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無題  作者: 変身キャンディ
レートとレスティン
2/15

ジュルジュルX

 重い足取りで獣道を掻き分けレートは何度も溜息を吐いた。その数が二十を超えた所で二階構造の自宅が見えてくる。一見して簡素。良く言って素朴で趣きがある丸太小屋小屋。シンプルな理由は各間取りの組み替え、出窓の位置、玄関ですら母親の魔術で簡単に組み替えれる仕様となっているからだ。

 自分で干した肌着やシーツが木漏れ日に照らされ、穏やかに風に揺られている。もっとも今のレートには爽やかな風景として到底見えはしないのだが。

 裏の勝手口から中に入ると、空腹を刺激する香草の匂いが鼻いっぱいに広がった。台所に置いてある年季の入った底が深い鍋が蓋をカタカタと言わせている。中の黄金色のスープには緑の野草や赤い根野菜等が気味よく踊っている。

 町から小山二つを挟んだ人気の無い森の中。そこでレートは母親と生活をしていた。


「母さん沸騰してるよー」


 黄金色のスープを小皿に移し味見をするレート。それを含むと先程までの憂鬱な表情と代わり目が丸くなる。


「おお!昨日より柔らかくなって美味しい!我ながら上出来だな」


 その声を聞きソファで寝転んだままの母親が、寝ぼけながら手を挙げた。右の人指し立てゆっくり時計回りに動かすと、台所の包丁が独りでに動き出しあっという間に何かの肉を細切りにしていく。

 レートが掛け声と共に宙に付け合わせの香草を投げた。落ちる間もなく華麗な包丁捌きで食べ易い大きさに切られる。

 ふわふわと漂ってきた小瓶からは香辛料が降り注ぐ。部屋が明るくなったと思いきや、肉は香ばしい音を立てあっという間にニンゲンの本能を刺激する具合に焼けていた。甘美なる蒸気を出す、肉汁滴る宝石の出来上がりだ。


「この肉どうしたの?」


「なんかね、さっき帰ってくる途中にはぐれた猪が飛び出して来たの。たまにはお肉もいいかなって思って」


「俺が追いかけてた猪だよ!結界にぶつかって逃げられたんだよ!」


「あらあら。慌てん坊さんねー」


「一昨日より結界の範囲が狭くなってんだよ!言ってくれよな母さん」


 頰に手を当てて不思議そうに首を傾げる母親。レートは肩を(すく)め何かを諦めた様子で会話を終わらし食事の支度を再開する。比較的野菜を好む母親は肉類を調達することがまずない。

 レートが肉を食べたい時は自分で狩猟を行わなければならない。魔術は置いとくとして裏山にはいくつか罠を仕掛けている。

 しかし魔力が低い生物が通り抜け出来る結界とはいえ、警戒心の強い野生動物が滅多に近づく事はない。かかったとしても長期保存を考えて干し肉にしてしまう。だから新鮮な肉類が食卓に並ぶ事はこの家ではとても珍しい光景だった。

 レートは湯気を見つめ思わず生唾を飲み込んだ。

 その時。ポンっと何かの蓋が外れる音がした。乱雑な棚に置いてある“ジュルジュルX”と書かれた小瓶。その蓋が宙に浮いていた。


「あぁ…」


 ソファの母親が左指の小指をくるくる回すと、ジュルジュルXの中身だけ浮かび、台所の肉と黄金色のスープにぶちまけられた。

 瞬く間に黄金色であった事が疑わしくなる程の、真緑に染まった液体スープが完成する。


「あぁぁぁ…」


 少年は切ない顔をしながら、黄金色改め緑のねちゃっとした液体。肉汁滴る宝石改め緑に泡立っている肉らしき物体を渋々皿に盛った。


「母さんはね、この味が好きなの」


 うっとりと微笑む母親。


「…なんでいつも台無しにするんだよ!馬鹿舌!」


 レートは半泣きであった。それもそのはず。母親の味覚に着いていけず生を受けて十四年間、一度でも母の手料理を美味いと思った事は無かった。母親のアレンジは極まる所を知らない。


「身体に良いんだから。好き嫌いしちゃダメよ?」


 諦めたレートはテーブルに着き、不服そうに奇々怪界な料理を口に運ぶ。

 母親こと“グリムデリム・レスティン”。

 彼女は何も無い斜め上空に視線を置きながら席に着いた。きっと不安定なレートの未来詩より、文字がびっしりと詰まった高度な未来詩を読み解いているのであろう。

 彼女はレートの母親であり師である。外見は過去の魔術の後遺症で背丈の成長は止まっており、全体的に幼い。他人から見ればレートの妹と思われても仕方ないくらいの顔立ちをしている。しかし魔術はレートと違い一級品だ。秘術と言われる未来詩も彼女から紐帯ちゅうたい契約を経て授かった。紐帯契約とはいわゆる絆や、二人の関係性を繋ぐものといった事である。



「朝飛び出したのは未来詩のせいでしょ?どうだったの?」


 数秒押し黙った後、液体スープに浮かぶ緑の泡を割りレートは呟いた。


「心配するなって。まだ千頁以上はあるし気にしなくていいよ。それよりも魔術の事なんだけどさ、全然上達しないんだ。見た目は良いと思うんだけど威力がまるで無いんだよなぁ」


 レートは嘘をついた。この何年かレスティンに未来詩の事を聞かれると、咄嗟に話題を変える癖がついている。


「レートちゃんの未来詩が覗ければいいのに。なんとか開発出来ないかしらねぇ」


 逆方向の器官に溶けかけの猪肉が侵入しレートは盛大に咳き込む。


「魔圧の低さはね。レートちゃんの才能なのよ!言い換えれば個性よね。個性〜」


「五歳児に負ける個性なんかいらねーよ!」


「もう!レートにはレートの出来る事をしなさい。ね?それはそうとね、明日からお母さん暫く帰ってこないからね?」


「は?」


 レートの空いた口元から緑の液体がだらりと床に落ちた。

 焦がす音と共に絨毯に広がる液体。ミクロの世界では微生物が悲鳴をあげ消滅したはずだ。


「どういう事?」


「あのね。私の未来詩が変わりつつあるの」


 喉を不愉快に通る液状の食べ物を流し込み、怪訝けげんな顔をしながらレートは口を挟む。


「それでもいつもすぐ帰ってくるだろ?」


 竜の中でも恐れられている網目竜。通称アミドラの巣であったとしても彼女は困り顔で悠々と帰ってくる。

 遥遥はろばろの大魔術師グリムデリム・レスティン。彼女の二つ名は決して伊達ではない。


「うーん。食べたら地下に行きましょ。見せたいものがあるの」


 糸目がちなレスティンは頬に手を当ていつもの困り顔をした。


「書庫になにかあるの?」


 その時レスティンが思い出したように手を叩いた。


「それはそうとレートちゃん。三ヶ月前に十四歳になったでしょ?誕生日記念に旅に出ない?でも出たくないわよね。困ったわぁ」


「じゃあ三ヶ月前に言えよ!っていうか俺は八歳の頃から旅に出たいって言ってるよ!未来詩や魔術がしょぼいからって行かせないって言ったのは母さんだよ!」


「やっぱり行きたくないのねぇ。もう、大きくなっても甘えん坊なんだから。どうしましょう」


 頬に両手を添えくねくねと身体をよじる。


「話を聞けよおおおお!マァァイ!マザアアァ!」


 噛み合わない会話に少年は立ち上がり、頭を激しく掻きむしった。


「母さん!試験は!?ねぇ!?【その十】まであったよね!?まだ【その一】すら三年かけて到達出来てないけどさ!どうなったんだよ!それは!」


 未だに身体をくねらしていたレスティンの肘が液体スープに当たり服に跳ねる。


「あらどうしましょう。(こぼ)しちゃったわぁ。染みが付いちゃう」


「ジュルジュルエーーックスを零してんじゃねーよーっ!!」


 天然母に振り回される光景。この家では毎度の事である。

 いつもの騒がしい夕食後、レートはレスティンに促され共に地下の書物庫に向かう。床鳴りを立てる階段を降りていく最中、篭った唸り声が聞こえ始めてくる。やがてそれは警戒を強める獣が発する声と認識が取れた。


「なななんか聞こえるんですけど!」


「大丈夫よ?縛ってあるから」


 レスティンは軽く言ってのける。扉を開け書物庫に入るとその唸り声はより大きくなった。レスティンが辺りを見回し目配せすると壁にかけた蝋燭に火が灯る。

 レートは唸り声にビクつきながらも、散乱した本を見て明日の掃除場所はここか。と溜め息をついた。

 十余りの本棚を抜け奥に進む。すると山積みの紙、何かの液体やすり潰している途中の骨などが散乱している机がある。レスティンの小さな研究場所だ。壁際の薬品棚の前。山積みの本を円にかき分けた中心に小規模の陣が広がっていた。

 そこの上に一匹拘束された犬型の獣が居る。


銀底の犬(シルバレイ・バウズ)…」


 口、胴、手足。計六箇所が地面から生えた拘束用の白糸で何重にも押さえつけられて居る。動く事も鳴く事も出来ない様子だが、それでも尚こちらを睨みつけ野生の気迫で威嚇していた。

 小柄ながら狩猟に特化し先細った口。穴掘りを得意とするのか小さいながらも主張を忘れない耳。ここまでは普通の野犬に聞こえるが、手足には銀色に光る鱗が付いており川や湖の狩猟にも適応している。

 レートが目を凝らして観察すると耳の後ろから魔素を吸い込む仕草が見て取れる。魔術を使う獣。間違いなく魔獣の類だ。


「ぐっ。母さんこの魔獣…」


 突然レートの思考が一時弾け飛ぶ。この魔獣の瞳。白い強膜の部分が無く全体が黒く染まっている。それと目を合わせた途端吸い込まれそうになり、息苦しさが襲う。


「虚無に落ちかけているからあまり瞳を見ちゃダメよ。レートは大丈夫だと思うけどね」


「虚無…」


 レートは虚無に落ちた者を初めて目の当たりにした。その黒く無限の闇を抱える瞳を。


「どうやって裏山の結界内に入ってきたのかしらねぇ」


「母さんの結界は魔獣って言っても魔力が弱かったら入って来れるんだよね?」


「この子は弱く無いわ。むしろ強いの。私が三歳の時くらいの魔力程度はあるの」


「三歳の時の魔力なんて測れな……」


 いや、この母親の事だ。あり得るのか。と、断言しかけた言葉を途中でやめる。頰に手を当てながらレスティンは魔獣に近づく。警戒する魔獣は見えぬ牙から唸り声を大きく捻り出した。気にする事も無くそっとレスティンは何重にも縛り付けた白糸に陣を展開した。


「ーー施錠解除アンゼム


 役目を終えた白糸。するすると解けふわりと宙に溶けていく。


「ゴァアアアアアッ!!」


 小型犬からは想像もつかない鳴き声が本棚を揺らした。その大きく開けた口からは鋭利な牙が覗く。レートの視線が魔獣の耳の根元に向いた。辺りの魔素を急速に吸い込んでいる。


「母さんっ!」


 レートの叫び声と共に口の前に魔獣が出したと思われる魔術陣が展開。同時に喉の奥から無数の黒針の塊がうじゃうじゃと飛び出した。それは意思を持った蛇のように魔術陣を貫通しレスティンを襲う。咄嗟にレスティンの前に飛び出そうとするレートだが、細い左手がすでにレートの前で牽制を示していた。

 レスティンは顔色一つ変えず自分の顔の前に魔術陣を展開し、それを難なく弾いてみせた。


「危ないって!」


「優しい子ね」


「どこがだよ!?」


 レスティンは小指を立てると先程魔獣が発現させた陣を再現して見せた。


「この子の陣の式。この文字は名を持てない大陸(アウトサイド)由来の造形文字ね。この鹿と龍と杯を崩した文字。そこに皇女の式を刻んでいる。これは速度や威力を限りなく落としてるの。ここにも効果を打ち消そうとする白煙竜に似た紋章も入ってるわ」


「知らねーよ!それに貫通してたら意味無いだろ!」


 母親に敵意を向けられたレートは頭に血がのぼっている。彼女は母から師の顔になり弟子を冷静に宥めた。


「魔術師ならいつでも落ち着いて状況を判断しなきゃダメよ?つまりこれは自分の意図に反して身体から放たれたと言う事。そして私達に危害を加えまいと自分の魔術を発動させた。ね?」


 更にレスティンは歩み寄り手足と胴に巻き付いた白糸に命令を出す。


「ーー施錠解除アンゼム。安心して暴れなさい。あなたが傷付けれる程ね。私は弱くないの」


 その言葉が伝わったのか手足の拘束を外すと魔獣は力が抜けるように倒れ込んだ。舌の奥からは細かい金属音がまだ鳴っている。レスティンは魔獣の頭を膝に乗せ優しく撫でた。


「よしよし。苦しいでしょ。いっぱい吐いちゃいなさい。ペロちゃん」


「もう名前ついてたんだ…」


 口からだらりと垂れた舌。その奥から押し寄せる波のように黒針は吐き出され続ける。黒針はレスティンの体に触れると同時に何らかの作用で浄化されていく。身体に抗体魔術を発動させているのが明白だった。


「よく見ておきなさいレート。これが虚無に堕ちるという事。落ちきるには時間がかかるの。魔獣なら一〜ニ週間程度は自然体でも耐えれるわ。ペロちゃんの瞳は完全に黒く染まっていない。感染五日前後って所かしらね。でも人間が落ち始めたら早くて一日、遅くても三日前後で……もう戻れなくなる」


 完全に落ちたらどうなるの?と、レートは聞かなかった。少し虚無の事を調べれば誰だって辿り着く答えだ。生き物ではなく、落ちたモノとなる。見極め方は至極簡単。


 “自分の名を名乗れるか。名乗れないか”。


 このたった一言の質疑応答でモノ(・・)に区分される。討伐対象かどうか。殺されるか生かされるかのやり取りが決まってしまうのだ。この間まで親友だった人。恋人だった人。家族までもが。

 黒針が昇華され地下の空間が濁っていく。自然体の魔素が侵食され煌めきを失った為だ。飲み込む様に黒い魔素が地下の書物庫を蝕んでいく。


「母さん!魔素が!」


「これも虚無の連鎖のやっかないな所ね」


 そういうとレスティンは右腕辺りに設置された空間。異次元収納から魔製石をいくつか取り出し新たな陣の上に置いた。即時発動された魔製石からは眩しいくらいの魔素が精製されていく。


「私、大抵の毒素は浄化が出来るけど、これはダメなのよねぇ」


 新たに産み出される魔素が噴水の如く虚無の瘴気を包み込んでいく。浄化ではない。結合回数の少ない自然魔素による瘴気への攻撃だ。


「で、どうするのさ?この魔獣」


「普通は処分するわねぇ。ペロちゃんを助ける義理もないしー」


「名付けといてそれかいっ!」


 ド天然の母親の畜生発言にレートは顔を引きつらせた。時折この母親は無慈悲な発言を突拍子も無しに繰り出すことがある。


「でも…お礼参りしなくちゃね」


 糸目の隙間から鋭い眼光が覗く。


「お礼参り?まさか回復させてからペロちゃんをいたぶるなんてしないよな?」


「そんな事しませーん。もし処分するつもりならペロちゃんはここにいないわぁ。跡形もなくね。結界を掻い潜ったのは誰かの入れ知恵じゃないのかと思って」


「自慢の結界が突破されたのがそんなに悔しかったんだ」


 大魔術師レスティンの結界が破られた。稀な状況にレートは悪戯な顔を浮かべる。


「ちがいまーすっ!母親はね。子供を守る為なら一つや百つ怒るものなんでーすっ!」


 レスティンは腕を組み顔を膨らませた。


 次第に落ち着きを見せたペロの腹部にレスティンは魔術陣を広げる。そこに魔製石を三つ置き治癒魔術を仕掛けた。

 ペロはゆっくり目を瞑るとすぐに寝息を立て始めた。レスティンが小指を回すとその身体は浮き、そろりと近くのシーツの上に置かれた。そして青白い結界が周囲を囲う。


「この辺りで野生化した銀底犬がいない事もないのだけれど…ペロの年齢、毛並みから察するに…」


 そこでレスティンは何かの言葉を呑み込んだ。


「銀底犬は飼い慣らすと密偵に使いやすいもんな」


 調教は難しいが小さな身体で隙間を掻い潜り、地下の用水路から地上まで走破出来る。鱗のお陰で耐性も強く頭も良い。訓練次第ではスパイのプロフェッショナルになり得る。レスティンの未来詩にも思い当たる所があったのだろう。

 彼女は何かの真相を突き止め様としている。


「そういう訳だから…暫く帰って来れないの♪」


「で、ついでに今の内に旅に行っといで。って事なの?」


「さすがレートちゃん♪わかってるーっ」


「母さん!ついでは否定する所だよ!」







「という訳で、今から世紀の大魔術師グリムデリム・レスティンが旅に出る便利な魔術をレートに貼り付けます!はい、拍手ー。ぱちぱちぱち」


 レスティンが召喚したと思われる小さな喇叭らっぱ二つが、短い演奏ファンファーレを鳴らした。

 それをレートは冷ややかな眼差しで見つめていた。


「ほら拗ねてばっかりいたらダメよ?」


「旅に出たかった五年以上の悩みを一時間以下で克服しろって言うのか。天然の鬼か。あんたは」


 無視するようにレスティンはレートの手を掴み、優しく広げ掌をか細い指で触る。


「でさ。どんな魔術なの?…俺に使えるの?」


 不安そうに問う。この世界においては病気と置き換えてもいいほどの魔力(魔圧)の質の低さを彼は気にしていた。レスティンはレートの掌を合法的に触れて嬉しいのか、ニコニコしながら規則性のある魔術陣をレートの掌に浮かびあげた。


「レートの資質は関係ないの。高名な術者の許可があれば誰だって使える術よ。これは私が良く使ってる“異空間収納”って呼んでるもの。実際は転移魔術の応用なんだけどねぇ。魔製石や小物を入れるのにとーっても便利なんだから。場所は同じ右腕の上辺りで良いわね」


 一度唇に当てた小指。それをレートの掌に当てた。魔術式の中にグリムデリム・レスティンの名が刻まれた。


「ーーさぁこれを握りなさいレート。そして授かりなさいーー」


 少年は息を呑みながら掌に浮かび上がる魔術陣をゆっくりと握り締めた。


「つめたっ!」


  指先から凍る様な悪寒がレートの全身を包む。レスティンの呼び掛ける声を遠くに感じながら意識は体から遠く離れていく。魂が抜ける様に床に崩れた。

 その衝撃のせいなのか腹部が不思議と波紋の波を作った。

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