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第6話 神獣との戦い

この神殿は、大地神ルヴィスを称えるために造られた。


ルヴィスははるか古に、この世界の大地を形作ったと言われる神である。その名は高位に存在し、天空や海と並んでいた。


しかし、魔法神トトや、鍛冶神ホッパー・イストスが称えられ始めると共に、それら創造主の名は忘れられつつあった。


人々は魔法や武具の力で、この大地を統べて、創り変えられると思ったからだ。


ルヴィスの名は遠方の村であるデデルファまで追いやられた。旧世界の神を称える者は誰もいなかった。


それゆえ…………神殿の守護者である神獣は怒り、この神殿から人間を追い出したのである……



……


神殿地下・奥



盗賊「くっそ!なんだこの障壁は!魔法で出来てやがる!!」ガンッ


盗賊「えーとなになに……“魔法神トトが創りし鍵を唱えよ。答えはa・b・k・m”…………」


盗賊「分かるかぁー!!!こちとら魔法のマも知らねぇんだぞ!!!悪かったな貧民育ちで!!!」ガンッ


盗賊「ああ……この先に伝説の武具の手掛かりがあるのに……のに……のに……」ガクッ



ザッザッ


アルスル「おい盗賊」


盗賊「げっ!生きて………て、良かったですね!兄貴!」


盗賊「しかし、ここで行き止まりですぜ。この壁が魔法で出来てて……」


ガッ!!


盗賊「えっ?」


アルスル「んな事いいんだよ!!!おい!協力しろ。あの神獣を倒すんだよ」


盗賊「いやぁ……無理でしょ…」


アルスル「ルーデが危険なんだ。でも俺一人じゃやられる。お前がいれば……違うかもしれない!」


盗賊「あっしの何を見込んでそんな事を」


アルスル「いいか!?人の命が掛かってんだよ!!お前はそれを見捨てるのか!?」


盗賊「そりゃあ……そんな義理も無いし、そうするでしょう」


アルスル「俺の大事な幼馴染みなんだよ!!!!!」ユサユサ


盗賊「いや……そんな事言われても知らないですよ」


アルスル「何だと!?じゃあお前はその無辜の命が無残にも、無慈悲にも、不条理にも、消えてしまっても良いというのか!?!?そんな薄情者なのか!?」


盗賊「……じゃあ言いますけどね!!俺はそんなものいくらでも見てきたからね!!!魔物に殺される人間なんざ、いくらでもいるんだよ!!」


盗賊「このクソガキが!!お前は知らないんだろう、この世がどれだけ残酷かをなぁ!!!!!」



────


────そう、あれはあっしがまだガキだった頃────



──アルスル「うるせぇ!!!!!目を覚ませぇ!!!!!」バキィッ!!!!!


盗賊「ほげら!?!?!?」ゴシャッ



アルスル「俺の!!!大事な!!!小さい頃からの幼馴染みが!!!死にそうなんだよ!!!!!!!!!!」



盗賊「……………」


アルスル「いいか?神獣は向こう側にいる。俺が前線に出る。お前は石を投げるとかで援護してくれ」


盗賊「……分かったっす」コクリ


アルスル「よし行くぞ」


タッタッタ……


……



マリアン「ルーデさん、占ってみませんか?」


ルーデ「……結構」


マリアンとルーデは、まだ落とし穴の底にいた。


マリアン「でも、貴方のご友人が占って欲しいと言ってましたよ」


ルーデ「じゃあアルスルは無事なんだね」


マリアン「……」


ルーデ「…私はルヴィス様に会った事がある。そして啓示を受けた使者でもある。貴女は何者?どうしてルヴィス様と……私と同じ空気を纏っているの?」


ルーデ「……貴女は……何の神の使いなの?」



マリアン「…………」



マリアン「……私は…」



マリアン「“運命神アンドレギュヌス”」




ルーデ「……!?」


マリアン「その使者です。故に、あらゆる運命をこの本を通して知る事ができる」パラパラ


マリアン「では……ルーデさんは嫌なようなので、この『落とし穴』の運命を占いましょうか?」


ルーデ「……は?」


マリアン「良いですよね?落とし穴さん。イイヨー。おっ、良いらしいですね。ルーデさんより素直だなあ」


ルーデ「……」


マリアン「どれどれ……『老朽化してるので、すぐに崩れ去る』」パラパラ


ルーデ「…な……、っ!」


落とし穴は崩れ始めた。


ガラガラガラ



ルーデ「突破魔法!」ガァンッ!


マリアン「どんな魔法ですか……しかし生き埋めにならずに済みましたね。まあ…」



神獣「……」ギロリ



マリアン「神獣からの隠れ場所を失ったわけですが」


ルーデ「……ちっ」


マリアン「じゃあ次は、この神獣を占ってみましょうか?」パラパラ


ルーデ「……おい」


マリアン「……『目の前にいる娘の身体を引き裂き、絶命させる』」


マリアン「『そして神殿が崩れ去ると共に、全てが瓦礫の下に封じられる。神獣も死に、娘の死体も永遠に誰にも見つけられず……』」


マリアン「……『朽ち果て、忘れられる』」パタン



ルーデ「…………」


神獣「グ、ギギ」ズズズ


マリアン「ああ!!何て可哀想!!何て悲劇!!これは私の悲劇ランキングも揺るがせる程ですよ!!!20~30位くらいかな」


マリアン「幼馴染みを助ける為に自らを投げ出し、死に至るなんて!!!もう~悲しくて悲しくて仕方がない!!!残された方も可哀想!!!最高!!」


ルーデ「先にお前を殺してやろうか?」


マリアン「私はここで死ぬ運命にはありませんね」


ルーデ「…“風切り”!!」ヒュバッ


マリアン「うわっち!危ない!」ヒュンヒュン


ルーデ(……魔法の刃が勝手にマリアンを避けていく。これが……こいつの力)


マリアン「まあ、観念してせめて苦しまない死を迎える事ですね。私は脚本家にイイネを送っておきます」b


神獣「ガァッ!!!」


神獣はルーデに襲い掛かった!!


ルーデ「くっ…防壁魔法!!」ガンッ


マリアン「うーんそうですねぇ、椅子とお茶も用意しましょうか。もっと良い眺めの場所とかないですかねぇ」


ルーデ「雷撃魔法!!」バリバリッ


神獣「ウギギ」ビリビリ


神獣は痺れながらも突進してきた!


ルーデ「防……うっ」ドガッ!


防御と回避が遅れ、直撃は免れたものの、ダメージを受けた。



ルーデ(……ああ、回復魔法……いや、防壁、いや、身体硬化……いや、爆発……いや、逃走魔法……)グラグラ


「待てっ!!」



神獣「……?」


ルーデ「……え?」


アルスル「おい神獣!!振り返ったし戻ってきてやったぞ。俺を狙え!!」ザッ!!



マリアン「はぁぁぁーー!?何してんの!?運命って言ったよねぇ!!!?」


アルスル「そうだな。しかし、お前の言うのが運命と言うなら、俺は……」


アルスル「運命を変える!!」キッ



神獣「グォォ!!!」バッ!!


神獣はアルスルに狙いを定め、襲い掛かった!


アルスル「うおおおお!!!」ガッ!!


アルスルは神獣の突進に合わせ、剣を薙いだ!神獣は自身の突進の勢いも余り、大きく斬り裂かれた!


アルスル「二度目は流石にね!しかし頭悪いぞこいつ!」


しかし、無茶な使い方をしたため、アルスルの剣は折れてしまった!


アルスル「あっ……おい!だから武器が要るんだってばー!!」バキィッ


神獣「グルル……」ズズズ


アルスル「ん…?」


しかも、神獣の傷がみるみる内に塞がっていく!


アルスル「あっ、勝てないなこれ」



神獣「ガァッ!!!」ダッ!


盗賊「おらっ!!こいつを食らえ!!!」ブンッ


ボウン!!


盗賊の投げた玉が神獣に命中する。煙を出したそれは目眩ましだった。


神獣「ウゥン……」ブンブン


盗賊「えーと…一応、麻痺の効果もあるんすけど……」


神獣「……キカヌ」ドガァッ!


盗賊「ですよねーーっ!!」ダダダダ



アルスル「ルーデ!無事か!?」タッタッ


ルーデ「…回復魔法使った。間一髪だったね」


アルスル「しかしあの神獣、どうも無敵っぽいぞ。やはり逃げるしかないのか?」


ルーデ「……いや、神獣も死ぬ。それはあいつが教えてくれた」チラッ


マリアン「ギクッ!」


アルスル「それは一体、どんな?」


ルーデ「……恐らく……」


神獣「グォォオオオ!!!!!」


神獣がこちらにやって来たっ!!


ルーデ「身体強化魔法!!」パァッ


アルスル「え?オラァァァァッ!!!!!」


ドガッ!!!!!


神獣「グフゥ!!」ガァン!!


アルスルの強化されたパンチで神獣が吹っ飛ばされる。余りの威力に壁が破壊され、神殿が揺れていた。


アルスル「お、お、お、お、俺の手が…」バキバキバキ


ルーデ「回復!」パァッ


アルスル「あ、ああ…治った」


ルーデ「もう一回殴れるね」


アルスル「イヤです!!許して下さい!!」


ルーデ「…アルスル、神獣を殺そうと思うなら……伝説の武器を諦めなくちゃいけないかもしれない」


アルスル「それって…」


ルーデ「神獣を撒いて、先に武器の情報を手に入れよう。それから殺す」


アルスル「…できるのか?」


ルーデ「それしかない。何故なら……私達は必ず勇者になるから。でしょ?」


アルスル「……ああ、そうだな!」


アルスルとルーデは、再び奥に向かって進み出した。



神獣「ウオオオ!!!」バッ!


アルスル「おら来いよぉ!!!いくらでも殴ってやるよ!!!!!」バキィッ!!!!!


神獣「キャン!!!」ドガァン


アルスル「あべればおげあがべ」バキバキバキ


ルーデ「……~~」ブツブツ



ルーデ(…これが全力。もう大した魔法は暫く使えなくなるかな。でも、やるしかない)


ルーデ「聖なる陣よ、魔を封じよ!!カトール・マホカ!!!」


カッ!!!


神獣「!?」ブンッ


神獣を囲む様に魔方陣が造られ、その円形の端がバリアーを張る。神獣は魔方陣から出られなくなった。


ルーデ「今の内にっ!!」ダッ


アルスル「え!?あれどれくらい保つ!?」タタタ


ルーデ「5分くらいかな」


……



神殿地下・奥


盗賊「ハァハァ……二人、無事かな……ちょっとしか手助け出来なかったけど……」


盗賊「というか……出口……他に無いんかい……通路戻るしか……」


盗賊「つ、詰ん……」


タッタッタッ!!


アルスル「盗賊!お前も無事だな」


盗賊「兄貴!もう一方!」


ルーデ「焼き殺さなくて良かったね」


盗賊「え?」


アルスル「いや、何でもない。それよりルーデよ、この壁なんだが…」ゴンゴン


盗賊「あっ、魔法でできてますそれ」


ルーデ「……え?」


魔法障壁は、鍵となる魔法を唱えなければ開かない仕様だった。


アルスル「ルーデは魔法のプロフェッショナルだ。これくらい朝飯前だろう」


ルーデ「……いや、あの」


アルスル「ん?」


ルーデ「……もうMP無いです。さっきので」


アルスル「…………」


盗賊「……」


アルスル「……仕方がない、ここに宿を張って…」


ルーデ「神獣のやつ5分しかもたないって言ったよね」


アルスル「…………」


盗賊「……いや!待って下さい。ここに」ゴソゴソ


盗賊「魔力回復薬~!」ペカー


ルーデ「…え?」


盗賊「こんなのは旅する上では必需品っすよ!(盗んだものだけれど)」


アルスル「でかした盗賊!」


ルーデ「……いや、こいつの得体の知れない薬を飲むの?」


盗賊「……」


アルスル「そういう事だ」


ルーデ「……まずチェック魔法を使って」


アルスル「5分!!5分しかないから!!あと今のキミ魔法使えないから!!」


ルーデ「……くっ!!!」ゴクン


ルーデの魔力が少し回復した!


ルーデ「……よし、これなら」


盗賊「礼くらい言ったらどうすか」


ルーデ「墓まで持ってく」スタスタ


盗賊(こんな奴、助けなきゃよかった……)



ルーデ「どれどれ…」ピタ


魔法障壁「…」


ルーデ(……トト神の鍵か。簡単な魔法……)


ルーデ「“アベカム”!」カッ


バリバリバリ


魔法障壁は解かれた!


アルスル「おおっ、やった!」


盗賊「宝!宝が…!」


障壁の奥には、一つの巨大な宝箱があった。


アルスル「こ、この中に…」


盗賊「え?あっしのですよね?」


アルスル「ん?」


ルーデ「……」


盗賊「……」


アルスル「……」


アルスル「……盗賊。俺達、もう仲間だろ?」


盗賊「……じゃ、今はそういう事にして……開けましょう!!」


パカッ


中には石が入っていた!


盗賊「……は?」


アルスル「……石?」


ルーデ「いや、石にしては余りある輝きを放っている。そして凄い力を感じる…」


アルスル「…そうか!こいつを素材にして武器を造るんだ!」


アルスルはオリハルコンを手に入れた!!




アルスル「…さて、後はここから出る方法だが…」


盗賊「というか神獣を倒す方法が…」


ルーデ「その両方を可能にする方法がある」


アルスル「!?」


ルーデ「……こいつが、知ってる」



ルーデが指した方向には、またマリアンがいた。


マリアン「ギクッ!」


ルーデ「こいつの言った運命はこう……『神殿が崩れて、神獣も死ぬ』」


ルーデ「つまり……神殿を崩せば神獣は一緒に死ぬ。ついでに、神殿が崩れる可能性もあるという事」


マリアン「……いや?そうとも限りませんけど?曖昧な占いですから」


ルーデ「神殿が崩れても、アルスルは死なないらしいから、アルスルの傍にいれば私達も多分死なない」


マリアン「いやいや、もう運命が変わってますから……アルスルさんのせいで。ですので…」


ルーデ「問題は…どうやって神殿を崩すかだね。最初は爆発魔法で吹っ飛ばそうと思ったんだけど、もう使えないから。教えて?」


マリアン「オクチチャック」


アルスル「……」


ルーデ「……つまり、占い的にはこうなる。アルスルは武器の情報を手に入れて、帰る。私の死体は神殿が崩れたせいで持ち帰れない」


ルーデ「なら……」ザッ


ルーデが宝の部屋から一歩出ると、異様な音が響いた。



カチッ


ゴゴゴゴゴゴ……



盗賊「な、何だ!?」


アルスル「…神殿が崩れ始めた」


ルーデ「……どうやらこの石をここに隠した人は、相当誰の手にも渡ってほしくなかったみたいだね」


マリアン「サヨナラー」ササッ


ゴゴゴゴゴゴ……



……罠が作動し、神殿が全て崩れ落ちていた。


神獣「…………」シュゥゥゥゥ


ゴゴゴゴ…


……



アルスルのいた宝の部屋だけは、切り取られた空間の様に崩れなかった。


アルスル達は少し瓦礫を退ければ、地上に出る事が出来た。



アルスル「……ふぅっ、ようやく安全か?これが占いの力か……」ガラガラ


ルーデ「もう懲り懲りだね。ちゃんと準備万端にしてからこういう所に臨もう……」


盗賊「ひぃひぃ」


神獣は跡形もなく消え去っていた。


アルスル「ああ……可哀想だな。人間を守る者だったのに神殿も放られて、忘れられて……」


アルスル「俺の冒険記にはちゃんと事細かに記録しといてやるからな」カキカキ


盗賊「いやぁ…ほんと、大冒険って感じでしたね……じゃ、あっしはこれで!お二方、ありがとうございやした!」タッタッ…


ルーデ「あっ……ねぇアルスル、石は?」


アルスル「え?それならポケットに……」ゴソゴソ



アルスル「……無い」


ルーデ「……やっぱり焼き殺しておくべきだつた!」


アルスル「盗賊ぅぅぅぅううううぅぅ!!!!!!」



盗賊「へへへ!詰めが甘いんだよォーッ!!!」←オリハルコン所有



……


マリアン「……やれやれ、運命を本当に変えてしまうとは」


マリアン「これはより高次の力……というか」



マリアン「アンドレギュヌス様……貴女しかあり得ませんよね?あのアルスルという少年に力を与えているのは」


マリアン「分かりませんね……あんな何の特別さもない子供に目を付けるなんて。一体何をお考えなのでしょうか?」


マリアン「まあ、とりあえず脚本家にはバッドを付けときましょう」p



続く

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