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第三章:倉庫の影

グラウンド裏にある古びた倉庫は、学校内でも人目につきにくい場所にあった。夕方になり、あたりは薄暗く、倉庫の影が一層不気味さを増している。和兎ときいは静かにその倉庫の前に立っていた。


「ここだよ、ワトソン先生。なんか怪しくない?」


きいは目を輝かせながら倉庫を見つめ、さっそく例の探知機を取り出して操作を始めた。機械のモニターに何かの反応が表示され、きいは興奮した様子で和兎に見せた。


「ほら、倉庫の中から微妙な振動があるよ。何か隠されてるに違いない!」


「振動……普通はこんな場所に振動を検知できるものなどないはずだが」


和兎は冷静にきいの報告を聞きながら、倉庫の扉に手をかけた。しかし、扉は錆びついていて重く、簡単には開かない。和兎は無言でさらに力を込め、ようやく扉がギシギシと音を立てて開いた。


倉庫の中は埃っぽく、長年使われていない物置のようだった。古い掃除道具や壊れた机、段ボールが無造作に積み上げられている。きいはすぐに探知機をかざしながら、倉庫の奥に進んでいった。


「怪しいものは……ここだ!」


彼女が指さした先には、大きな布で覆われた何かがあった。和兎はその布を静かに剥がした。そこに現れたのは――大きな木箱。明らかに最近運ばれたような新しい木箱だった。


「……これが何か関係あるのか?」


和兎は眉をひそめながら木箱を調べた。錠がかかっているが、決して複雑な鍵ではない。道具があれば簡単に開けられるだろう。


「待ってね……これも借りてきたんだ!」


きいは再びリュックから細長い工具を取り出し、手慣れた様子で錠前をいじり始めた。和兎はその光景にやや呆れながらも、再び「お前は一体何者だ」と心の中で問いかけた。きいはいつも、「普通の高校生」という枠を超える行動をするが、その正体を明かすことはない。


「ほら、開いた!」


カチリという音とともに、木箱の錠が外れた。きいが蓋を開けると、中には何かの資料や紙の束が無造作に入っていた。和兎がその中の一枚を手に取り、目を通すと――そこには見覚えのある名前が書かれていた。


「これは……生徒の名前?」


「そうだね、しかもこの資料……」


きいは顔を近づけ、資料の詳細を確認した。どうやらこの学校に通う生徒たちの個人情報が書かれているようだった。しかし、そこには不自然な注釈や、特定の生徒の成績や行動に関する記録も含まれていた。


「こんなものが学校の倉庫に隠されてるなんて、絶対おかしいよ!」


きいは興奮気味に言ったが、和兎は冷静に考え込んでいた。この資料が誰によって、何のために隠されていたのかが重要だ。もしこれが不正な目的で使われるものだとしたら、事件はかなり複雑だ。


「まずは、この資料が誰の手によってここに隠されたのかを調べる必要があるな。下手に騒ぎ立てると、真実が隠されるかもしれない」


「うん、わかった。でも、どうするの?」


きいは和兎に期待するような目を向けた。和兎は一瞬考えた後、慎重に答えた。


「まずは、この資料を誰が管理しているのか調べる。そして、学校の内部で何か裏で動いている人物がいるのかもしれない。慎重に進めよう」


きいは頷きながらも、心のどこかでワクワクした様子を隠せないようだった。和兎はそんな彼女を見て、再びため息をついた。


「お前、もう少し慎重になれ」


「ワトソン先生が慎重すぎるんだよ!私はいつでも突っ走って解決するんだから!」


二人は倉庫を後にし、新たな謎を解明すべく動き出した。学校内で起こっている何かが確実に暗躍していることを感じながら――。

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