の謎。
「十字架を建設することにより、狂人の神はそこに貼り付けにされた死体を迷宮の肥料とすることが可能だと言ったんです。
そして、言われるがまま父上たちは十字架建設隊を作り、定期的に死体を見つけては十字架を作っているのです」
「なるほど、その死体から吸い取った栄養があの光ってわけか。だからあの光を体内に通せば体力が回復したと」
「そう考えますね」
ふーむ。
多少なりとも私の知っている事と齟齬が生じたが、粗方は納得がいった。
「そこで今度また十字架建設隊が第2フロアへ遠征へ行くので景気付けに巨大ケーキを作ろうと考えついたのですよ!」
なるほどな、第二フロアは危険だからな。なんせあのキングみたいな奴がいるくらいだから。
ケーキでも食ってなきゃやってらんねぇってわけか。
「けど、巨大ケーキとなると、材料とかすごい量が必要になると思うんだが、足りているのか?」
「いえいえ、いま採集しているところでして。また山へ行かなければいけないんですよ」
「あぁ、フルーツや木の実はそのケーキのためだったのか。あとどのくらい足りてないんだ?」
「基本的な材料は全部揃いましたよ! あとはデコレーション用の食材と、セプトとユィが面倒見てくれている家畜から乳製品を貰うくらいだな」
「えっ、あいつら家畜産業をやっているのか?」
そんな話は自己紹介の時に聞いていなかった。
まぁ、家事感覚で家畜の世話をしているというのなら話は別だが……もしやお掃除とかしてるよー! は、“家畜小屋の”お掃除とかしてるよー! だったのか?
「はい! 俺の可愛い弟妹たちの世話している乳牛のミルクは極上だぞ〜! よければ、デコレーション用の食材を採取したら一緒に行きましょう!」
ふーむ。あの天真爛漫なセプトとユィがいったいどうやって家畜の世話をしているのか気になるなぁ。
「よろしく頼む。けどその前に、私もデコレーション用の食材集めを手伝わせてくれないか?」
山には一体、どんなものがあるのか。そっちにも私は興味があった。
「ホントですか! いやぁ〜助かるなぁ! 俺は食材を片っ端から集めまくるばかりで、ディスに没を連発されてしまうから、特にデコレーション関係はいつも滞るんですよー」
「だってドゥ兄、毒キノコばっかり集めてくるから」
「だってカラフルだから飾ったら綺麗かなーと思ったんだよー」
ため息をつく推定2歳児。
そんなディスに呆れられ、褒めてないのに何故か照れ笑いをする20歳の兄、ドゥ。
この兄、大丈夫か……?
ってか、食べられる食材かの判断はディスがするのね……
「チュチュ、お前はどうする?」
今、サンク発明、チュチュのブーストブーツは最終調整中だ。
素のチュチュのまま山に入るとなると、少々こたえるかもしれない。
なんせ、一緒に行くのはあの山ザルと称された体力モンスターのドゥ。
体力に関して壊滅的なチュチュが付いていけるか、自分でも不安なのだろう。
「チュチュ、先に牛さん見たい」
「よしわかった。んじゃ、後で合流しよう」
コクリと頷くチュチュ。
チュチュが家畜小屋へ行くというので、ドゥが紙に簡単な地図を描いてチュチュに渡した。
「じゃ、ちょっくら行ってるらぁ!」
「いってらっしゃい」
アン、ナフと別れ、私、ドゥ、ディスは山へ食材集めに。
チュチュはセプトとユィの家畜小屋へとそれぞれ足を運ぶのだった。