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旧:元勇者のフューチャーコール  作者: 戸津 秋太
二章 邂逅の二人
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六話

「くっ……」


 自分の体が黒い光に分解され、そのまま魔方陣に吸い込まれるという気持ち悪い感覚にさらされ意識を失う……その直後、どこかに立っているような感覚がして目を開けると、そこには眩い光……それも白と黒の二種類がこの空間全体を漂っており、その眩しさに思わず目を細める。


 この場のほとんどが黒い光に覆われ、白い光はごくわずかな場所にしか漂っていない。


 結衣達はどうなった……と、辺りを見渡すが、光に邪魔をされてよく見えない。


 ふいに足元を見ると、白い光が集まって人のようなものを包んでいるのに気付く。

 それと似たようなものが、数十近く地面に転がっていた。


 それが、あの時教室にいたクラスメートたちだということに気付くのには、それほど時間はかからなかった。


「まさか、時間を越えるというこの世の摂理を無視した召喚をされていながら、意識を保てている者がいるとは……」

「誰だ!」


 後方から女の声がしたので見ると、やはり白い光に包まれた人影がそこにあった。


「そう警戒しないで下さい。……ああ君、エミリー=アーネル様に、《災害》によって召喚された人間が複数名いるとお伝えしてください」

「はっ!」


 近くにいた部下らしきものは、すぐさまどこかへと走り去る。

 その速さは、人のそれを超えていた。


「さて、私がだれかという質問ですが、私は反逆者トレイター討伐部隊日本支部ウォーリア隊隊長、Aランクソルジャー 長谷川凛です」

「トレイター?ソルジャー?なんだそれ?」

「今すぐに理解するのは無理な話です」


 はっきりと答えてくれない態度と、視界の悪さにイライラする。


「それで、あなたの自己紹介はまだですか?」

「ああ、悪い。俺は望月颯太、中3だ」

「中3……それならエミリー様と同い年……」

「……?ところで、この光、何とかならないのか?」

「光……ああ、魔力ですね。光を視界から外すことを意識すれば自然に消えます」

「ふーん」


 "魔力"という、俺の心をくすぐる言葉を聞きながら、とりあえず消すことに集中する。

 本当にそんな感覚的なもので消えるのか?と思いながら、そうするしかないので試してみる。


 光から意識をそらす……。


「おお!できた!!」

「な、もう出来たんですか!?」


 驚いたような顔をする目の前の女性。

 歳は25歳くらいか……。


「21です!」

「へ?」

「21歳です!」

「……声に出てました?」

「さあ……」


 何それ怖い。てか、ニアピンじゃん。

 どこに怒る要素が?





 光が消え、よく見えるようになったので目の前の女性を観察する。


 大人の女性らしいシュッとした顔つきに、ただ束ねられただけの長い黒髪。

 体は引き締まるところは引き締まり、でるところはでている。

 胸もそれなりにでかい。胸もそれなりにでかい!


 青い、軍服に近い服装をしており、腰には刀のような剣。

 例えるなら、レイピアを平べったくしたような……うん、そんな感じ。


 服や顔にはところどころ土がついており、かすかに汗もかいている。


 だが、そんなことより……。


 彼女から視線を外し周りを見ると、焼け焦げた大地に数十人の、彼女と同じ服装をした人たち、何かの戦いが終わったような空気が、そこを漂っていた。


「本当に、光を消せたんですか?」

「え、まあ。カメラみたいに焦点を後ろの景色に合わせる感じにすれば……」

「……意識を保てていたことといい、魔力のことといい……なかなか興味深い」




「んっ……」


 足元から声が聞こえる。

 結衣達が目を覚ましたのだ。


「まぶし!」

「なんだこれ!」

「みんな、どこだ!」


 クラスメートたちが口々に言う。

 それは、結衣たちも例外ではなかった。


「お兄ちゃん!」

「颯太さん、どこですか……」

「ケーキ……」


 俺を探すように言う。


 ところで遥さん、なぜ今ケーキという単語が口に出たのか、俺には謎です。


「みなさん、落ち着いてください」


……と、俺と同じ下りになる。





 三十分以上かかってやっと全員が光を消すことに成功する。


 みんな突然のことに混乱している。


「今回は、こんなに召喚されたの?」

「エミリー様!その通りです」


 先ほどの女性がかしこまった口調で話しているのを聞き、そちらを見る。


 そこには、一国のお姫様のようなドレスに身を包んだ、金髪碧眼の少女がいた。


「……あれ?どこかで会ったか?」


 初対面のはずなのに、前にあったことがあるような感覚を覚える。

 その声が聞こえたのか、長谷川と名乗る女性と、その少女がこちらを見る。




「――――っ!ああ……」


 俺を見るや否や、口元を覆い、目に涙をためる少女。

 その直後、後ろへと走っていき、それを女性が追った。


「あれ?俺、なにかしたか……?」


 それにしても、あのドレスに、あの少女、どこかで会ったことが有ったような無かったような……。

 それにこの状況、どこかで……。




 ほかのクラスメートたちは、まだ現状を把握しきれず混乱してる中、彼だけはそんなことを考えていた。



 異世界の姫と世界を救った元勇者は、世界どころか時間すら越えて、二百年ぶりに邂逅した。

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