1 スキル授かる
1 スキル授かる
この世界では十五で大人になり、神よりスキルを与えられる。人々はそのスキルを使い、仕事や魔物との戦いをこなしていた。
今年十五になるエルクはいずれ手に入る自分のスキルに思いを馳せていた。
「やはり圧倒的な剣のスキルか。それとも派手に炎を出すスキルとかがいいか」
いとこのアルクは速く移動するスキルを授けられ、手紙を届ける仕事をしている。地味だ。えらく地味だ。エルクが独り言で言っていたように、剣の使い手になるとか、炎が出せるとか、戦闘向きなスキルのほうが同世代の奴らに自慢できる。そして都会で活躍だってできるだろう。
エルクは誕生日まで、自分にふさわしいスキルを夢想した。そしてその後の輝かしい未来も。
そして、誕生日を迎えた。みんなの経験から、目覚めたときにはもうスキルを授かっているそうだ。そして鑑定のスキルを持つ長老の一人に見てもらう。長老のそばには噂好きのおばさんがいて、鑑定結果はその日のうちに広まるのだ。
長老の鑑定の前に、おばさんがエルクに向かって手を出してきた。握手しようとすると怒られた。
「最近のガキはタダで見てもらえると思ってる」
ようは鑑定料だった。バン一個と同じくらいだから、そんなにボッてはいない。そのリーズナブルさがいやらしい。
エルクが金を払うと、長老は右目に虫眼鏡を当てる。
「うーん、むむむ……」
長老にジロジロ見られ、緊張する。早く長老の口から「剣豪スキル」とか、「炎のスキル」とかいうワードを聞きたくて、長老の顔をガン見した。
すると長老は顔を赤らめ、
「見つめられると照れてしまう」
と言う。
エルクは殴りたくなったが、必死に我慢した。スキルを聞くまでの辛抱である。スキルの内容がわかったら、お試しの巻き添えにすればいいだけだ。
長老は虫眼鏡下ろし、おばさんに耳打ちした。プッと笑うおばさん。イヤな予感しかしなかった。
「あんたのスキルは……」
無駄にためられ、ドキドキが加速する。
おばさんはそんなエルクを嘲笑い言った。
「馬に角を生やすスキルだ」
「は?」
エルクだけ時間が止まった。




