三年間の、終わりの日
私は、待たされるのが好きだ。
12月25日の午後11時54分。彼氏の帰宅を待っている私。
1年前から、私は彼氏に待たされるのが好きだと言ってきた。待ち時間も楽しいのだ、と。
名前を大西裕という。付き合って3年目の彼氏。裕は29歳でそこそこの企業に勤めるサラリーマンだ。
私も27歳と歳は近く、もう大人。
付き合い始めて1年になるし、最初の頃と違ってやっぱり1人の時間だって欲しい。そう2年前に裕が言った。
当時の私はそうなのかと納得した。裕がそう思うなら仕方ない。
以前は1日3通ほどのペースで送っていたメールを週1に変更し、さみしいとすぐかけていた電話は何があっても月1と決めた。
そのかいあってか、裕が1人の時間が欲しいということはなくなった。私達は交際を続けている。緩やかに何かが下降していたような、そんな気はしていたけど。
「クリスマスはホテルの予約をとったんだ。待っていてくれないか」
そんなメールが届いたのは1週間前。
初めてといってもいいくらい裕からメールは来たことがなかった。これが最初で最後のメールか、と私は直感し、わかった待ってるとゆうに30分ほど時間をあけて返信した。
すぐかえってきたレスポンスには、必ずクリスマスに帰るから。そう書いてあった。
携帯を開けると、11時56分。
ちょうど2時間前のことだ。裕の携帯から着信があった。
「ごめん怜、少し遅れそうだ。」後ろから「沢木さぁん」と女の子の声。
電話越しだと誰の声かわからない、なんていうけど、好きな人の声すら他の人の声に聞こえてしまうものなの?
返事はしたくなかった。すぐに電話を切って電源を落とす。オレンジ色のフォルムに目を少し向けて、ソファーに投げた。
2時間前のことだ。
もう、かえってしまおうか。
待つことが好きなわけないじゃないか。
どうして恋人の私が裕に距離を感じなければならないの。
どうして裕は、あの知らない女の人と私に会う時間を延ばしてまで。
やりきれない思いが目から溢れた。
買ってきたケーキをゴミ箱に放る。他人に迷惑がかかるとか、そんなのどうだってよかった。
コートとカバンを引っ掴み、部屋の照明を消す。もう帰ってしまおう。きっと彼は、今日ここには来ない。私が待つ意味はない。ケーキなんか無駄だった。慣れないふわふわした短いスカートも、ヒールのある靴も、馬鹿らしくなった。
オートロックで助かったと私は笑って、扉を閉めた。
(評価、お気に入りをしてくださった方、ここでごめんなさい!ありがとうございました!なろう様の使い方も、お話の書き方も慣れておりません。未熟者ですがどうかこれからもよろしくお願いいたします!)