7 マリア、スキルを使う
7 マリア、スキルを使う
エルクはおばさんに尋ねた。
「なんでジョンが……」
「ジョンが老馬をユニコーンだと言って、馬商人に売った。そして馬商人を騙くらかして大金をせしめたんだと。それがすぐにバレちまってなぁ。そんで恨み買って、今よ」
エルクは記憶と紐付けて理解した。エルクのスキルの効果が切れて、角が消え、ただの老馬であることがバレたのだ。そしてジョンたちは殺されたのだそうだ。
自業自得ではあった。エルクは当然の報いだとは思ったが、老馬が気になった。怒りの余り、馬商人が酷い目に合わせている可能性があったからだ。だが、馬のことだけ聞くと薄情な奴だと思われる。このおばさんの前で手を打ったら大変なことになる。それは避けたかった。
「エルク、あんたのせいよ!」
マリアの声が響いた。
そばには、あの時のおじさんと、若い男が三人いた。
「あんたがスキルで馬商人を騙そうなんて言わなければ」
マリアは聞き捨てならないことを言い出した。思わずマリアを睨みつけると、若い男たちの陰に隠れた。
「てめえ!」
陥れようとしてくることに対する怒りは当然の反応だが、周りはそうは取らなかったようだ。土壇場では被害者面した女の方が信用度が上がるのだ。たって、若い人たちがエルクに対して威圧的な態度を取る。ふと彼らの服を見ると、かなり乱れている。陰に隠れたマリアも同様であった。そういうことかと思った。
「エルクは極悪人! エルクは極悪人!」
おばさんが叫ぶ。そのヒステリックさが、さらに場を緊迫させていく。
「てめえ、俺を騙しやがって、覚悟はできてるんだろうな」
馬商人が言った。
「俺がやったという証拠はどこにある」
犯人しか言わないセリフだが、エルクは気にしない。
「いたいけな女性の証言だぞ」
「そいつはユニコーンに近づけない人間だ。なんでかは知ってるだろ?」
若い男たちの勢いが削がれた。やはりなとエルクは思った。
「そいつは、なぜか俺を嫌ってる。おおかた俺に罪を擦り付けたいんだろう」
若い男たちは、マリアのほうを見る。
「何よ。あいつが馬に角を生やしたのよ。自分のスキルで。あなたたちを騙すために」
「おいガキ、本当か?」
馬商人が言った。
「そんなことより、あの馬は無事なのか?」
エルクはやっと聞きたかったことを聞いた。
馬商人は望んだ反応ではないことに不満そうにしつつ、答える。
「馬には手を出さん。それが俺の馬商人としての矜持だ」
「馬に会わせてくれ。俺はあの馬に会いたい」
馬商人は腕組みをした。若い男たちも黙った。だがマリアは黙らなかった。
「何言いくるめられてんの! エルクは敵なのよ。私の体の分は働きなさい! エルクを殺すの!」
馬商人以外の若い男たちが動き出した。
マリアはさらに声を張り上げる。
「足りないわ。もっと、数を増やさないと。みんなもエルクを殺して!」
「おお」
「任せとけ」
「マリアちゃん」
「エルクなんか殺してしまえ」
若い男たちだけでなく、広場にいた村の男たちもエルクに向かってくる。
おばさんがその異様な空気の中、叫んだ。
「マリアのスキルは、肉体関係を持った人間を自由に操るスキルだ!」
おばさんが叫んだ。操られている男たち全員がそういうことだとエルクは理解した。




