死猫《シニガミ》の仕事
「あの、1つ聞いてもいいですか?」
『何でしょうか?』
「アルヒさんは、何故白に近いと言うか……」
『アルヒでいいですよ。私は、灰色に近い死猫です。この色の死猫は皮膚が弱いですが、頭脳は強い。皮膚が弱いというのは、例えば人間に触れられる状態になった時に少しの力で死んでしまいます。だから、私のような色の死猫は魔道士の鏡を使って対象の調査をし、虎太丸さんに伝達する事です』
魔道士の鏡というものの映像が浮かぶ。
水晶のように丸いけれど、紫色の光を放っている。
「対象者ってのは、ランダムで選ばれるのですか?」
『いえ。ランダムではありません。自らの命を差し出さなければならないほど追い詰められている人を見つけます。その人達は、魔道士の鏡に、黒と青が混ざりあった何とも言えない色に映ります。画面を共用させていただきます』
アルヒが俺の頭に映す魔道士の鏡には、何とも言えない色の人間の姿が映っている。
『凛太郎さんが向かう場所にいる方の色です。この色になっている方は危険です。偵察隊のカラスが全世界の人間達のデータをこちらに送ってきます。私達の仕事は、苦しめられている人を助ける事です。私達の異世界では、悪は必ず成敗されるようになっています。そして、だいたいこちらで悪い事をしている人間は、私達の異世界の住人の魔物だったりする事もあります』
「魔物だとどうなるんだ?」
『魔物達は、人間の優しさや思いやりを持っていません。ですから、注意をしても悪びれる事もなく、行為がエスカレートしていくのです。前回、凛太郎さんの隣人をプロパテュースに食べさしましたが異世界で調べた所、一部分が魔物に侵食されかけていました。あのまま、放置していたらエスカレートしていた事でしょう』
「隣人は人間ではなかったのか?」
『いえ、人間です。ただ、少しずつ心が腐っていき、その腐った心に魔物が住み着こうとしていました。あのまま広がって魔物に食べられてしまうと、隣人の騒音はかなり酷くなっていたでしょう』
腐った心に、魔物が住み着いた。
開かずの間に入り、左側に進んでいく。
道のような道ではない空間が広がっている。
『凛太郎さんが助けにいく方の映像を今から流しますね。まるで、自分が体感してるような痛みや悲しみを感じますが、映像が切り替われば忘れてしまうので気にしないでください。それでは、再生します』
ジジジジという音とノイズが走ったと思ったら、映像が切り替わる。