話してみたら意外と仲良くなれることってあるよね。
ブクマ200件突破ありがとうございます!
記念イラスト☆サマー☼
たらふく食べた後のこと。
「キッキ、キキキキキ!」
サンクがチュチュに、何やら声をかけた。
おっと、そーいや今日の夕方までに何かができるとか言ってたな。
何ができるのかは知らねぇが、たった半日で出来ちゃうものだ。
そんなに期待しないでおこう。
「リリス」
「なんだ? まぁ、サンクの工場へ行くんだろ?」
コクリと頷くチュチュ。
「んじゃ、いってら。私は疲れたから先に風呂にh……」
「リリスも来て」
そう言って私の裾をグイグイ引っ張る。
グイグイグイグイグイグイグイグイグイグイグイグイグイグイグイグイグイグイグイグイグイグイグイグイ……
おいやめろっ! 借り物なんだぞっ。日本人は借り物を大切に扱う文化が根強いんだ!
「わーかったわかった! 行けばいいんだろ!?」
コクコクと、今度は2度頷く。
そして私はさっさと風呂に入って寝たいのに我慢して、サンクの工場へ向かったのだった。
「チュチュ、ここから先はきっと大事な話があるだろうから『鑑定』をオンにして、私に逐一翻訳しろ」
コクリと頷くチュチュ。
精神集中の修行で私ほど動き回っていないにしても、チュチュも疲れたのだろう。
いつも言葉:頷き=6:4
なのが、今日は8:2くらいになってる。
そんな所に逐一翻訳しろなんて言われて不機嫌になるかと思ったが、無理やり私を連れてきたんだ。そのくらいは覚悟しろよな?
「キッキーィ!」
「じゃっじゃーん」
「キキキキキキキキキキィキキ、キキーキーキキー!」
「これがあたしの発明したパワーブースター」
……なんか、サンクのハイテンションを抑揚のないチュチュの声で翻訳されると違和感が……
「キィキキキ!」
「履いてみて」
律儀に翻訳してから差し出された水色のロングブーツを履くチュチュ。
「キキキキ?」
「どおどお? ……ピッタリ」
自分の創作物が誇らしいのか、サンクの目はいつも以上にキラキラと輝いている。
けど、イマイチどんなものなのかピンとこねぇ。
だって、今のところただのロングブーツでしかない。
「キキッ!」
と、ハイになったサンクが、チュチュに翻訳する隙すら与えずロングブーツを履いたチュチュを工場の外へ引っ張りだした。
「お、おい!」
私も慌てて後を追う。
ったく、サンクは発明品の事になると周りが見えていないのか?
ちと暴走気味だぞ。
ツンデレ娘ってだけでもなかなかなキャラなのに、これ以上のキャラ付けは不要だぜ。
「キキッキ、キィ!!」
「スイッチ、オン」
と、水色のロングブーツが赤く変化した。
「キキキキキキキキキ!」
「この木を押してみて……?」
天は2物を与えた。
サンクにはツンデレと科学の才能だ。
そしてそのサンクは魔力モンスター・チュチュにパワーを与えた。
チュチュが軽く両手で押した直径およそ1メートル程の木は、ボキッと根本から折れ、押した方向にある木を薙ぎ倒しながらぶっ飛んでいった。
「キ。……」
やっちまった顔で飛んでいった木を見送るサンク。
「キキキキィキキキキキキキキ。キキーキキキキキ」
「魔力量の事わすれてた。パワー下げるわね」
そう言ってブーツの横に付いた調節バルブを絞り、赤色のロングブーツが緑色に変わった。
「いったい、何が起きたんだ!?
サンク、何をした?」
そこでサンクは自分の発明品、パワーブースターの説明をゴブ語でしてくれたが、案の定一切理解出来無いのでチュチュに翻訳してもらい、サンクからは話し方や身振り手振りによる大演説の熱量だけを感じさせてもらった。
「つまり、このロングブーツはチュチュの魔力を使ってチュチュの筋力を高め、体力をサポートする魔術道具というわけなんだな?」
「キィ!」
「そしてここのバルブで魔力量を調節して力の度合いを調節できると……素晴らしい!」
私は喜びのあまり、サンクにハイタッチした。
サンクも発明品が評価された喜びを表現するかのように飛び上がってハイタッチを返してきた。
「チュ、チュチュもっ」
チュチュも慌ててハイタッチの輪の中に参加する。
ジャンプ♪ジャンプ♪ハイタッチ!ハイタッチ!ジャンプ♪ハイタッチ!ジャンプ♪ハイタッチ!
「おぉっ!チュチュの手がっ!折れないっ!」
かッ、感動だぁぁあ!!!
「これでっ!チュチュのっ!大問題がっ!解決だっ!」
「キィーキッ!」
「サンクッ!お前はっ!天才科学者だっ!」
「キッキーィ!」
ゴブリン10兄弟姉妹のうち、初めから私たちに睨みを効かして突っかかってきたサンク。
だが、今こうして3人輪になり、ジャンプしながら笑顔でハイタッチを交わしている。
ツンデレ娘はツンから入れば誤解をされることも多い。
だが、知ってみれば愛嬌あるキャラクター。二次嫁の定番キャラとなるのだ。
星降る夜の、静かな森外れ。
私たちにまた、理解し合えた友達ができた。