ナフは案外人懐っこい。
「んで、その10色香水はどうするんだ?」
「キィキキキキキキ」
「みんなにあげるの、だって」
「ほぉー。けどその前にアンが瓶を選んだりするんだろ?」
「キィキ〜」
「そうよ〜ってか? きっと喜んでもらえるから、置きっぱなしにせず片付けて来な」
「キィー」
私の言葉に従って、ナフは背中から降りると、できたての香水を持って向こうの方へ行ってしまった。
「キキキ、キキィキキキキキッキィキキ〜」
「あの子、意外に人懐っこいでしょ〜。だって」
「あぁ、正直驚いた。人見知りからの打ち解け早すぎるだろ」
アンはフフフ〜と笑っている。
ゴブリン10兄弟姉妹の長女アン。
おっとりとした雰囲気に香水管理という如何にも女子力高めな白色ゴブリン。
面倒見もいいし、この姉じゃなかったらあの個性が強すぎるゴブリンたちはまとまりが無くなって今みたいな仲良し兄弟姉妹にはならなかったかもな。
とか、しみじみ考えてしまう辺り、私もアンの雰囲気に呑まれているのだろう。
その時だ、
「やぁ、アン! 今度また十字架建設隊が第2フロアへ行くらしいから、景気付けに夕食会で巨大ケーキでも作ろうかと思うんだが、アンのセンスでデコレーション頼めないか!? おや、そこにおられるのはメシア様とお連れ様!」
なぜか葉っぱまみれで入ってきたのはゴブリン10兄弟姉妹の長男、もう一人のまとめ役ゴブリン。
黒色の髪に焦げ茶の肌。不自然なほどキラリと浮かび上がる真っ白な歯。
爽やか系、サンク曰く山ザルゴブリン、ドゥの登場だ。
そして、
「こんにちは」
その背中にというか、肩にというか、黄緑ゴブリン、ゴブリン10兄弟姉妹の末の弟ディスが乗っていた。