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香水セラーで出会ったのは…


 「キキッキ〜ィ」


 ゴブリン屋敷のとある風通しの良い一角。

 そこにアンの香水部屋があった。


 私は相当覚悟してこの部屋に入った。

 だって、香水部屋とか、めちゃくちゃ臭そうじゃねーか。

 臭いに酔ったらどうしよう……


 しかし、それは杞憂だった。

 

 「あれ……? 臭くない!」


 どこかの洗剤かなんかのコマーシャルみたいなセリフを言ってしまった。

 やべっ、と思って口を塞ぐが、アンは気にしていないようだ。


 「キィ〜キキキ〜キィ〜キィ〜キィ〜♪」


 鼻歌歌いながらアンプル管の中の液体の匂いを嗅ぎ、山ほどある様々な香水瓶に素早く移し替えている。


 アンプル管の中身は香水。

 アンはその香りを嗅いで匂いに合った瓶を素早く選んでいるのだ。


 一段落したら、アンは作業台から立ち上がり、私たちに近寄ってきた。


 「キキィキキキキキキキキキィキキキキキキキィキキキ、……」


 「あー、待ってくれ。チュチュ翻訳」


 「お父様の側近の方から頼まれまして〜、お二人に合う香水を選んであげてほしいと。うふふ〜」


 と、アンの台詞をチュチュが言うとまたサンクの時とは違った違和感が……


 「って、私は香水なんか……!」


 「それで、香水にどんな効果を求めているのでしょうか〜?……って」


 って、聞いてやしない……


 香水なんて、生粋の日本男児である私がつけるのはおかしい!


 基本的に香水は女がつけるもんだろ?

 男でも外国かぶれしてれば別だが、私は漢、ユリ・リリス!

 てやんでー、男が香水たぁしゃらくせぇ!

 男は汗臭いくれぇが丁度いいんだよ!


 「チュチュ、選んでもらえ。私は適当に見学でもさせて待ってるから」


 そうやって私は香水選びの難を逃れ、広い香水部屋を見て回った。


 まるでワインセラーだな。

 色とりどりの香水瓶が、まるでバーの奥に収納されているワインのように、直射日光や光の当たらないボックスの中に敷き詰められていた。

 少し手をかざしてみると、ひんやりとした冷気を手に感じた。


 匂いがしないのはこの保存法のおかげか?

 いや、でもそれだけじゃない気が……


 「にしても多いな、香水ってのは世の中にこんなにあるもんなのか。これ全部管理してるアンもスゲーが、一体誰が合成してるんだ? サンクは無機化学はバリバリだが、有機化学もイケる口なのか……?」


 そんなことを考えながらフラフラ見物して回っていると……



 「キッ……!」


 「ん……?」


 香水部屋の奥の方、香水セラーの影に隠れるように緑色の影が見えている。

 

 あれは、ナフだ。

 いつも他のゴブリンの後ろに隠れている、引っ込み思案なゴブリン。

 年齢も人見知りする年頃なんだろう。

 私はUターンして、ナフをそっとしといてやるのがいいかと思った。

 だがその瞬間、さっきまでナフが何をしていて、私が来たことによりその場を離れてしまった事が大惨事を巻き起こした。

  

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