17 やらされる
17 やらされる
おばさんはエルクの家へ来るなり、マリアベルを上から下へ値踏みするように見た。
「盗賊にしてはべっぴんさんだね」
横柄な物言いにマリアベルは驚いて反論できない。
「誰?」
そう口から絞り出すのがやっとのようだ。
「村の長老のところにいる噂好きのおばさんだ」
ドヤ顔でエルクは言った。プレッシャーから解放されてそんな顔をしたのも仕方がない。だがおばさんは予想外の質問を投げかけてきた。
「で、盗賊はやっつけてきたのかい?」
「え?」
驚いていると怒られた。
「え? じゃないよ。盗賊は全滅させて、その女を戦利品として、手に入れたのかって聞いてんだよ」
「いや、帰るとこないみたいだったから、連れてきただけで……」
おばさんは盛大にため息をついた。
「村が危険になるって考えなかったのかい。このバカちんが!」
味方になってくれるどころかエルクが責められた。
「確かにそうね。二人でちゃっちゃとやっつけてきなさい」
母親がとんでもないことを言い出した。
「イヤだよ」
反射的に拒否した。すると母親はこう言った。
「倒してくるまで、晩ご飯抜きよ」
非情な宣告である。実家暮らしには効果ばつぐんだ。
「エルク」
マリアベルは不安そうにエルクの服の裾を引っ張ってくる。安請け合いをするべきではないが、完全拒否もできない。
「マ、お前はどうしたい? 俺と一緒にいるために盗賊を倒すか?」
エルクは決断をマリアベルに委ねた。
「私は、私のスキルを否定しなかったエルクと一緒にいたい。そのためだったらなんでもする」
自分が好かれていたことに、そうだったのかと納得した。そしてエルクの心が震えた。
「わかった。行ってくる」
エルクが言うと、みんなの表情が明るくなった。エルクは恥ずかしくなった。
「勘違いすんなよ。晩ご飯食えなくなるのが困るだけだ」
ツンデレっぽい言い回しだが、理由がダサかった。思い切り母親に笑われた。
「あらあら、エルクったら照れちゃって」
「マリアベル、エルクのこと頼むよ」
父親は真面目にマリアベルに言った。
「はい」
両親とマリアベルは笑いあった。
「なんだい。もう馴染んでんのかい。あの馬角エルクがこんなべっぴんさんをねえ」
おばさんを親戚みたいにエルクの成長に感慨深げだ。
「よし、あんたたちのことは広めておいてやる。行ってきな」
おばさんエルクの肩をバシッと強く叩いて、エルクの家を出ていってしまった。これからマリアベルのことが広まるだろう。余計にマリアベルから逃げられなくなってしまった。




