3 相談する
3 相談する
「エルク、これからどうするか話し合おう」
父親が食事時に提案してきた。確かに一人ではどうにもできない事だった。
「馬がいないとどうにもならない。なんだよ、馬に角を生やすスキルって」
親の前だと本音が出てしまう。
「うちには馬はいないから、買うしかないな」
「そんなお金ないわよ」
母親も話に加わる。
「スキルのために買うわけにはいかない。とりあえず、農家手伝って馬触らせてもらえ」
「素人に触らせてくれるかな?」
「すぐには無理だな。多分」
「じゃあ、どうすんだよ」
「稼いで、買え。シンプルだ」
「やっぱ、それか。将来不安すぎて、夜しか寝れない」
「まあ大変。日の出には起きてしまうのね」
ボケに対し、ボケ(天然)で来られると対処できない。
「ま、まぁ、働いていれば馬に触るチャンスもあるだろう。『栄光のためにはまず一歩踏み出さなければならない』だ」
「一歩踏み出したら、二歩三歩と歩けるのよ。エルクが初めて歩いた時を思い出すわ」
ボケ(天然)は逃がしてくれない。
だからエルクは言う。
「わかった。ありがとう母さん」
「よかったわ。エルクが部屋に閉じこもってしまったから、母さん心配したのよ」
ボケ(天然)だが愛情はある。感謝しつつ鬱陶しがる。
「大丈夫。ちょっと混乱しただけだ。明日からやる」
「父さんも母さんも応援してるぞ」
そこまで言って、父は笑った。
「しかし、馬に角を生やすスキルってなんなんだ。神様は悪ふざけが過ぎるぞ」
「笑っちゃ悪いわ。事実でも」
ひとしきり笑われて、エルクは心を閉ざした。こんな家出ていってやる! と思いながら。




