第4話 起承転結
アン「さて、どうやら私は哲学にかまけ過ぎて基本的なやり方を忘れていたらしい」
薔薇「失格じゃん」
アン「基本の基本……それは“起承転結”だ!!」ドン
アン「と言っても起承転結自体は単なる形式的なもので、原因と結果が過程の中でよく繋がっていて且つ気持ちよければそれでいい」
薔薇「ようやく分かる話になってきたな」
アン「そう!原因と結果ですよ!前回、アルスル達はただ町に来ただけで仲間やらの目的も果たせず、謎の因習的な魔物と遭遇し、謎の回想シーンが挟まれ何とかなるという」
アン「全く理解の及ばない、不可解極まる話であった。これは反省ですよ」
薔薇「その通りだな」
アン「ちょっとは慰めろよ。まあいい、今回はもうガチガチに創っていこうぜ」
アン「そこで!」
──オレンポス山・頂上
薔薇「……どこここ?」
アン「今回から、我々は天上の神々として地上の運命を創作していく事にしようというわけだ!」
薔薇「なんじゃそりゃ?」
アン「ほら前回、何とか我々自体も介入していこうという話が出ただろう。それで」
薔薇「おお……何か凄い神殿建ってるし、辺り一帯は雲に覆われてる……」ゴォォォ
アン「勿論、“神々”と言った通り私と薔薇様の二人だけじゃない。ご登場願います!」
鍛冶神 「どうも~」スタスタ
薔薇「だれ?この三角形みたいな人は」
アン「鍛冶神、ホッパー・イストスさんだ。名の通り、武器を創る事が出来る。それも伝説のな!」
ホッパー「よろしく」
アン「そしてデデルファの神…大地神、ルヴィスさんも来てもらいました」
ルヴィス「……どうぞ、お見知りおきを」
薔薇「あれ?村を離れられないって言ってなかった?」
ルヴィス「この召集は別です……より高次の貴女達によるものですから」
アン「次に、魔法神のトトさんにも来てもらいました」
トト「………」スゥ
薔薇「何もない所から現れた!」
アン「彼らに武器や魔法や大地を創ってもらおう。全部私が創ったんじゃ面白く無いからな。大変だし」
ホッパー「オッケー☆」
トト「……」
ルヴィス「あらあら」
薔薇「上手くいくのかね……こんな」
アン「そして!サプライズゲストも地上に用意している。……それは後のお楽しみに!」
アン「まあ、今回はこいつらで起承転結を頑張っていこうや。では!」
────
チカーバの町を出て、隣国の王城へと向かう二人。
アルスル「おらっ!魔物出てこいやぁ!」ザックザック
ルーデ「何で道行く雑草みたく魔物を狩ってるの?」
アルスル「え?知らないのか?こうやって地道に倒していけば経験値が稼げてレベルアップするんだよ!」ザックザック
ルーデ「何を言ってんの?どこ情報」
アルスル「え?本に書いてあったよ!特に金属で固いのに液体の身体をした珍しい魔物を倒すと良いらしい」ザックザック
ルーデ「今どれくらい強くなれた?」
アルスル「えーと……レベル16くらいかな!」
ルーデ「今適当に言わなかった?」
アルスル「いや!俺の目の前にはな、俺にしか見えないウィンドウが見えててだな…」スッスッ
そこに現れたるは、一人の謎多き魔女の風貌。
?「やあ、アルスルさんにルーデさんですね?」
アルスル「君は?俺の剣に巻き込まれようにな」
ルーデ「誰?何故私達の名を?」
?「それはもちろん……セキゾウ様を倒した、チカーバの英雄である二人を見ていたからですよ……ずっと」
マリアン「私はマリアン。占い師をやっています。あなた方の運命を占ってあげましょうか?」
ルーデ「占いの魔法なら間に合ってます」
マリアン「おっと、魔法や技術なんてチャチなものではありませんよ、私の占いは。未来を読み解くのではなく、規定された運命をあなた方に与える事ができるのです」
アルスル「???よく分からないが、占ってみてくれよ」
マリアン「1回100ゴールドですよ」¥
ルーデ「これからの長い旅に、占いなんて余興に費やす金は無い」
マリアン「そうですか?ではアルスルさん、そこの魔物を倒して下さい」
アルスル「え?はい」ザクゥ
魔物「ピギー!」ドタッ
魔物は宝箱を落とした!中には100ゴールドが入っていた!
マリアン「ほら、100ゴールドあったでしょ」
アルスル「えぇーっ!!すげぇぇーーっ!!!」
ルーデ「…………」
ルーデ「いや、これは臨時収入として財布に固く閉ざしておく」スッ
アルスル「えぇーーっ!?!」
マリアン「分かりました!分かりましたよ!!タダで占ってあげます!はい!」
ルーデ「タダより高いものはない」スタスタ
アルスル「まあそんな事言わずに!これも旅の醍醐味よ!」
ルーデ「何が?答えになってない」スタスタ
マリアン「……行ってしまいましたね。ではアルスルさんだけでも」
アルスル「変だな。ルーデがここまで拒絶するなんてチャーハンに入ったグリーンピースくらいだが…」
マリアン「では……参りましょう!」スゥゥ
アルスル「おお!?」
マリアンが本を取り出し、無造作にページをめくる。すると、中から一輪の栞になった花が現れた。
マリアン「どうやらこの運命はこのページにあるようですね」
アルスル「水晶玉とかじゃないんだ」
マリアン「ええ、持ち歩くには重いんですよアレ。おっ…これは…」
マリアン「アルスルさん、貴方は強くなりたいと願っている。先程魔物を狩っていたのもその為だ」
アルスル「はい」
マリアン「その願いを叶える手段がここにはあります……アルスルさん、貴方の武器は大して良い武器ではありませんね?」
アルスル「あっはい……村にあった、護身用の適当な銅のつるぎです」
マリアン「貴方はより良い武器を手に入れる事が出来ます……鍛冶神、ホッパーイストスは知っていますね?」
アルスル「いえ、初耳です」
マリアン「ホッパー神は鍛冶の名の通り、あらゆる鉄を鍛え、神がかった武具防具を創る事に長けています……所有者の身体能力を底上げし、山ですら一太刀のもとに斬り裂くような」
アルスル「なんと……」
マリアン「そのホッパー神の武器がある場所を指し示していますね……まずは、北の廃墟に。そこに手掛かりがあると」
アルスル「武器そのものではなく、手掛かり?」
マリアン「まあ伝説の武器なんで、そこらにあるわけ無いですよ。恐らく、条件となる何かを見つけられるんでしょう」
アルスル「なるほど……」
マリアン「行きますか?その廃墟」
アルスル「いえ、ルーデと相談してから決めます。おーい!」スタスタ
マリアン「ええ、はい」
……
ルーデ(あのマリアンとかいう魔女……明らかに普通じゃない。それにルヴィス様と同じ雰囲気を感じた。……)
アルスル「おーいルーデ!」
ルーデ「話終わった?じゃ引き続き隣国に向かおう」
アルスル「いや、北の廃墟に行こう!」
ルーデ「何で?」
アルスル「そこに行くと…ホッパーだか何だかの神の伝説の武器があるらしい!ほら、俺の剣ももう魔物斬り過ぎてぼろっちいし戦力増強のため行くしかないでしょ!」
ルーデ「ホッパー?何それ。アルスルは神話とか詳しいよね?知らないの?」
アルスル「いや知らん。似たようなのは居た気がするが……へ、ヘパ……」
ルーデ「何かの嘘か創作じゃないの」
アルスル「いいから行こうぜ!!!!!伝説の武器なんて勇者にとって必須だ!!!ここで行かないなら俺は勇者じゃないね!!!!」
ルーデ「はいはい」
アルスル「よし、合意を得たので出発しよう。さあ行くぞ!」スタスタ
…………
オレンポス山
薔薇「ところで、ギャグ的な空気と変な語彙力で強引に押し通しているきらいがある」
アン「どした?」
薔薇「何だよ占い師って!起承転結の起とか言って雑過ぎるだろ!というかお前だろ!マリアンとか言って」
アン「まあ落ち着け!分かった…分かった。まあ、ギャグに傾倒しているのはつまり私達という超越的存在が居る事の影響がある」
アン「ギャグに対する…“シリアス”とはつまり心の問題、主観的な問題だ。主観的な苦しみや喜びが描かれる事にある」
薔薇「はあ?」
アン「アルスル達がいくら苦しんだり喜んだりしてる一方で、私達がこうやって談笑しながら物語について客観的な所を語ってたんじゃただのギャグに成り代わってしまうんだな」
薔薇「なに?俺達の存在が罪ってこと?」
アン「そう言うな!まあ……何とか、上手い事やればいい!」ドン
薔薇「その“上手い事”が難しいんじゃないのか」
続く