さり気ないアピールでグイグイ攻めよう!
「んで、なんで私は脚を舐められたんだ!?」
半ギレ状態の私にナフは恐怖を覚えてアンの後ろに隠れるかと思いきや、何故か私になついている。
「キキキ、キッキキキキッ!」
ナフが背後からジャンプして私の首に腕をまわしながら、ブカブカの袖を、さっき爆発したカラフルな10色の試験管を指す。
「キキ〜、キキキキキ〜。
キキキキ〜、キキ♪」
アンが歌うような声でなにか言っている。
「キキキキ、キッキキキキキキキキキキッキキキキィキィキキキィキキキキキキキキキッキキキ」
あはは〜。わかんねぇ。
という訳で、チュチュの「鑑定」結果を待つ。
「ナフ、香水作る人。みんなの香水できて喜んでるって」
「みんなの香水?」
「10色、みんなの色」
ははーん、なるほどなるほど。
つまり香水を合成していたのはナフで、このカラフルなのは香水だと。
そして色は、白、黒、水色、青、橙、黄、赤、ピンク、緑、黄緑とある。
これはこのゴブリン10兄弟姉妹たちと同じ色だ。
ナフはこの色とりどりな香水の開発に勤しんでいたが、なかなか思ったものが出来なかった。
しかしさっきの爆発でそれが達成でき、その爆発に関わった私になついて感謝の印に舐めてきたと……
最後のだけ納得いかぬ!
百歩譲って、ナフは文化としてよしとしても、問題はチュチュだ!
「ナフの事情はよーく分かった。んで、チュチュは、ナンデワタシノアシヲナメタノカナア!?」
語尾を強めて、でチュチュを問い詰める。
「お世話だから」
「あれのどこがお世話だよっ!」
空かさず突っ込む私。
しかしチュチュは何を言っているの? という顔で、
「リリス、お世話しろって」
いやいや、何を言っているの?顔は私がやるところだから!
「私は“私のお世話として私を助けろっ”って言ったんだ!
舐めるのが世話する事になるのは、毛づくろいする動物くらいなんだよっ!」
顔を真っ赤にする私を落ち着けるようにアンはキィキィ〜♪と言っている。それか、ただ単に歌っている。
「そんな事よりリリス、」
「そんな事よりとか言うなっ!」
「どう?」
そう言いながらチュチュはふわっとその場で一回転してみせた。
「どうって、何がだ?」
と言ってはみたが、その時私の鼻孔をくすぐる、まるで石鹸のような匂いが一層強くなったのを感じていた。
「アンが選んでくれた。チュチュの匂い」
私が気がついていないとでも思ったのか、チュチュは手首を剥き出して、私の顔の前に突きつける。
「どう?」
そしてもう一度、私に感想を迫る。
この場合、なんて答えればいいんだ?
今までの私なら、「どうもこうも、そんなの興味ねーよっ!」と突き放していたが、チュチュにそんなことを言う気にはなれなかった。
「えっと、どうと言われましても……」
「どう?」
チュチュは更に、私に顔を近づけてで答えをせがんだ。
私の背中にナフがいることなどお構いなしに。
「……まぁそのアレだ。いいん、じゃね?」
ああああ何だこの小っ恥ずかしい感じはっ!
これだけのことを言うのに何でこんなに気力を使わなくちゃなんねぇんだよっ!
「リリス」
「なんだっ!」
「ありがと」
「おっ、おう……」
チュチュは満足したのか、元の位置にもどった。
まったく、一体何なんだ……
さっきまで涼しかった香水セラーが無性に暑く感じたのだった。




