もう一つの世界
男は人々に避けられ、途方に暮れていた。町のはずれの林の中に小さな小屋があった。せめて風よけになるところでもとその小屋に入る。だが、そこにあったのは、布団や毛布などの幾らかの家具。男は良心からその場を離れようとした。だが、すぐにはできなかった。その貴族が着るような可笑しな服の端が引っ張られるのだ。
「・・・ついに家具からも嫌われたか。」
男は絶望感に浸った。
ふいに疲れが襲ってきた。目の前が暗くなる。そして男は眠った。だが・・・
「おい、起きろ!」
途端に起こされた。顔は暗くてよく見えない。だが確かに殺気のようなものが感じられる。「おい、俺の聖地を荒らす奴!そこから離れろ!」
聖地とは一体何の事か。首を傾げると。
「その布団から離れろと言っているんだ。」
まともに理解できる回答が来た。まぁ理解すると、不審者だよな、俺。男の声がまたもや
「ここは俺が最初に見つけた場所だ。出て行くがよい。」
オマイは子供かっ!心の中で突っ込む。さらに
「俺の領域<テリトリー>に入りし者即刻出て行くがよい。」
また訳の分からないことを言い出した。
「おい、お前は何なんだ?」
これだけは何故か男には解らなかった。
「やはり、予言は当たったと言うのか・・・」
「は?予言?」
咄嗟にそんな反応をしてしまった。
「あっ・・・」
だが声の主はそれを待っていたかの如く、
「そう。全て予言なのだ!貴様が来ることだってわかっておったぞ!」
どうやら予言予言と言っているならそれでいい。だが続けて、
「貴様。光は見たか?」
は?
何の事だ?
「光を見たはずだ。このせかいに来る前に。」
確かに光の塊は知っている。だがこの世界とは一体・・・
「この世界とはどういう事だ?」
男は自分の分からない事だったので気になった。だが声の主は答えない。それどころか何やらごそごそし始めた。
「こいつを・・・」
と言って赤い紙を、それも古く黄ばみがかった紙を取り出して、
「これを渡すことが俺の使命。」
それだけ言って紙が渡された。直後にその者は姿をくらました。最初から居なかったかの如く・・・。
だが、それを知る希望がある。奴が渡した赤い紙。そこには書いてあった。ここが本当の世界で、己のいた世界がこちらにいる人間の創作物だったと・・・。男は絶望した・・・。今まで生きてきた人生が人間の創作物であったことに。そして世界が破壊される間ずっと絶望していた男な追い討ちをかけられた為に、三日三晩泣きつづけた。
泣き続けても仲間が戻る訳はないが、何とかしてその方法を探さねばと、男は立ち上がった。