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王都への道 2

(3)


 やることを決めたら冷静になれた。

 わずか1・2日で、人が多く住む平野部分に入り、精神的におかしくなった。たぶんそういうことなのだろう。普通の人が樹海に入ってしまったならば、恐怖や緊張感から落ち着いたり出来ないと思う。俺はその逆なのだ、人が余りに多く住むこの平野が極度の緊張感を生むのだ。


 証拠に、MPが少しずつ魔法使用以外に減ってきている。


 すれ違う人間は敵では無いが、【鑑定ジャッジメント】しまくり、魔物狩りをすれば、大丈夫なはずだ。そうすれば、正気が保てる。


 魔物狩りは夜にやればいいだろう。

 

 すれちがう人を片っ端から【鑑定ジャッジメント】し、200人以上は見たであろうか、疲れたので街道脇にある木の根っ子に座った。

 MPは《お財布結晶》から吸収しつつやっているので問題ないが、耐久値が少しずつ減って、半分ほどになってきた。これ以上やると夜の狩に影響が出そうだ。


 因みに、MPはMAXから半分ぐらいまでは何ら問題なく、半分から3分の1ぐらいが倦怠感、3分1から4分の1でかなり精神的にきつくなり、5分の1を切ると虚脱感に襲われ何もしたくなくなる。

 10分の1以下の状態になれば、気を失う。MP切れというやつだ。


 魔法はマナを使うが、精神力、集中力も密接に関係しているわけだ。

 MPのMとはゲームや小説の設定通り、MAGIC,MANA,MIND,MENTAL のMと考えてもらえれば分かりやすいだろう。

 だから、この世界では「ラノベ」主人公のようなMP爆裂鬼保有は無いと思う。

 MPがものすごく高い人は使えるマナ(魔力)も多いが、心根や精神力も高く下賤な欲望に振り回されないはずなので、偉大な宗教家か、荒ぶらない優しい救世主になっているはずだ。


「下賤な欲望に振り回されず、暴力は絶対振るわない『ラノベ』主人公」そんな面白くなさそうな話は読みたくはないし、そんな奴は少なくともこの世界にいない。


 どうでもいいことを考えてしまった。



 MPのMAX78なので、MP50弱を「使用しては吸収」を8回した。

 現在の俺。 


 【リベリオ・カルレッティ】

 ヒューマン ♂ 14才

 状態:健康  総合:S

 HP:55/57  MP:32/78

 筋力:09/09

 敏捷:13/13 

 耐久:05/10

 魅力:04/05


 スキル表示はしていないが、耐久が10⇒05になったのが問題と言っているのだ。しかし、その前にステータス表示がなんじゃらほいと思われるだろう。


 俺が勝手に作ったのよ。

 基準にしたのはこの人。


 【ブルーノ・ラウリーニ】

 ヒューマン ♂ 35才

 状態:健康  総合:B

 HP:100   MP:52

 筋力:10

 敏捷:10     

 耐久:10

 魅力:10


 MPの基準は俺のはじめての魔法での使用量だけど、それ以外は子どもの頃のあこがれ、目標の人 村長ブルーノさんだ。生まれた村の村長で、元冒険者のちょい悪イケメンおやじ。

 冒険者として中級の上あるいは上級の下あたりのかなりの使い手だ。この人を目標として頑張ってきた。100とか、10という切りのいい数字なのはもちろん基準だからで、それを超えればそこそこ上級であるとその後も思っている。


 魔法を身につけるには、イメージが大事だ。【鑑定ジャッジメント】の魔法を身に付けようとしたとき、イメージするための基準が必要で身近のすごい人を例えにしたのだ。

 一般的には数学や統計学の発達していないこちらの世界では、数値化して【鑑定ジャッジメント】利用している人は少数だ。一部の商人は数値化しているらしいけど。


 ステータスの説明になっていないが、RPGを参考に勝手に作ったものなので、後はゲームなどと同じであると思ってくれればいい。


 耐久値が下がったことについてだったはずなのに、ずいぶん遠回りな述懐になってしまった。まるで、文章力が全然無いのに「ラノベ」を書きたい厨二病作者みたいだな……


 耐久値とは状態異常(毒、病気、疲労、空腹、呪い、出血 等々)に対する抵抗値みたいなもので、これが低いと同じ攻撃からのダメージでもHPが下がりやすい。

 つまり、耐久が10⇒05になったというのは、強制的にMPを回復しているが、かなりの疲労が溜まっているということだ。


 座り込んでいる木を下から見上げる。

 いけそうと踏んだ。


 街道からして木の陰に回り、気配を消しつつ木に登る。街道を通行している人には気付かれてはいなさそうだ。樹海の野生動物からも気配がだいぶ殺せる俺にとって、人間にばれないように行動するのはそう難しいことでない。

 人がチンパンジーから進化した動物であることを確認したければ、木に登ることをお薦めする。自分の視野が極度に広がり、地上生物(人間も含む)の視野がいかに木の上には向いていないかを知れるだろう。


 いいね!

 木の上は!


 まだ昼の3時だが、暗くなるまで昼寝でもしよう。


 日も暮れ、めっきり街道に人の往来がなくなった。

 こちらの世界では、夜に出歩く人は ほぼいない。前世の現代日本の常識から考えると、びっくりするほどいない。魔物が活性化する危険と、電灯やガス灯なども無いからだ。


 耐久値は8/10にしか戻っていないが充分だろう。

 MPをお財布結晶から不足分を吸収すると、残りはMP217しかない。

 1日で400Pも使っていた計算になる。

 単純にギルドへの売値相場でいくと8万リブラざっと日本円に換算して160万円。1日に使う量としてはやり過ぎだ。


 狩りをして回収しないといいけない。

魔力探査マナ・サーチ】を1km範囲に広げる。人のマナを感じるが、昼間のように動き回らないので、「人間」と認識できるため、脅威とは感じなくて済む。


 ビッグ・ラビット2匹が街道の挟んだ向こう、川辺の当たりにいるのと、逆の森の方にレッド・ハウンドが1匹いる。やはり、平野なので魔物の影が薄い。

 荷物袋を背負い、【可視化画面ビジュアライズモニター】もかけながら走る。

 半月の明るさだけでも物は見えるが、【可視化画面ビジュアライズモニター】と【魔力探査マナ・サーチ】のコンボで、米軍兵士のパッシブ赤外線モニターのように夜でも視野を確保できる。


 100mの距離まで近づき、荷物袋を地面に置く。ビッグ・ラビット2匹はまだこちらの気配は感じていない。気配を消して、ゆっくりと近づいていく。

 あと10mまでは忍び寄れたが、さすがにバレた。

 一気に間をつめる。

 一閃、横薙ぎに1匹目を片手で払い、手応えを感じつつ視線はもう1匹の動きを追う。

 3mの間合いを、払った剣の動きを止めることなく動かし、斜め上から逃げる背中を追いつつ、袈裟懸けに切る。あまりの手応えの無さに、却って地面に剣先が当たりそうになるのを止める方が大変だ。


 近頃効率から考えて、小物は見逃して殺さないようにしていたので、ビッグ・ラビットのあまりの手応えの無さに驚いた。獲物によっては切りつける力を考えないといけない。


 作業として、淡々と魔力結晶を取り出す。

 それでも、2匹で10分。

 狩りは、狩るより後始末のほうが時間がかかる。


 血塗られたままの結晶をポーチに入れ、荷物袋のところに戻る。

 残念ながら、森の方に感じたレッド・ハウンドはもういない。


 仕方が無いので、夜の街道を王都に向かい歩き始めた。




(4)


 想像以上にいない。

 人が住んでいるところなので、魔物が少ないのだ。

 索敵の範囲を1kmにして、1時間歩いている。幅2km長さ5kmの捜索に引っかからないのだ。これではらちが明かない。


 索敵範囲の中に、実は豊富に魔物がいるところが身近にある。

 それは、河である。

 朝に見たモビー・キャットフィッシュの化け物でなくても、その半分ほどの大きさのやつならそれなりにはいる感じだ。しかし、なにぶん敵は水の中なので手の出しようが無い。

 泳ぎは得意だが、水中戦闘などはしたことがない。やれそうな気もするが、こんな夜中にするものでもなさそうだ。


 諦めて街道からかなりそれることになるが、森に向かう。

 平野といっても川沿いの3km程は平らだが、あとは低い丘陵地帯がうねとなって麦畑が広がる。その中に林というよりは森といってもいいほどの場所もある。

 小川や崖、斜面のきつさ等 地形の関係から、開墾するより木々の需要を満たす里山ならぬ里森みたいなものがぽつぽつ存在していたりする。

 残念ながらそれらの場所は、街道から4km以上離れてはいる。


 1時間近くの時間をかけて森にまで来た。

 さっそくレッド・ハウンドの群れのお出迎えである。

 数、およそ25。元の世界で《サルーキ》といわれる犬種に良く似た狩猟用の犬が、野生化し魔物になったような奴だ。

 夜なので色までは識別できないが、可愛げない毒々しい赤茶色の化け物である。


 森の横の原野で囲まれた。

 特に首だが、腹なども噛み付かれるとかなりの致命傷を負う。腕や足でも、一度噛み付くとその牙を離してくれないので、重しになってしまいこちらの攻撃力が著しく落ちる。オークほどの筋力でも振りほどけないことを良く見てきた。

 先制を許してはいけないのだ。


 群れで攻撃してくる動物や魔物には、狼など特にそうだが、パックリーダーが必ず居る。一番強いが、ここというべきところまで動かずに様子を見てくる。

 サブのリーダー格のチームが仕掛けてくることが多く、それにも一番に仕掛けてくる前衛役がいて(笑えることに、人間と同じ)、直線的な気合だけの脳筋バカが突っ込んでくる。

 やる順序は、バカを避けてサブリーダー次にバカ、そしてパックリーダーが戦略的に理想だ。


 あと、完全包囲を避けるため、木や森を背にしておき、一箇所には留まるのも良くない。木の高さを使った攻撃、防御も有効だ。最悪木に登って逃げることも大事だ。



 ………………

 にらみ合い。


 戦いは拍子だ。あいての満を持さずに、こちらから 序・破・急 だ。

 サブリーダーに寄る。ガード役が入ってくるが、剣は使わずに蹴る。あくまでもサブを切る。さすがに素早いが逃さない。

 後ろの気配があるので、見ていないがサイドステップを踏みつつ剣を払う。

 敵が少ないときは刺すのもいいのだが、刺すと敵の体から剣を抜く動作に隙が出来てしまう。見ていないなぎ払いに、1匹の足が飛ぶ。


 そのまま、森の木に向かう。

 10m超える移動ではやはりレッド・ハウンドに分があるので、木につくと、敵の意表をついて木を蹴って逆に向かいまたもバックハンドの薙ぎ払いだ。

 さすがに牽制のみとなる。


 木を背に間を取りつつ、敵の包囲をわざと待つ。


 潮目が変わる寸前に来ている。

 敵の包囲が及び腰になっているのだ。


 勇気ある戦意をむき出しの前衛3匹と、パックリーダーだけが鍵となってきた。運悪くパックリーダーと俺とを結ぶ直線状にいる前衛に向かう。


 殺すような一撃は要らない。いや、むしろこちらの隙になる。

 胴を浅く切っただけだが、無視してリーダーに向かう。


 リーダーも向かってくる。褒めてやりたい。

 それだけの機を見る目は魔物には勿体無いぐらいだ。

 腐った貴族に爪の垢を煎じて飲ませたい。


 でも、まさかに俺が剣を突き立てたまましゃがむと思っていなかったようだね。剣をよけるのに一杯になっているし、そのようにしか避けれないから、着地点が決まってしまう。


 まだ空であるところに俺の剣が向かうが、残念なことにそこに物理法則に従いパックリーダーの足が落ちてくる。

 前足2本とも切断。逃げることもできない。


 余韻は敵に与えても、自分は浸らない。

 右の敵が来るのを視界に入れつつ、左の1匹を切る。続いて右の1匹に左手で掌底を打ち、わざと自分の体を倒すことで剣を引きざまに柄で頭部を叩く。

 ゴメンね。人間も君達と同じく素手も使うのよ。


 一呼吸入れれた。何故なら潮目が完全に変わりきっていたから。

 追われる者から追う者へと……


 レッド・ハウンドの群れに恐慌が伝播している。

 逃げる勇気すら持てないのもいる。君達の得意な狩りだよ。

 狩るのは俺だけど。


 4匹を切ったところで、逃げられる敵は全部逃げた。 

 残されたリーダーはじめ、重症で逃げれないもの、瀕死のものになるべく早く止めを刺して回った。

 全部で11匹。そんなものだろう。 

 

 倒すのにかかった時間は、20分。魔力結晶を取り出す作業が50分。

 やっぱり、割が合わない。


 ビッグ・ラビットの2個とレッド・ハウンドの11個、まとめて【鑑定ジャッジメント】かけてみる。どれも15MPから30MPの似たり寄ったりの小粒だ。

 すべて《お財布結晶》にまとめた。

 結晶はMP461になった。 400P以上も使い、240Pしか回収していない。今日は使いすぎだ、明日からは一日200Pと制限しよう。


 森の小川とも言えないせせらぎで、汚れと血を流し、着替える。

 少し森に分け入ると、すぐにちょうど良い樹かあったので、登って樹の上で少し寝た。



 

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