師弟関係ここに成立!
「キィ」
「ん」
カトロが投げ渡したクワを、トロワは軽くキャッチした。
そして、確かめるようにクワの金具部分をノックしたり、棒の部分を持って振り回したりした後でカトロにグッドサインを出した。
その様子を傍から見ていた私とチュチュに気づきトロワが、
「あぁ、新しいクワをカトロに作ってもらってたんよ。
こっちはもう刃こぼれしちまってるからな」
そう言って今まで持っていたクワの刃を握ると、バキッとへし折ってしまった。
「んじゃ、これリサイクル頼むわ」
「キィキィ」
はいはい、と言った感じで……というか実際そう言ったのだろう。
カトロはトロワに折られて綺麗な断面を見せる金属と棒を受け取った。
「キキッ、キーキッキキーキーキキキキキキキ」
「しょうがねぇだろ?
これは戦闘でも使うんだから」
「えっ、トロワはクワで戦うのか!?」
カトロが何を言ったか分からんが、トロワの言葉に私は反応した。
「あぁ、剣も盾も何でもできるけど、畑作と使い分けんの面倒だからクワを併用してるかな」
剣も盾も!?
「トロワ、もし良かったらなんだけど、私とチュチュに稽古をつけてくんねぇか!?」
「?」
はてなマークを浮かべるトロワとカトロ。
そこで私は、自分はシールダーを職とし、チュチュは魔法剣士を職としているのだが、実戦で使ったことはないどころか、この武器を使ってどう戦うのかすら知らないことを打ち明けた。
「ふーん、なるほどね。
宝の持ち腐れもいいとこってことか」
ぐはっ。
手厳しい一言にぐぅの音も出ねぇ。
「いっすよ。 けど、あっし1人で2人見んのは流石にしんどいから、どっちかにカトロをつける。 いいな、カトロ」
トロワのほぼ強制的な提案に、カトロは軽く手を上げて了承の合図をした。
「な、なら私はカトロに稽古をつけてもらおうかなっ!
まだその……できるなら女はちょっと……」
後半は聞こえるか聞こえないかくらいのトーンで呟いた私の言葉はやはり聞こえていなかったらしい。
いくら稽古をつけてもらう立場とはいえ、男か女かなら、私は男の方が安心できる。
「なんだお連れ様、カトロに惚れたか?」
「ちゃうわい!!」
ケラケラと笑うトロワに、興味無さそうにそっぽを向くカトロ。
だが、笑い事ではない!
そんな誤解をされちゃあ男としての沽券に関わる。
「カカッ。 お連れ様、赤くなってまっせ?」
怒りの方で顔を赤らめた私を、トロワは照れ笑いととったのか、からかう様にトロワは私の顔の熱を冷ますように軽く手で扇いできた。
ギィーと、歯を食いしばる私。
しかし、そんな私よりも行動で苛立ちを表した人物がいた。
「だめ。 リリスはトロワに付いてもらって」
私とトロワの間に割って入るように1歩踏み出したのはチュチュだった。
「おっ、やる気だねぇメシア様。
丁度いい。 カトロは剣術の方が長けてるから、メシア様はカトロに付きな。
んじゃ、残念だけどお連れ様はあっしが担当するよ」
「おう! よろしk……って!
全然残念じゃねーから!!」
こうして、私とトロワ。 チュチュとカトロの師弟関係が今ここに成立したのであった。