チュチュの過去〜第3幕(正義と平和)
何度も、何度も2人の王国騎士と元王国騎士の剣はぶつかり合った。
魔法は一切使わない、純粋な剣での闘いだ。
真っ向からぶつかり合う、騎士と騎士の真剣勝負。
それも遂に決着がついた。
「ぐはッ……」
リヒトの肩から心臓にかけて、大きく体が割かれ、血飛沫があがる。
うめき声すら出せない。
うめき声の主は、リヒトの相手をしていた騎士のさらに後ろにいた1人の騎士のものだった。
ありったけの力を込めて投げられたリヒトの剣は、その騎士に命中し、貫いた。
倒れたその騎士は剣を斜めから振り切ろうとしていたところだった。
そして、倒れたそいつの向こう側では、傷だらけで、封印の魔法陣に包まれたアーティと007が解放された。
リヒトたちが1対1の勝負をしている間に、まだ生きていた追手の1人がアーティと007を狙ったのだ。
そして、リヒトは自らの攻撃手段、防御、命、その全てを捨て2人を守ったのだ。
リヒトを切った騎士の方は、状況に気がつくと、サッと顔を青ざめ、剣を取り落とした。
「俺は……俺は……!」
ガクッと膝を地面に付き、魂が抜けたようになる。
「だが、俺は王国騎士……
国のために、身も心も捧げた……」
そして、今までリヒトに向けていた殺意を今度は、目の前のロリ2人に向ける。
アーティと007はそんな殺意に気がつくことはなく、ただ目の前で何が起こったのか。
リヒトの死を目の前で見せつけられた恐怖に震え上がり、アーティはビー玉のような瞳を大きく見開き、007の炎は涙で消されていた。
「我が国の平和のために!!」
現一等王国騎士の誇りとプライドのため、彼は自分が正しいと信じる方角へ剣を振るった。
「“古の雷鳥 天に轟・地に降り立て して我が思いの使者となれ”!」
「!!!!!」
アーティと007に襲いかかる現一等王国騎士の体が一瞬にして黒焦げになった。
鳥だ。
雷をその美しい翼にまとい、何者にも邪魔されることなく大きな眩しい翼を悠々と広げてチュチュたちの敵を一掃したその鳥は伝説にみる──雷鳥だった。




