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使命を受けて。


 言葉を失った。

 私が最も嘘を期待したコレーの言葉は真実だった。

 真実だと言うコレーの言葉自体もまた嘘かもしれない。

 だが、この表情を見ちまうと、それが嘘だとは到底思えなかった。


 チュチュは王族。

 国家軍事力のための研究材料としてまるで魚のように扱われてきた一国の姫の8女。


 そんなチュチュたちを救い出した一等騎士リヒトはチュチュたちを身を呈して守り抜き、他界してしまった。


 そして、恐らくこれは半年前の出来事。

 チュチュの姉妹たちはこのローリアビテにおける迷宮最奥のロリモンスターと化した。


 「黙っておくつもりはあったわ」


 「あったのかよ!」


 「だってそうでしょ?

 あの時にこんなこと言ったって、リリスちゃんは、“こんな初対面の女の事情なんか知るもんか! そんな事に俺を巻き込むな!”とかとか、言っちゃってたでしょ?」


 うっ……それを言われると図星すぎて何も言い返せない。


 「けどよ、今更そんなこと知ったところで何になる?

 追われ身のチュチュを守ってやってほしいってか?

 そんなら、このローリアビテの大女神様コレーがやりゃいい話だろ?

 なんで私なんだ?」


 チュチュたちはリヒトの雷鳥(サンダーバード)によってそれぞれの迷宮に匿われた。

 もしその後チュチュに何らかの不足事態が起こり、コレーのもとにやってくる事になったのならこれで万々歳じゃねぇのか?

 仮にもこのコレーとかいう変態ロリコン鬼死女神はこの世界で崇められている唯一神的なものらしい。

 認めたくはないが、そうらしい。


 それに、ポッキーゲームで分かったが、こいつの魔法の力は本物だ。


 だったら私といるより、チュチュはコレーといた方が安全だろう。


 「それはできないのよ」


 「なんでだ? 贔屓になるからか?」 


 「そうじゃなくて、今私はローリアビテにおける満月の力でこの地に降りたっているんだけど、それが無いと冥界から出ることすらできないのよ」


 「まじか、ヘボいな」


 「うっさい、駆け出し冒険者。

 死に際、私に命乞いしなさい!」


 それはたとえ死んでも嫌だな。

 こいつに命乞いするくらいなら私は盛大に命の花火を打ち上げて消える事を選ぶだろう。


 「だから、私はずっとチュチュちゃんたちを守ってあげることができないの。

 それに、基本的に私たちのような、世界を管理する女神は世界のものに干渉してはならないのよ」


 「おい待て、お前は私を殺した」


 「だから、追手たちをどうこうするわけにもいかないし、チュチュちゃんたちをどうこうするわけにもいかないのよ」


 「無視すんな、私はどうなる!?」


 「お願い、リリスちゃん。

 チュチュちゃんたちを助けてあげて。

 私があなたに託したキスの魔法は封印されたチュチュちゃんたちの真の力を目覚めさせる鍵となってるの。

 その力を引き出して彼女たちを守ってあげて!」


 「……」


 朝日が地の底から顔を出そうと、満月の反対側の空がぼんやり黄色くなってきた。

 

 女神コレーは、私と初めて出会った時も、外国人に扮して、私がテキトーに道を教えたにも関わらず、ありがとうと言い、抱きついてキスをしてきた。

 

 冥界でのやり取りでも、私の話なんて右耳から左耳へ筒抜けだった。


 「まったく、お前は本当に人の話をこれっぽっちも聞かない女だな」


 呆れた口調で言う私に、コレーはシュンとしてしまった。

 

 「自己中に話を進めて、他人任せで、ロリコンで、変態で、私を殺して……」


 更に私が追い込むと、泣きそうな顔になる。


 「だから、頼まれてやる。

 それがお前の、リリス様に対する心からの頼みなら、私はそれをやり通してお前を見返してやんなきゃなんない」


 その言葉を聞いて一瞬だけ、聞き間違いではないのかと考えたコレーの瞳に、一筋の光がさした。

 私は、腰に手を当て、Cカップの胸を張った。


 「ローリアビテの女神コレー!

 覚悟しろ。

 私に借りを作る機会を与えちまったこと、後で後悔するなよな!」


 少年漫画にでてきそうな王道ベタな台詞を決め込んだのだった。


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