13 戦う
13 戦う
エルクはナイフを突きつけられて一歩も動けない。
「変なスキルね。馬から角を生やすなんて」
「まあな」
エルクは勝ち誇っている女に向かってムッとして答えた。相手はスキルを使った気配がない。つまり体術に負けたということだ。五年で自分のスキルに自信を持っていただけにショックだったのだ。
「おじさん、金目のものちょうだい」
勝ちを確信した女はおじさんに声をかけてきた。エルクは今のうちにスキルを使った。
「これはわざわざ街へ行って買ったものだ」
どんなことをされても渡さないという強い意志を感じた。このおじさん自己中すぎる。今後の付き合い方を考えないといけないかもしれない。
「この人が死んでもいいの?」
女がちょっとだけ慌てた。
おじさんは続ける。
「エルクが死んだら、俺は走って帰る!」
人でなしな発言に女も引いている。おじさんの説得をあきらめ、注意がエルクに戻った。
「じゃぁ、あんた、命だけは助けてあげるから、金目のものを……」
今だ。
「モグラ」
エルクは技の名前を口にした。
「は?」
エルクの足元から角が生えてきた。地面を突き破るように出てきて、エルクの体スレスレを伸びていく。伸ばしていた角を地面に突き刺し、地中を通って、現れたのだ。
女は驚いていた。そしてかわすために距離を取らざるを得ず、エルクから離れた。
エルクは一度馬から手を離し、馬体を飛び越え、右側に回った。これでピンチは脱した。
「角飛び」
エルクは馬に触れ、馬の胴体から角を生やし、まっすぐ飛ばした。マリアを傷つけた技の応用だ。
女をあっさりと角をかわして、ナイフ片手に迫ってくる。しかし狙っているのは馬であるオルクになっていた。狙いをエルクからオルクに変えたのだ。
「角の壁!」
生やしていたモグラ用の角を落として、角を密集した感じで生やした。これでオルクを刺すことはできない。先代オルクではできなかった技だ。
女が刺しに来るタイミングに合わせてやったので、ただでは済まないだろう。串刺しを想像した。
「チィッ!」
女は後ろへ飛んで地面に転がり受け身をとった。見事にかわされた。意外だったがまだ終わりではない。
「角飛び」
とどめに角の角度を変えて、全てを女に浴びせようとした。
「ちょ、待って!」
悲鳴に近い声が上がる。エルクはなんとか角が飛ぶのを止めた。
「まいった。勘弁して。なんでもするから」
立ち上がって、女は服に手をかけようとする。
マリアのスキルが頭をよぎり、エルクは女を制した。
「もったいない」
おじさんがそう言った。懲りない人だ。
「おじさん、奥さんに言いつけるよ」
「おいおい、勘弁してくれよ。これ以上、嫁に叱られたくないぜ」
「じゃあ、彼女のことは俺にまかせてくださいよ」
「へいへい」
おじさんを黙らせた。
「俺たちは村に帰るところだ。だから俺たちを見逃せ」
とりあえず警戒は解かず、平和的な訴えをした。しかし女は首を横に振った。
「イヤよ。手ぶらで帰れないわ。お頭に何されるかわからないもん」
確かにエルクの知らないところで、マリアみたいになってしまうのはかわいそうだ。しかしおじさんのお土産を渡せない。
「じゃぁ、ウチ来る?」
エルクは聞いてしまった。これが彼が考える最良の手だ。
「行く行く」
軽いノリで返された。
とりあえず女の武器を奪って、村に連れて行くことにした。




