16 起きる
16 起きる
マリアベルを連れてきたのはエルクが思っていた以上の意味を持ってしまった。とりあえず家に置いておく許可を取ったのだと思っていたが、花嫁候補の扱いを受け、危うく同室になるとこだった。
マリアベルもその気なのか、積極的に拒否しなかった。同室なんてなったら何が起こるかわからない。エルクが起こす側に回ってもおかしくない。
責任という言葉が重くのしかかる。人助けを不用意にしてはいけなかったのだ。
エルクは思い悩み、夜しか寝られなかった。
翌朝、目を覚ますと、ベッドにはマリアベルの姿が。母親から借りた服を着ていた。
「なんでいるんだ」
マリアベルは答えない。エルクはベッドから這い出て改めて彼女を見た。胸はマリアより平べったい。あれだけ素早く動くのに胸は邪魔なのだろう。ムラムラはしない。
ずっと何もしないエルクに、マリアベルは目を見開き言った。
「ありえない」
怒っていた。
「真横にこんな美女がいるのに。何もしないなんて。あんた聖職者か何かなの?」
「その前に、なんで俺の部屋にいる?」
「あなたのご両親にエルクのことを頼むと言われたのよ。だから、エルクの身も心も管理しないと」
「なんでだ?」
エルクが聞くと、マリアベルは顔を赤くする。
「あんたの嫁に私はなる! そゆこと」
掛け布団で顔を隠してしまった。
エルクはフリーズした。
戦って勝った。家に連れてきた。そしたら好かれていた。昨日何かしただろうか。思い当たる節がない。
「なんでだ?」
もう一度聞いた。マリアベルは答えなかった。
井戸で顔を洗って、四人で朝食を取る。マリアベルはすでにエルク一家に馴染んでいた。盗賊に溶け込んで、今まで生きてきたのだ。家族に馴染むなんて、わけないんだろう。外堀から埋められてる気がして、エルクは落ち着かない。
「なんで二人してマ、こいつを認めてるんだよ」
「マリアベルに嘘はなかったし、エルクのこと好きそうだし」
母親が言うと父親が頷いた。
「そうだな。マリアベルはお前がやらない食器の片付けとかやってくれたし、母さんとモメなかったし、エルクのこと好きそうだからな」
エルクだけが気付いてなかったのか。マリアベルは目が合うとはにかんだ。
居づらい。自分の家なのに居づらい。
そんな空気を打破してくれる存在がいないかとエルクは期待した。そしてそれは現れた。
「盗賊の女、連れてきたって?」
おばさんだった。




