高速回転酔っぱらい特訓!
チュチュがブンブン振り回されていた。
いや、比喩じゃなくってマジで。
チュチュはカトロに両足を捕まれ、それはもう竜巻でも起こすのかッ!?
ってくらいの勢いで、カトロを軸としてブンブンブンブン振り回されていた。
「な、何やってるんですかァァァ!?
ストップ、ストーップ!!」
焦った私の一喝に、カトロはゆっくり速度を緩め、目をマンガみたいにグルグル回したチュチュを地面におろした。
「か、カトロこれはどんな稽古なんだ?
私にはさっぱり分からんっ。
それにコイツはすぐに……」
わからん事にはうちの大事な戦力を任せておけんっ。
一体どういう了見でこんな見るからに酔いそうな……
「リリs……ぐぇっ……」
「Noooooooooooooooooo〜〜〜〜〜〜〜~〜~!!!」
……
いわんこっちゃない。
「ははっ、三半規管弱いなメシア様」
「いやいや、あんだけ振り回されればコイツでなくても酔うわ!」
ケラケラ笑うトロワに、少し申し訳なさそうに頭を掻くカトロ。
チュチュは地面に伸びている。
「んで、あれには一体どんな意味があったんだ?」
私も鬼じゃない。
チュチュには強くなってもらいたいし、意味さえ分かれば安心して稽古を続けてもらうことができる。
「キィ、キキキキキキキキキィキキ、キィキキキ、キィキキキキキキキキキk……」
「あぁー、待ってくれ。 トロワ、通訳頼む」
ゴブ語でキィキィ説明されても、私には一切理解できない。
チュチュは今は「鑑定」どころじゃねーしな。
水をさすようで申し訳なかったが、カトロの通訳をトロワに頼んだ。
「いや、口で説明するより、先に行きましょうやお連れ様。
カトロ、先に向こうへ行くべきだったな。
それと、この稽古もモノが完成してからだ。 見な、メシア様の脚」
「脚?」
と、私とカトロが同時に首を傾げてうつ伏せで伸びてるチュチュの脚を見る。
「脱臼してまっせ」
「キキッ(よわっ)!!!」
おいおい、こんなんでこの先大丈夫なのか?
本当に強くなれるのか?
……まさか筋力アップのための筋力が無いとなると、疑問を通り越して絶望的だ。
「よっと」
と、トロワがおもむろにチュチュの脚を掴むと、グッと骨を押し込んで関節をハメた。
ビクッとチュチュの体が反応し、グルグルしていた目が冴える。
「よし。
んじゃ、あっしらも付き添いで行きますか」
関節をハメたトロワは立ち上がると、クワを方に担ぎ、続いてカトロも立ち上がった。
「行くって、どこへだ?」
「キィキキキキキ」
「サンクのところ。でっせ」