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チュチュの過去〜第3幕(リヒトvs現一等王国騎士)


 「リヒト!」


 それから間もなくして、隠れ家にリヒトが息をぜぇぜぇ切らしながら戻ってきた。


 「リヒト、大変なことになってしもうた。

 007が外へ飛び出した。

 今、001がその後を追っておる」

 

 青紫カラーのロリ、私の記憶が正しければ002が、息切れのため汗も拭えないリヒトに説明をした。


 「ああ……『感知』で、……分かった……ここはもう危険だ、みんな逃げるぞ」


 相当焦って戻ってきたのだろう、リヒトは途切れ途切れに言葉を連ねた。


 だが、意味は通じた。

 もともとロリたちは単語を途切れ途切れに連ねるところから言葉を練習したから、ロリたちにもその意味は充分通じた。


 それによると、リヒトは恐らく雷系統の魔法に適性があり、隠れ家に仕掛けでもしていたのだろう。

 自分の留守中に扉が開いたことをスキル『感知』によって感知し、飛んで帰ってきた。

 そして自体を把握し、この隠れ家はもう敵に見つかってしまったと考え、この隠れ家は危険だ。

 もうここには居られないと。


 「みんな馬車の荷台に乗れ!

 あれにもこの隠れ家と同等の魔法がかけられている。

 荷台に入るんだ、早く!」


 瞬時に呼吸を整えたリヒトは、震えるロリや泣きじゃくるロリを抱え、皆を馬車の荷台へと促した。


 残された6人のロリを荷台に乗せ、リヒトは馬を走らせた。


 また同じ。

 リヒトと初めて出会った時、馬車に放り込まれ、ガタガタと揺れる床に体がバウンドし、恐怖と不安の色がチュチュの視界にフィルターをかけていく。

 

 だが、チュチュはあの時とは違う行動に出た。

 四方を囲まれた荷台の中から前方、リヒトがいる、馬の操縦席の真後ろに当たる小窓から顔をのぞかせる。


 「リヒト!」


 「008、危ないから下がっていろ!」


 その時だ。

 馬車の前方、山の奥から黒い煙と火の粉が飛んできた。


 「これは……」


 黒い煙は2種類。

 木が燃えて炭化して立ち込める黒い煙と、まるで小さなブラックホールが幾つも浮いているかのような黒いモヤ。


 「くっ……飛ばすぞ!」


 リヒトがピシャリと馬に鞭を入れると、馬車は更に加速した。


 木々の間を抜け、起伏を繰り返す獣道を目にも止まらぬ速さで駆け抜けていく。


 「いた! 007、001!」


 チュチュの小さな指が先を示す。


 業火と深い闇が渦巻く中心に、紺色のロリと燃えるロリが背中合わせにして、しゃがみ込んでいた。


 そして、この二人のロリを取り囲むように、銀の鎧を着た王国騎士たちが剣を構えていた。


 「001!007!」


 「リヒト!」


 馬車は走ってきた勢いのまま数人の王国騎士たちを蹴散らした。

 その反動の衝撃は大きかったが、チュチュはしっかりと小窓のサンにしがみつき、離れなかった。

 おかげで私が見ている映像にもしっかりと荷台の外の様子が見てとれた。


 「おらぁあ!!」


 王国騎士が数人がかりで馬を刺し抑えた。

 馬車は横転し、土が跳ぶ。


 リヒトは馬車から飛び降りると、腰に提げていた銀色の剣、王国の紋章が入った魔剣を抜き取り、雷を纏わせた。


 「その子たちから離れろ!」


 次々に追手の騎士たちを薙ぎ倒していくリヒト。

 それはまるで、地上に稲妻の神が降臨し、無力な人々をねじ伏せていくかのようだった。


 「リヒト!」


 追手の騎士の一人がリヒトに叫んだ。


 「なぜ国を裏切った!?

 なぜ俺たちを裏切った!?

 お前のせいで、王はお前と関わりの深い者たちを皆殺しにしたぞ!」


 その言葉に、リヒトがピクリと反応したのが分かった。


 「どんな理由があったか知らねぇが、俺はお前を許さねぇ!

 俺はお前を殺すと、王に誓ってきた!」


 ガキンッと、金属同士がぶつかり合う音がし、追手騎士の剣をリヒトの剣が受け止めた。


 「お前はこんな子供らなんかのために一等王国騎士としての地位も名誉も捨てたというのか!」


 リヒトが剣を受け流し、飛び退く。

 だが、追手の騎士は間髪入れず、リヒトに剣を振りかざす。

 リヒトは地面を転がり、受け身をとってそれをかわす。

 

 「お前は言った!

 雷魔法の真髄は“平和”にあると!

 その為にお前は王国騎士になったのだと!」


 次から次へと剣を振るう追手の騎士。

 リヒトは軽い身のこなしでそれを避け、追手の騎士の剣を空振りにさせていく。


 時には剣を交え、相手騎士の言葉を受け止める。


 「だがどうだ!

 お前のやっていることは自己満足だ!

 なにが平和だ!

 仲間を捨て、今もこうして王国騎士たちを殺すような奴に平和を語る資格はない!」


 圧倒的にリヒトのほうが実力が上なのは見てとれた。

 だが、リヒトはただ黙って、歯を食いしばり、苦い言葉を浴びせられ続ける。


 「国のための研究を無下にし、王に背いたお前には平和を語る資格はない!」


 追手騎士の矛先がリヒトの髪を掠める。


 「自己満足のために周りが見えないような奴に、平和を語る資格はない!!」


 その言葉に何を思ったのか、リヒトは剣を手放し、真っ直ぐ投げた。


 相手の騎士は思いがけない反撃の仕方にも瞬時に反応し、風のように飛んできた剣をすんでのところでかわした。


 丸腰になったリヒトに大きく剣を振りかざす。


 「死ねぇぇぇえええ! リヒトォォオ!!!」



 

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