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旧:元勇者のフューチャーコール  作者: 戸津 秋太
二章 邂逅の二人
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七話

「ぐほっ!」


 車内に一人の少年の叫び声が響く。


「……痛いんだが」


 頭部の痛みを抑えるように右手で押さえながら、その痛みの元凶である、横に座っている妹をにらむ。


「寝てるからでしょ!」

「肘で軽くゆするとか、そういう起こし方があるだろ!」

「やったけど起きなかったんだよ!大体、こういう状況で寝れるのがすごいよ!」

「ふっふーん、だろ?」

「いや、ほめてないんだけど」


 あの後、あの場に数台の車が来て、戻ってきたお姫様のようなドレスを着ているエミリー=アーネルに乗るように促される。

 断っても路頭に迷うだけなので、促されるまま車に乗る。


 広い車内には、エミリーの横に長谷川という人がボディーガードのように座っており、向かいに俺と結衣が座っている。


 窓の外を見ると、東京以上の高層ビルが所狭しと立ち並んでいる。

 知らない街だな……と思いながら、再び睡魔が……。


「ぐほっ!」


 再び痛みが……。


「寝ないの!」

「寝れるときに寝る、それが俺のモットーだ!」


 くすくす……と、車内に上品な声が響く。


 見ると、エミリーが口元に手をあて、本当のお姫様のように微笑んでいる。


「エミリー様、どうかされましたか?」

「いえ、何でもないわ」

「……?そうですか……」


 首を傾げながらも、これ以上聞いても意味がないと感じたのか、こちらを見てくる。


「あのー、何か?」

「いえ……」

「……もしかして、俺のことが好きになったんですか?」

「違います」

「まったく、お兄ちゃんはそんなことばっかり……」

「夢くらいもっていいだろ!」

「それを口にするからダメなんだよ!」


 モテたい……そう思うのは、罪なのだろうか。

 いや、俺は一人の男としていつまでも思い続ける。



 モテたい……と。




「相変わらずね……」


 エミリーがぼそりと呟いた。

 だがその声は、誰にも聞こえなかった。





「なんだあの建物!」


 一時間近く車に乗りやっと止まった先には、天に届かんとするほどの高さのビルが建っていた。


「あれが、反逆者トレイター討伐部隊日本支部です」


 いつの間にか車から降りて俺の横に立っていた長谷川さんが、なぜか誇らしげにそういった。


 反逆者トレイターって何だろう……と思いながら、あとで教えてくれるだろうと思い、ビルの中に入る。


「こちらでお待ちください」


 クラスメート全員が入っても狭さを感じない、広々とした部屋に通される。

 長谷川さんとエミリーは部屋から出ていった。


 んっ?そういえばなんで俺はエミリー=アーネルのことをエミリーと呼んでいるのだろう。


 素朴な疑問を抱きながら、一人掛けのソファに座る。

 この部屋には一人掛けのソファが数十個置かれており、部屋の奥は床が一段高くなっていて、重厚なつくりの机といすが置かれている。


「お兄ちゃん、私たちどうなるんだろう」


 先ほどまでの態度と一転、弱々しい口調で言ってくる。

 見ると、遥と美咲も同様だった。


「さあな、俺も何がどうなってるのか把握できてないしな」

「そう……だよね」


 俯く結衣。半分、泣きそうな顔をしている。


「でもまあ、俺にはなんの力もないけどさ、お前らを守るくらいのことはするよ」


「「「――――っ!」」」


 顔を真っ赤にしてうつむく三人。


……ふっ、惚れたか。いや分かってますよ、そんなはずがないことは。

 でもやはり、夢くらいは持ってもいいと思うんだよ!


「随分かっこいいことを言われますね」

「うお!びっくりした!」


 いつの間にか俺の横に風音詩織がいた。


「私のことも守ってくれますか?」

「……いや、お前は必要ないだろ」

「女の子ですよ」

「女が弱いという考えは、今の男女平等を目指す社会の流れにおいて最早無意味。都合のいい時だけ私は女だから……という考えは俺に通用しない!」

「ケチですね」

「……でも、おまえが本当に危ないときは助けてやるよ」

「……ありがとうございます」



 ここで恋愛イベントが発生しないのが、モテるやつとモテないやつの差だよな……。


 まあ、助けるといってもそれほど大した力は俺にはないのだが。

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