ポッキーゲーム終了と同時に。
「なんだ……これは……」
途方に暮れ、リヒトの死を悲しみ、衝撃の事実に撃たれていると、真っ白だった映像に今までとは違う雰囲気の映像が流れ出した。
それはまるで、小さな写真のようだった。
そのどれもがピンク色の人を映し出していた。
そのピンク色の男は、写真の中で楽しそうに笑い、驚き、泣き、怒り、キラキラと輝いていた。
それは全部リヒトだった。
そして、映像に映った小さな写真はさらに小さく小さくなっていき、何万、何億と集まり、形を成していく。
そしてピンク色の騎士、ユーリシア・リヒトの写真から形作られたのは、ピンク色のロリ、ユリ・リリスだった。
この映像は、チュチュの意識。
チュチュのイメージ力が影響を与える記憶映像。
「チュチュは、私にリヒトを重ねている……?」
──ポキンッ
呟いた瞬間、ポッキーの残りが口の中で砕かれ、映像がある空間が遠のいていく。
「──ッ!」
戻ってきた。
ゴブリン屋敷のベッドの上。
ポッキーゲーム終了。
私はポッキーゲームを完遂した……
「!?」
ポッキーゲームを完遂したら、どうなるか。
と、いうかなんでこの状態を保っていられたかが疑問でならない。
チュチュは眠っているのか、まだ目を開けなかった。
私はゆっくりと体を起こす。
「お目覚めですか?」
声をかけたのは、私たちのポッキーゲームフィールドを展開した召使いゴブリン。
窓の外を見ると、満月の位置が大きく移動していた。
おそらく、深夜3時頃と言ったところだろう。
こんな時間までこの召使いゴブリンは私たちのポッキーゲームに付き合ってくれていたのか。
ちょっと感謝。
「おめでとう御座います、お連れ様。
先に戻ってこられたのは貴方様の方でございます」
「そうなのか?
意外だな……」
私の過去なんて、ローリアビテに転生してからはほんの数カ月程しかないのに。
あっ、だからか?
情報が少ないからチュチュは私がチュチュの事をどう思っているのか分からなくて出て来られないのか?
だとしたら、ちょっと不味くねぇか?
「なぁ、これって強制終了はできるのか?
つまり、リタイアだ。
チュチュは戻って来られないかもしれない」
「はい、できます。
ポッキーゲームのフィールド展開を私めが中断すればメシア様はこちらの世界に何時でも戻ることが可能となります」
「そうか。なら、もういいぞ。
ご苦労様だったな」
「いえ、お安い御用でございます」
「ところで、お前の名前はなんて言うんだ?
今度なにかお礼するからよ」
ここまで私たちのポッキーゲームに付き合ってくれた召使いゴブリン。
今度なにかお礼をしなくちゃな。
それには名前を覚えておいたほうが便利そうだ。
この召使いゴブリン、見た目はなかなか特徴的で、長い金髪に碧眼。
胸はかなりの巨乳で世に言う美少女……いや、美ゴブリン。
けどまぁ、私には関係ないがな。
ん? なんかこの感じ、デジャブだなぁ……
「私のお名前ですか……?」
「えっ、あぁ」
と、その召使いゴブリンがプッと吹き出し、笑いを押し殺し始めた。
「クククッ……まだ気がついてないのかしら……ククッ………あはははは! あー、もう我慢できない。
おっかしぃの!」
召使いゴブリンは声をあげて大爆笑しだした。
それに、召使いの丁寧な口調が崩れ、なにやら私を小馬鹿にしてきた。
「お前、誰だ?」
召使いゴブリンはまだ笑っている。
そして、一通り笑い転げたあと、深呼吸して落ち着くと、
「じゃ、まぁ教えてあげるわよ。
私の可愛いリリスちゃん♪」