4 スキル使える
4 スキル使える
本当に夜しか眠れなかった。日の出前に目覚め、井戸へ行き、顔を洗う。
同世代の農家、ジョンも来ていた。こいつのスキルは一時的に力が増す、瞬間マッチョだ。
「よう、馬角エルク」
なんか略されていた。
「よう」
エルクはムッとした。
「怒んな怒んな。馬触らせてやるから」
「マジか? いやあ持つべきものは優しい同世代だな」
エルクは、願ってもないチャンスに胸を踊らせた。いよいよスキルを使えるのだ。
「友達だろ」
訂正をエルクは笑顔でやり過ごした。この村に友達なんかいない。エルクは本気でそう思っていた。
ジョンが触らせてくれたのはかなり老いた農耕馬だ。もうすぐ役目を終え、ジョンの家のやつらの胃袋に収まる。その前に死なない程度に好きにしていいということだろう。もしくは死なせた責任を押し付けて弁償と言ってくるか。どっちにしても友達ではない。
「やるか」
老いた馬に触れた。嫌がられてはいない。
まず額のあたりに角を生やしてみようと念じる。不思議なもので、所作を完全に理解して発動することができた。そこら辺は神の加護なんだろうか。
馬の眉間から小さな角が生えた。それでも重いようで、頭が下がって、もがく仕草をした。
「やった!」
エルクのスキル。エルクだけのスキル。今それが発現したのだ。
「おー、すごいな」
ジョンは近寄り、角に触ろうとする。
「ふん!」
エルクは触られる前に馬の角を引っ込めた。難なく成功し、ただの農耕馬に戻った。
「なんだよ。触らせろよ」
「馬はお前んちのだが、角は俺んだ」
「貸さないぞ」
「チッ」
舌打ちして、また角を出した。今度は馬に負担をかけないように先ほどより小さくした。馬は変化に戸惑いながらも顔を上げる。
「ドードー」
ジョンは馬を手懐けながら、角に触った。
「硬い。刺さったら危なそうだ」
エルクは触ったのを確認して角を引っ込めた。
「なあ、どれくらい出しておけるものなんだ?」
ジョンは異常なほど関心を示した。
「やってみないとわからないが、一日くらいだろ」
なんとなくわかった。神がスキルに対しての知識を授けてくれているのだろうと結論を出し、深くは考えなかった。
「一日か。馬商人呼んでからすぐにやるしかないか」
「は?」
「いや、こっちのこと」
「なあ、しばらく試していいか?」
「馬に負担かけない程度ならいいぞ」
エルクは額以外から角を出してみることにチャレンジした。




