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第七話

──キュア!?


 何!?


「何だ!?」


 あまりに眩しさにロミは目を瞑った。驚きの鳴き声が上がる。同時に、カミーユが声を上げた。更に、ロミの耳が、ドタタタ……、と言う足音を捉える。聞き覚えのある男性の声。ロミは思考がまとまらないまま扉に顔を向ける。何だこの花!?と言う大声が途中で聞こえたのがロミにはひっかかった。花がどうしたんだろう?


 慌ただしい音を立て、勢い良くとある人物が入って来た。光から姿が見えないが、ロミには誰だか分かった。


「ロミ!大丈夫か……、何だこの光!?それにドラゴン!?」


 入って来たエタンの声。ロミはそれに反応することが出来なかった。身体から出る光が一等強くなる。


 ロミは、夢の中にいるような気分になった。同時に、身体が言葉では言い表すことが出来ない、不思議な感覚を感じた。まさか!と言う大きな声や、嘘だろ!?と言う驚きの声。


 そして……。


「痛い!」


「は!?」


 何が落ちたようなドス、と言う音が鳴る。共に、背中に硬い衝撃を感じ、ロミは思わず声を上げてしまった。同時に上がるカミーユとエタンの衝撃を受けた、と言った声。


 ……今の、私の声!?


 ロミは、目を見開いた。目線が低い。天井を向いているので、仰向けになっていることが分かった。彼女は前を向き、そのまま自身の身体を確認する。見覚えのある柔らかい寝間着から伸びる、白い細い手足。そこには、硬い鱗はなく、鋭い爪も生えていない。もしかして……!


 喉に手を添え、声を出すと、あー、あー、と言う高い女性の声が発せられる。外の景色と同じように、視界が明るくなり、ロミは破顔する。今、尻尾が生えていたら、激しく振られていたに違いない、と彼女は思った。同時に彼女はドラゴンの鳴き声、綺麗だったな、と思い、そんな自分に苦笑した。


 ロミはギシ、と音を立て、破損したベッドから身体を浮き上がらせる。そのまま目と口を大きく開けたまま、呆然とこちらを見る男性二人に満面の笑みを向けた。


「カミーユ先輩、エタンさん!戻りましたよ!私、ロミです!」



 一瞬の沈黙の後、二人は天まで届くではないかと言う程の大声を出した。振動でビリビリ……、と震える部屋。耳の奥で鳴るキーンと言う鋭い音。ロミは、思わず両手で耳を塞いだ。


 チチチ……。窓から聞こえて来た声にロミは窓に目を向ける。鳥が気持ち良さそうに歌っている。それに、ロミの心が踊る。もう威嚇されてない!彼女の表情が明るくなり、喜びが湧き上がる。ロミは思わず良かった!と叫びそうになった。


 それ以前に抱いている孤独や悲しみと言った感情が全てたちどころに消えた。



 暫くの沈黙の後、エタンは目を見開いたまま、ロミを指差し、腹の底から出したような声を上げた。


「はあ!?ドラゴンが、ロミ!?」


 カミーユは素早い動きで後ろに下がり、最後の半壊した棚にぶつかった。ガタン、大きな音が立つが、彼は気にする素振りも見られない。彼は、そのまま顔を大きな手で覆った。ロミは彼の顔色を見て首を傾げる。顔が赤い?何で?断片的に、ライト、ロミ君……!?と言っているのが、聞こえた。

 

 カミーユ先輩も驚いている……!珍しい態度に、ロミは彼を食い入るように見つめる。何か、見たことがない顔が見れて、嬉しい……!ロミは宙を踏むような気持ちになった。


 ロミとカミーユの二人は足を縫い付けられたかのように固まっている。そんな二人とは対照的に、エタンは腕を組みながら、考え込むように俯いて歩き回る。足元からガタ、パキと何かが揺れたり踏むような音が鳴るが、エタンは足を止めることをしない。


 どうしよう……!ロミは口を一度開いたが、そのまま黙ってしまった。


 暫くして、歩みを止めたエタンが近付いて来た。彼は、ロミの上から下まで視線を巡らすと、やや震える声で尋ねる。


「ロミ、君がドラゴン?どう言うことだ?」


 こちらを見据える緑色の目に、ロミは自分の眉が下がるのを感じた。少し離れたところからの強い視線が気になるが、彼女は首を振って答える。


「分かりません。私にも、何が何だか……。朝起きたら、ライト・ドラゴンになっていて……。私も混乱しているんです。」


 こちらに近寄って来て、エタンの隣に並ぶカミーユ。ロミは経緯を説明をした。朝に目が覚めるとドラゴンになっていたこと。鳴き声しか出なかったこと。口で杖を振り、簡単な魔法で危険信号を送ったこと。カミーユは突然送られて来た危険信号に驚いた、と低い声で話した。エタンは、カミーユから魔法で伝わり、驚いて駆け付けた、と言うことである。


 何にせよロミが良かった、と微笑を浮かべる二人に、ロミは破顔し、はい!と返した。何にせよ、ドラゴンになっていたわけだけど。同じことを考えたのか、二人の表情が真剣なものに戻る。意思疎通を図ろうをしたが、失敗したと言うこと。暫く待つうちに、カミーユが来たこと。以降はカミーユの知っての通り、と語った。

 

 声を落とし、何回か爪で引っ掻きましたが、失敗していました、と壁を指差す。そこに書かれた文字とも取れない文字を見て、二人は目を丸くした後、吹き出した。ロミは頰が熱くなるのを感じた。両手を握り、笑わないで下さい!と大きな声で言うロミ。そんな彼女に二人は軽く謝った。もう!カミーユは、何故かガリガリと言う音がしているのに気付いていたが、彼女を探す方に気を取られてた、と言うことである。

 

 ロミは、彼の言葉に口元が緩む。カミーユ先輩、懸命に私のことを探してくれてたよね。


 エタンはカミーユからドラゴン用の魔導具等を持って来るように言う連絡があり、何事かと思った、と語った。彼は一瞬扉に視線を向けた。ロミも釣られて見ると、大きな紺色のカバンが地面に置かれているのが視界に入る。後ろには、花の山が見え、ロミは目を瞬かせる。あれ、何?


 ロミの想像の中で、魔法薬や、腕輪などが現れる。腕輪が付けられたドラゴン姿の自分が頭に浮かぶ。次に、ガシャン!と首輪を付けられた自分が脳裏を過る。キュッと締め付けられるような感覚。即座にブンブン、と頭を勢い良く振って想像を掻き消した。キュアアア!と大きな鳴き声の幻聴がした気がした。ないない!


 ロミはドラゴン用の魔導具に首輪がなくて良かった、と思った。例えあったとしても使わない……よね?悪寒が走ったが、頭から追いやった。


 別方向から足音が聞こえ、そちらの方向に視線を向ける。カミーユがややまだ赤い顔のまま、こちらに青い瞳を向けている。彼は、抑え気味の声で彼女に尋ねた。


「ロミ君、君が、あのライト・ドラゴン?」


「はい。」


「と言うことは、私は、君が目の前にいるのに、探し回っていたと言うことか。」


「そうですね……。」


 脱力したように、声を落として言うカミーユ。そんな彼に、ロミは、苦笑した。


 そして、ロミはカミーユの言葉を思い出す。そして、彼女は自分の眉間に皺が寄るのを感じた。ロミは腰に手を当て、不満を露わにした。


「カミーユ先輩、私がドラゴンを刺激したから、下敷きになった、とか言ってましたよね!?そんなことするはずがないじゃないですか!酷いです!」


 ロミが横を見ると、魔術師は顔を引き攣らせてカミーユを見ていた。ドバリー、お前、そんなこと言ったのか……、と言んばかりの顔である。視線をカミーユに戻すと、眉が下げていた。顔は顔を曇らせ、声を落として言った。


「すまなかった。」


 カミーユの表情を見て、ロミの溜飲が下がる。数秒後に彼女は表情を和らげた。


「良いですよ。私のことを心配してくれていたことは分かりましたから。ドラゴンの私にどくように言っていましたし。」


 微笑むロミ。カミーユはそんな彼女の全身に視線を巡らすと、ふっと目尻を下げた。


「ありがとう。さっきも見たが……、ロミ君が無事で良かった。」


 ロミは心が晴れた。彼女は満面の笑みを向ける。


「ありがとうございます!」


 和やかな空気が流れる。

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