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Descendant of world  作者: 黒ノ月灯
序章
1/2

伝 説

それは 太古の昔-

人間達は貪欲に力を求めていた-


ある者は地位を- ある者は名誉を-

ある者は大金を- ある者は不老不死を-


その当時 とある秘境の地に

魔石に封じ込められた強大な魔力が

存在するという言い伝えがあった-


人々はその存在を信じ

自らの欲の赴くままに行動し続けた-


村を焼き払い- 人を殺し-

人ならざる行為をし続けた-


権力のない貧しい者達は

次々と国外追放され 住む場所を失い

飢餓で苦しみ死んでいった-


そんな中 魔石に込められた魔力が

ある一つの家族を守った-


その家族に特別な力は何も無く

国外追放から生き延びた

ただの貧しい農夫婦-


その夫婦の間には赤子が宿っていた-


妻の腹はかなり大きく膨らみ

もうすぐ出産を迎える様子だ


夫婦はこの世界に産んでしまう

赤子を酷く悲しみながらも

我が子の誕生を心待ちにしていた-


幾日がすぎた満月の夜-


この秘境の地にも貪欲な人間達の

魔の手が迫っていた-


大きな満月が妖しく笑うこの夜-


時を狙うかのように妻の腹から

赤子が産まれようとしていた-


妻は夫の手を力いっぱい握りしめ

声を噛み殺し 赤子に力を注ぐ-


医療用に適した機材も何も無い

山奥の木の根元

背中を幹に預け 赤子が寒くないよう

妻と夫は肌着を全て脱ぎ捨てていた-


そんな妻の額からは汗が滴り落ち

唇からは夥しい程の血が滲んでいた-


「まったく‥お前の事をもっと…

まともな環境で産んでやりたかった…

私を許しておくれ…」

そうきれぎれに妻は呟き

渾身の力を振り絞り

やっとの思いで赤子を産んだ-


夫は涙で濡れた顔に笑顔を浮かべながら

天高く娘を抱き上げた-


だが 産まれて来たその娘は

とても小さく今にも死んでしまいそうな

小さな産声と呼吸をしていた-


夫は青ざめた顔で娘を見つめた-


夫は妻と寄り添い 娘を暖めた-


「私の分まで…お前は生きなさい…

強く大きく…いつか この世界を救う

そんな…そんな存在になりなさい…」

妻は力強く娘に語りかける-


その時 夫婦と娘を囲うように

眩い光が満ちはじめた-


「…これは…何事だ…」

夫は目を丸くしながら

娘を抱く腕を一層強めた-


眩い光は人型に姿を変えると

何とも心地よい声でこう述べた-


「汝の願いを聞き入れよう…

その赤子の命と引き換えに汝の魂を

我に捧げるのだ…」


夫は妻を見て 説得を試みた


「やめるんだ…やめてくれ…

お前が居なくなったら 俺は…どうしたら…

この子をどうやって…」

夫は必死に涙を堪え 妻に訴えかける-


だが 妻は冷静に夫に告げた

「私が居なくてもあんたがいる…

きっと何だってやれるさ…

この子は私達の宝…何があっても

絶対に手放さないで…約束して…」


夫は妻の決心を悟り

顔を曇らせながらもゆっくりと頷く-


妻は光に向き直り 宣言する-


「貴方様の事は何も知らないが…

娘を守り通して下さるなら…

私のこの魂 持って行かれよ…」


か細い声で囁く妻を光は抱き上げ

妻にこう述べた-


「汝の願い 聞き届けた…

この赤子の命 我の命尽きるまで

守り通すと誓おう…」


それを聞き妻は光の腕の中でゆっくりと

息を引き取っていった-


光は妻を抱き上げたまま

夫に深く頭を垂れ消えていった-


夫はいつまでもいつまでも

その光の跡を見据えていた-


-………


「お前と俺で生きてい……」

そう言いかけた夫の心臓からは

血が流れていた-


貪欲な人間達が光を追って

現れたのだった-


言葉もなくじりじりと近づく

獣と化した人間達-


夫は最後の力を振り絞り


「イヴ…」


そう呟いて死んでしまった-


取り残された赤子は

瞬く間に光に包まれ消えてしまった-



「この伝説が今の世界の始まり…」

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