表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/48

第五章:茶子の告白

森亜 茶子を無事に屋上から保健室へ連れて行った後、和兎は彼女の様子を見守りながら、黙って静かにベッドに横たわる茶子の回復を待っていた。きいはそばで落ち着かず、部屋を歩き回っている。


「茶子があんなことをするなんて……どうして?」

きいは手を握りしめ、抑えきれない不安が顔に浮かんでいた。


「焦るな、きい。まずは彼女が話すまで待つんだ」

和兎は落ち着いた声で言い、きいをなだめた。


しばらくの沈黙が流れ、保健室の時計が静かに時を刻んでいる。やがて、茶子がゆっくりと目を開け、まだ少し力のない声で口を開いた。


「……ごめんなさい……」


「茶子!」

きいは彼女に駆け寄り、心配そうに顔を覗き込んだ。茶子は視線を床に落とし、少しの間ためらっていたが、意を決したように話し始めた。


「誰にも言えなかったんだ……本当のことを……」


和兎ときいは無言で茶子の言葉を待つ。彼女の声は震えていたが、それでも自分の思いを伝えようとしていた。


「私、いじめられていたの……」


その一言が部屋に重く響いた。きいは驚いた表情を隠せず、言葉を失った。茶子はいつもクラスでは目立たない存在で、誰にも迷惑をかけないようにしていたはずだった。


「でも、どうして? 茶子、何かしたわけじゃないよね?」

きいが問いかけると、茶子は少し泣き出しそうな表情を浮かべた。


「理由なんてないの……ただ、私がいるだけで……。クラスの子たちが私を疎んで、無視したり、陰で嫌がらせをしたり……」


和兎は茶子の肩に手を置き、優しい目で見つめた。


「それで、耐えられなくなったんだな……」


茶子はゆっくりと頷いた。そして、屋上での行動についても説明し始めた。


「今日もまた、嫌がらせがあって……私、もうどうしようもなくなって……屋上に行ってしまったの……」


その言葉を聞いたきいは、拳を握りしめ、悔しさをにじませた。


「なんでそんなことするのよ!そんなの絶対に許せない……!」


「でも、私が何を言っても変わらなかった……もう、逃げるしかないって……」


和兎は茶子の話を最後まで聞くと、深く息を吐いて言った。


「茶子、君の気持ちはよくわかった。でも、君がこれからどうしたいかが大事なんだ。君が逃げたいと思うなら、それも選択肢かもしれない。しかし、戦いたいなら、僕たちが力になる」


きいも頷きながら、茶子の手を握った。


「茶子、私たちがいるよ。一人じゃないんだから」


茶子は涙を流しながら、二人の言葉を受け入れるように頷いた。しかし、和兎は茶子がいじめられていた背景には、何か他に隠された事情があるように感じていた。彼女がいじめを受けた理由が単なる集団心理や嫉妬ではなく、もっと大きな問題に繋がっているかもしれないと疑念を抱く。


「一つ、聞かせてほしい。茶子、最近何か不自然なことが起きてないか? 誰かが君に接触してきたり、脅されたり……」


和兎の質問に茶子は少し驚いた表情を浮かべたが、すぐに思い出したように言った。


「そういえば……最近、変な噂が流れてるって……」


「変な噂?」

きいが顔を曇らせた。


「うん……『茶子は学校の外で誰かに会って、金をもらっている』って。そんなこと、全然ないのに……」


その言葉に和兎は眉をひそめた。その噂が何かの意図を持って広められている可能性が高い。そして、それがいじめの引き金になったとすれば、背後にもっと大きな陰謀が潜んでいるかもしれない。


「これは偶然じゃないな……何かが裏で動いている」


和兎は心の中で、今回の事件が単なるいじめ問題ではなく、もっと複雑な謎に繋がっていることを確信し始めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ