…話は、ちゃんと聞きましょう。
……スイマセンでしたァァァ!!
全力で土下座orz
次……!! 次こそは……!!
「――と、いうことは……」
ギギギという音がして、首がゆっくりと隣に立つ柳先生を捉えました。
相変わらずの、美形……だが、どこか不機嫌な顔です。
「……コレマデノ、ブレイナオコナイヲオユルシクダサイマセ……」
自分でも、口が戦慄いているのが分かりました。
『自分は、なんて失礼なことを……』そんなことを考えてビクビクしているとポンと肩に手を置かれ、すぐ近くに満面の笑みを浮かべる柳先生の顔がありました。
――だけど……私には、分かります。
これは笑み、なんてもんじゃないと……そんな優しいものでは。
――けれども祈りました。
これが、天使の笑みであると。
……私の杞憂であると。
――……しかし。
現実は、そう上手くはいかないもので。
「……どーしよっかなー」
美しいラインを描く顎に手をやり、わざとらしく「う~ん」と唸るこの悪魔いや……魔王様。
(……っ! やっぱりっ!!)
涙目でブラック200%のオーラを身に纏う冷徹の魔王様(柳先生)に挑む勇者(私)Level:15 装備:旅人の服、木の棒……。
――ダメ。
……勝ち目無いです。
* * *
怒ったり、焦ったりの百面相をしている壬紀をにっこりと黒い笑顔で見つめる孫の姿を見て、過去の荒んだ姿、凍りついた表情を思い出し瞠目した。自分の知る孫の姿に今見ている姿があまりにも違いすぎたのだ。
――……こんな、こんな顔はしなかった。
こんな風に……こんな笑いを、愛おしそうな視線を誰かに向けることなど。もう、無い筈だった。
――私の知る孫は。
ハッとして、その視線の先にいるまだ幼さの残る少女を見て、『目の前にいる少女がその心を変えてくれたのか』と胸の内で感謝を述べた。
――……ありがとう。本当に――感謝する。
* * *
「――さて、では本題に戻ろうか。」
場を変え、ソファーを勧められました。恐る恐る腰を落とします。……別にイタズラが仕掛けてあるかとは思ってないけど、なんて言うか……凄く高そうで腰が引けちゃうのです。
そっ。私の身体がふわりと柔らかい生地で包まれ、沈んみました。それは『心地よい』なんてもんじゃなく。もう、言葉に表せないくらい! ふかふかだ! やっぱり高いのは違いますね!!
思わず頬が緩んでしまいます。そんな私を見て、「……クス」と笑いが漏れました。
見上げれば、穏やかな微笑みで私を見る院長の姿。一瞬で顔が羞恥に染まるのを感じました。
「良かったら……そのソファーと同じものを君のお宅に運ばせようか?」
「……え? えええ、いいんですか!? いや、それは嬉しいですけど……」
「いいんじゃない? くれるって言ってるんだからさ、貰っておけば」
必死に断ろうとする私の横でくつろいでいた柳先生がさらりと言う。……自分の家族だからってはっきり言いすぎじゃないですか!?
「私にこれを貰うほどの働きをしたわけではないので、貰えません。」はっきりきっぱり言えたら格好良かったのかもしれませんが、私はこのソファーを諦めるので精一杯で、自分の目が泳ぎ、それを見て二人が微笑みを浮かべていたことなど、全く知らなかった。
「でも、こんな高そうなもの……」
尚も断ろうとする私に追い打ちをかける様に院長が口を開く。
「――では、こういうのはどうだろう。話を聞いてくれたら、そのお礼にソファーを差し上げよう。これなら、正当報酬だろう?」
穏やかに笑ったはずのその顔を見て、誰かと繋がるものを感じた。……マズい、私の脳内が警報を鳴らしている。
その笑顔(黒いもの)を極力見ないようにして小さな呟きを紡ぐ。
「わ、私に拒否権等は……」
「「無いよ」」(両者、黒い笑み)
なんという早業!! DNAの神秘!!
「(変なところソックリ……)……はぁ。分かりました。一応……聞きます」
「「壬紀(君)!!」」
「あ~もう! 本当に、聞くだけなんですからねっ! ひいてはソファーの為っ!!」
私はやけになって叫んだ。「ソファー、ソファー……」と呪文を唱えればもう怖くない! どんな患者でも――
『かかってきなさい』とは言えませんでした。
院長が話をしている時横から何故か得意顔で柳先生が私に抱きついてきましたが、それを咎めることも私は出来ませんでした。
院長が、これから話す――その内容があまりにも私の注意を反らせるものだったのです。
次回予告:
この次、本当に第二の主人公の登場です。
11話目にしての登場って……とお思いの皆さん!
……実は私も思っています。
こんな作者ですいません。
これからも生暖かい目で見守ってくだされば、幸いです。
拙者共々どうぞ、宜しくお願いします。




