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Descendant of world  作者: 黒ノ月灯
第1章 Beginning
2/2

母 と 娘

「この伝説が今の世界の始まり…」


書斎の片隅の焦げ茶のソファに

その少女は座っていた


「イヴって…私と同じ名前だ…不思議」


少し埃をかぶった分厚い歴史書を

膝の上に置きながら そう呟いた


(赤い色に金色の文字 いかにも

すごそうな感じ…)


重そうな歴史書を両手で

ひょいっと持ち上げると

物珍しそうにじろじろと見る


-どうやら彼女の頭の中は

次々と周りの事象や姿に気を取られ

忙しいらしい-


しばらくして 腕が疲れたのか

彼女は目の前の机に

歴史書を半ば乱暴に置いた


「はあ〜ぁ…文字ばっかりの本

見てたら 目が痛くなってきた…

よしっ!休憩休憩…」


そう言って目を瞑り

今度はゆっくりと微睡む


-余程 疲れていたのだろう-


彼女が眠りにつくのに

そう時間はかからなかった


-………


書斎は静かだ


聞こえるのは風の音

イヴの寝息


黄緑色のカーテンは風を受けて

しゃらしゃらと揺れ

書斎に新たな息吹が満ちる


そんな気持ちの良い午後-


少し焼けた素肌に

胸元まである長い黒髪

白いワンピースに

薄紫色のカーディガン


絵に描いたような風景-


-だが 時に人生は残酷だ

それを 彼女は思い知る-


-コンコンッ


「イヴ?」


そう聞いた声は物音を立てぬよう

ゆっくりと慎重に書斎の扉を開く


「ふふ…」


赤茶色の髪が目立つ女性は

イヴが寝ている姿に笑みを零した


その女性は彼女が横たわる

ソファへと近づいていく


「もう イヴったら こんなところで

眠っていたのね…探したのよ…」


半分呆れたような口調で言いながら

彼女の肩を手でとんとんと叩いた


-彼女はゆっくりと…寝返りをうつ


「まぁ 起きないわよね…」


女性は頬をやや引き攣らせながら

寝ている彼女に笑いかけた


-すぅ…はぁ…


女性は彼女を見下ろしながら

深呼吸を1つ…


「イヴっ!起きなさーいっ!」


-……!!


イヴは雷が落ちたかのように

ソファから飛び起きた


寝起きで開きかけの

目をまんまるにしながらも

彼女はその女性を見た


「っ…お母様っ!!」


-書斎に入ってきた女性は

イヴの母 イザベルであった-


イザベルは仁王立ちで娘を見る


「まったく…もう…

今日は市場に買い出しに行くって

朝 話したでしょう?」


険悪な顔をした母のその言葉に

イヴははっと我に返り

ソファの反対側にある

壁掛け時計に目を向けた


-針は15時を回っている


「ごめんなさいっ!!

すぐに支度しまーすっ!!!」


母の顔を見ずに

謝りながら書斎を走り去っていく


「10分で済ませなさい!」


返事はなかったが

娘が慌ただしく準備する物音を聞き

イザベルはくすっと笑った


-………


「…お母様…」


体を扉に半分隠しながら

そっと尋ねた


イザベルはびくっと肩を震わせた


「…もう ノックくらいしなさい

どうしたの?もう終わったの?」


「いや…そうじゃなくて…」


恥ずかしそうに口篭るイヴに

イザベルは首を傾げた


-イヴはワンピースを指差し-


「…このまま…」


「却下よ 着替えなさい」


イザベルは見切ったように

イヴの言葉を遮った


「はい…」


イヴも分かっていたように

苦笑いをしながら部屋に駆け込んだ


-ドタドタッ


「まったく…

いつまでも子供なんだから…」


娘が部屋に駆け込んだ後

何故か少し嬉しそうに

イザベルは呟いていた-

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