10 解決する
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馬を連れて帰ったら、父親に盗んだと疑われた。エルクが必死に経緯を説明していると、母親が「エルクが言うならそうなのよ」と父親を説得してくれた。母親はボケ(天然)だが頼りになる。
「今、長老と馬商人が話してる」
「そうか。覚悟しておかねばならないな」
「覚悟?」
「騒動の中心にいたんだ。何かしらのお咎めはあるかもしれん」
「でも悪いのはジョンだ」
「でもエルクがそのスキルでなければ起こらなかったことだ」
エルクは納得しなかった。
「そんなこと、俺にどうしろって言うんだ」
「馬商人から馬をもらったのが、関係ないじゃ済まないんだ。わかるだろ? エルク」
確かに老馬をもらったのはまずかったかもしれない。でもエルクは悪いことはしていない。エルクは悪いことをしていない。大事なことなので、二度思う。
「エルクは悪くないわ。何か言ってきたら、家族一丸で戦いましょう」
母親がのんきに言った。それでもエルクにとってはありがたかった。どうやら一気に周りが敵になる様子を見て、ショックを受けていたらしい。一人でも味方がいるのがありがたかった。
結局父親も折れて、エルクたちは明日から馬小屋の準備を始めることになった。
晩御飯を食べているとおばさんが現れ、エルクのシチューを横取りして食べ始めた。一切の躊躇も、遠慮もない動作だったので、エルクは唖然として、されるがままだった。
「エルクの処遇が決まった」
おばさんの第一声にエルクは「それよりもシチュー」と言う機会を失った。
「エルクはどうなるんですか?」
「まぁ待て。まずは馬商人のことからだ。ジョンが騙していたこともあって、馬商人の罪は不問となった。馬商人が詫び金と言っていたが、ジョンの家の資産全部を売った資金を渡すことにした」
村全体で詫び金を出すよりもマシな判断だと思った。
「それからマリア。こっちの方が問題だな。村の男のほとんどと肉体関係を持っていたせいで、火あぶりだの八つ裂きだのと過激な意見が出た。だが、長老は温情を示された。マリアはこの村から追放だ」
母親が安堵した。
「もう警戒しなくて済むのね。エルクのこともあなたのことも」
あのスキルを知っていれば、警戒するのは当然だ。だが、それを知っても、なお関係を持った村の男たちって……。
「バカばっかりよね」
まるで答えるかのように母親は言った。
驚きで固まっているエルクに構わず父親が聞く。
「それでエルクは……どうなるんだ?」
「お咎めなしさ」
「ないの?」
また驚いた。
「だが提案はあった。馬をいきなりもらっても世話ができないだろうから、馬商人のところで働いてみないかという提案だな。断ってもいいが」
ここで断ったら老馬の死期が早まる。選択の余地はなかった。
「オルクのためにやらしてくれ。……ください」
おばさんに睨まれ、言い方を変えた。
「オルク……」
「馬の名前だ。俺が考えた」
「私の名前はウルクよ」
なぜか母親が張り合ってくる。今、子供が重要な決断をしたというのに。
「エルク、しっかりやりな。馬商人には私から言っておく。明日会うといい」
おばさんはエルクにそう言うと、エルクのシチューを食べ切った。そしておばさんはシチューが入っていた器を掲げてさらに言った。
「おかわり!」




